表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

00戒 祭前

はじめまして、始めました。


・月1〜2程度の更新を予定としています。

・まだまだ慣れないところがありますが、こんなのでもよろしければ見てやってください。

 突然だが俺の友人には『ヘンタイ』がいる。

 …いや、こう言ってしまうと少々問題があるだろうか…。


 訂正しよう……。 俺の友人には『変人』がいる!



  

   *   *   *



 

 いつものフツー通りの授業が始まった。

 

 俺はやはりフツー通り、フツーに教科書参考書類一式を並べ、これまたフツーに昼寝をしていた。

 

 五時限目というのは学生にとって魔の時間である。腹は減ってないし、授業中特有の張りつめた緊張感というのも、すっかり昼休み君が拭い去ってくださるのだ。

 

 そしてそんな時間に限り、古典やら地理やらの文系教科が入っている。


 するともうこれは、「どーぞどーぞお眠りあそばせ」と暗に言われているようにしか思えないわけで。


(グッバイ…オールドジャパニーズ……)


 せわしない現実世界(リアル)に別れを告げ、至高なる夢世界へ足を踏み入れようとした俺は、

 

「――のぎゃあっ、ふぐわっはぁっ!!」


 変人の奇声によって引き止められることとなった。

 俺を含め、クラスのまどろみかけていた面々が、ガバリと起き上がる。


「「「うっさいわ!このボケぇ!!」」」


 数にしてクラスの半数が、一字一句たがえることなく合唱した。それも反射的に。

 俺はその一矢乱れぬ様に悲しき日々の積み重ねを実感する。ああ、悲しきや。


 クラス中から発せられる殺気。 その矛先は一転へと向かい、ゴゴゴゴーと渦巻いている。 目を凝らせば霊能力とか特殊才能とは一切無縁な俺でも、きっと黒いオーラを確認できることだろう。

 

 睡眠妨害犯はしばらくボケっと周囲を見回していたが、やがて、初めて自分がいる場所を認識したかのように、手をポンと打つ。


「おお…」


 その後、いつものように嵐が巻き起こったのは言うまでも、ない。




 

 

「……青空だなぁ」


 校門を抜けると、変人がぽつりとつぶやいた。

  

「なんだよいきなり……」


 急にしんみりとした友人に俺は苦笑する。 

 奇人変人なくせして、時に詩人めいたり風流になったりするところが、この友人最大の謎である。

 

「いや、なに。久方ぶりにこんなきれいな空を見たのだよ。少しぐらい感動を覚えてもいいのではないか?」  


「久方って、ここのところずっと晴れてるだろ? 青空なんかいくらでも見られたんじゃないか?」


 妙に達観した様子の友人であったが、俺の一言にうっと目に見えて動揺を浮かべた。 目をあらぬ方向へ泳がせている。 


「……まあ、よ、よいではないか。はっ、さてはお主…自分に風流を感じる才能がないから我を妬んでいるのだな〜。まったく仕方のない奴め、さしあたっては我が直々に風流心を教えてやらんでもないぞ。なんせわが友人たっての―――おい、コウよ……」


「ん? なんだい自称俺の友人な変人よ」


「お前は止め際というものを知らないのか? せめて、『あー、空が青いな〜』とか、『はいはい、ところで―』的なリアクションをとるとか」


「もしかして、それを期待してたのか?」


「……………」


 自ら進んで『長話のせいで空気にされるカワイソーな人』になろうとする、変人がここにいた。俺たちの間に冷たい風が吹き込む。


「――おっほん、突然だが一週間蒸発しようカナ、と考えている」


「お前の突然は前後の会話を超越しすぎているな」


「しゃーらっぷ! 止めても無駄だぞ、なんせオレは――

 

 聞いて驚け、異世界に飛ばされてくるのだぁっ!! ぐわっ」


 とりあえず、憎たらしいその跳ねっ毛へ正義の鉄槌を送ってみた。

 頭を抱えて呻く変人へ俺はぬるま湯のごとき視線を投げる。


「なぁ、お前がそんなだから、無畜無害な俺がどれだけ被害を被っているか知ってるか? おかげさまですっかり『同類』扱いダヨ? リカバリー不可能ダヨ?」


 さあ、もう一度言ってみよう。


「……いせかっ」


「ぐっばい、マイ・フレンド。君のことは一分以内に忘れるよ……」


 



    *  *  * 





―――もそもそもそもそ。


「なぁ、変人」


「ん〜、なんだい友人」


「これはいったい何の修行だ?」

 

 所変わって、何の変哲もない公園。俺とあいつはブランコに座って焼き芋を食らうという暴挙に出た。はた目から見ると、高校生男子が仲良く並んで芋食ってる図の出来上がりだ。


 いや、クラスの女子生徒となら分かるよ? なんで野郎と一緒に焼き芋食わされてるんだ?


「ふっ、説明しよう! 人々に俺と一緒にいたという事実を刻み込み、いまさら切っても切れぬ仲であることを自覚してもらっ」


「自覚はしてるんだよ、どアホッ!」


「うなーー! オレの芋がぁぁああ! おのれ、三百四十六円の恨みぃ〜」


「はあ、なんかお前のハイテンションに付き合ってるの、ばかばかしくなってきた……」


―――もそもそもそもそもそもそもそもそ。


 紅葉輝く秋の公園。夕刻なだけあってか人の影はほとんどない。

 

 急に変人が押し黙った。違和感を感じて俺はちらりと変人を一瞥する。


 あいつは、夕空を見上げていた。これまでとは打って変わって無機質に。


 その豹変ぶりに戸惑いを隠せなかったが、何より……、


 「いいもんだよなぁ、『人』って」


 あいつは夕空すら透かしてもっと遠くを、覗き込んでいるかのよう。


 「見てて面白い喋れる、なにより反応がある。まったく素晴らしいよ…」


 俺、紅葉(こうよう)の自称友人――義秋(よしあき)は嘲笑を自らに張り付けていた。





 「と、いうわけで! 異世界に行ってくる!」


 「まだ言うかっ!!」


 


  

予告?


 義秋: 次! 飛びますっ!

 

 紅葉: 飛ばされまーす…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ