表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界の新生活  作者: 夏のさくら
三年目の夏
2/13

第二話

 

 俺のじいちゃんが子供だったころ、この世界は魔王によって苦しめられていたという。

 村は焼かれ、大地は枯れた。

 飢饉と疫病と、そして絶望が世界を包んだとか。

 けれど、あるとき勇者が立ち上がり、世界に平和をもたらしたとか。

 『光の勇者』ミヤチ・ミヤ─聖剣に選ばれた勇者であり、闇を切り裂き光を取り戻した。

 『結界の魔導師』ユアン・クロエル─若冠にして古今の魔導を知りつくし、魔物から人々を救う結界魔法を編み出した英才。

 『英雄騎士』リッツーサー・ハレルヤ─貴族でありながら騎士として勇者に仕え、たった一人で万もの魔物を食い止め、王都を守護した英雄。

 『清貧の司祭』ハルニア・ハルニア─聖職者として清貧を護り通し、惜しみ無く最上位の聖魔法を貧者富者の区別なく与えた。


 彼女らは絶望にうちひしがれていた人類の希望として、魔王討伐へと旅立ち、そして世界を救った。

 世界は歓喜し、勇者と神へ感謝を捧げた。

 だが、しかし。

 人類諸国は、共通の敵を失ったことから箍が緩み、互いに争い、苦しみは続いた。

 勇者たちはこれを悲しみ、悩み、苦しみ、そして、ハルゴンという神の教えに堕ちた。

 勇者は世界の諸国を全て征服し、四つに分けて、それぞれが治めた。

 そして、秘術を用いて、世界をこの俺にとっては見慣れた曇天の下とした。

 人類の希望であった彼女たちは、今では絶望をもたらす存在として世界に君臨している。



 これを、俺はじいちゃんから聞いた。

 その頃は、まだ、俺はちゃんとした村の、ちゃんとした家で暮らしていた。

 『何が、間違ったのかのぅ。王か、人類か、それとも神か』

 記憶の中のじいちゃんは、いつも俺の頭を撫でながらそう言っていた。

 そして、真顔でこう呟くのだ。


『あのお方たちは、救世主になるべきではなかったのじゃ』



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ