『上へ落とされる』だなんて、素敵な言い回しですね
思いつきでやってみました。
キャラ設定もへったくれもありませんが、なんとなくふわっと読んでいただけると幸いです。
私はとある貴族の令嬢だ。
今日は知り合いの屋敷でお茶会をして、その帰り。
予定よりだいぶ早く終わってしまったから、玄関ホールのソファに座って馬車が迎えにくるのを待っているところだ。
ホールには他にも何人かいて、同じように迎えが来るのを待っていたが……お互いそこまで親しい間柄でもなかったので、それぞれ別々で適当に暇をつぶしていた。
私はというと、元々今日は早く終わってしまいそうな感じはしていたので暇つぶし用に本を一冊持ってきていた。
だから、本当はその本を読むつもりだったのだが……目の前の女がそうはさせてくれないのだった。
その女は、座っている私の前に立ってギャアギャアと騒いでいる。
それも……友達だかなんだか知らないが、似たような『お仲間さん』を両脇に一人ずつ引き連れて。
彼女こそ、この屋敷の娘であり今日のお茶会の主催者『ライヤ・ジマーンスキー』。
そして私は、その招待客の一人のはずなのだが……そんな事お構いなしの勢いで彼女は騒いでいる。
そもそもの話、ライヤとはそこまで仲が良いというわけでもなく……何度か晩餐会の会場でチラッと姿を見かける事はあったが、面と向かって話をした事はほとんどなかった。
それでも今日私を呼んだのは、おそらく来れなくなった誰かの埋め合わせとして仕方なく声をかけた……といった感じだろう。
そんな彼女は今日、お茶会と称して新しく作らせた自分のドレスの自慢大会をするつもりだったようだ。
ライヤが最初に皆の前に現れてからずっと、ニヤニヤしながらドレスの裾を手で持ち上げひらひらさせては、しきりにレースの模様やら生地の美しさやらを見せびらかしてくるものだから……逆にこれを自慢と思わない人がいたら、相当だろう。
それでも最初こそ皆、場を乱さないようにと『綺麗ね』『素敵ね』となんとか社交辞令でごまかしていたが……あまりにも本人がしつこく賞賛を催促してくるものだから、途中から誰も何も言わなくなってしまった。
思っていたほど周りの反応が良くないと気づいたライヤ。
お茶会の終わり、今頃になってから私をターゲットとした口撃……もとい攻撃を始めたのだった。
褒めた回数が一番少なかったからとか難癖をつけて。
要はただの彼女の八つ当たりだ。
ライヤの甲高い声が頭にキンキン響いて、正直今すぐにでもこの場を去りたい気分だったが、そうもいかないようで。
「よくもやってくれたわね!あの時、私を階段から突き落とすなんて!」
「……」
「しらばっくれても無駄よ!」
「……」
肯定するつもりは全くない。やっていないのだから。
全くもって無実の罪。冤罪だった。
むしろ、あの時って何の事かしら?と聞き返したいくらいだったが……ここで変に口答えして面倒事に発展するのも嫌だから、無視を選んだ。
「突き落とすなんてひど〜い!」「やだ~こわ〜い!」
二人の腰巾着達も彼女の援護射撃と言わんばかりに、同じような調子で騒いでいる。
「ほら!なんとか言いなさいよ!」
「……」
「聞いてる?黙ってないで答えなさい!」
「……」
「ちょっと!ねぇ!」
「無視してるの?」「黙るなんて最低〜!」
とにかく、うるさくてうるさくて。
このまま無視を続けたかったが、あまりにもやかましすぎて、つい返事をしてしまった。
「そう言われても……私は何も知りませんよ。それに、前にお会いした時だって特にお怪我をされていたようには見えませんでしたけど……」
ああ、しまったと思った時にはもう遅く。
彼女の目は爛々と輝いていた。
「今、怪我って言ったわね?!二人共、今の聞いた?!」
「聞きましたわ!」「決定的な瞬間だわ!」
このまま押せばいけるぞ、と確信した三人はしたり顔でニヤニヤしている。
「ほ〜らやっぱり!ボロが出たわ!階段から落ちただけじゃなくて、怪我した事まで知ってるなんて!」
本当のところ、そんな事全然知らない。
しかし、階段から落ちたら普通何かしら怪我するだろうという意識のせいで、つい口をついて出てしまった。
今のは完全に私のミスだ。
めんどくさい相手だと分かっていただけに、しくじったわ……変に隙を与えてしまった。
「ふん!『うっかり言ってしまった』って感じね!」
「……」
「いつも何も考えないで喋ってるんでしょ?なんて馬鹿な人!だから振られるのよ……常に恋人が途切れない私と違ってね!それだから、私より歳上なのにいつまでも結婚できないのよ!」
ひどい言いように一瞬で頭がカッと沸騰した。
「なっ……!」
思わずその勢いのまま反論しそうになったが、ぐっと堪えなんとか心を落ち着かせる。
実は、3年前までライヤの兄リュグナーと付き合っていた。
彼女はそれを知っていて、わざと今のこのタイミングで切り札として出してきたのだ。
そもそもその兄と付き合っていた頃から、ライヤが私の事を良く思っていなかったのは知っていた。
いつも兄に甘やかされていたのに、恋人ができた途端急にそれがなくなってしまって、面白くなかったのだろう。
しかしその関係の終わりは、振られたのではなくてリュグナーの浮気によって私から別れを告げたというのが真実なのだが……彼が妹にどこまで話したのかは知らない。
それに今の私には新しい恋人がいて、婚約もしているから『結婚できない』訳ではないのだけど……
とはいえ、それをここで言ってこれ以上彼女を刺激したら面倒なので言わない。
「あなた結構口が軽そうだものね、普段からもっと気をつけたらどうかしら?なんていったって……『口は災いの元』よ?」
諺をわざとらしく誇張して、得意気にふんぞり返っている。
まるで初めて知った言葉を使って喜ぶ、子供のようだ。
そもそもたいして珍しくもなく、普段から使われるような言葉だったが……この際触れないでおく。
何も言えずに黙っていると、なんだか勝手に納得したようで、
「まぁ、いいわ。あなたが罪を認めたなら」
そう言ってわざとらしい大きなため息をすると、ようやく目の前の騒音は大人しくなった。
なんだか勝手に罪人扱いされてるけど。
これでやり過ごせるなら、もうこの際このままでいい。
このライヤという女性自体、めんどくさい人という事で有名だった。
身勝手で傲慢で自分にはめっぽう甘く、他人にはやたらといちゃもんをつける……そんな人。
自分が起こした迷惑は賄賂でこそこそ誤魔化す。
しかし反対に他人から何かされたり、少しでも気に入らない事があると……うるさく騒ぎ立ててわざわざ事を大きくするのだ。
嘘だって平気でつくし、ひどい時は相手の罪をでっち上げて裁判沙汰にまで発展した事だってある。
そうやって騒ぐ事で、相手の社会的信用を失わせるついでに、自分の言い分を押し通しその相手を屈服させる……それが彼女の『趣味』なのだ。
そんな自己顕示欲や支配欲の塊のような、なんとも性格の悪い人間だった。
だからって、向こうの勝手ないちゃもんで問題を起こされるのは勘弁だ。
彼女が納得した以上、私はだんまりを決め込んだ。
これ以上話しても無意味。こういうのは無視だ、無視。
もうそろそろ馬車も到着するだろうし。
チラッとライヤの方を見ると、何か考えているようで……目を伏せて忙しなくつま先をトントンしていた。
まぁ、もう話す事はないだろう。
彼女の望み通り、私が罪を認めた(事にした)のだから。
ようやく静かになったから、これでやっと本が読める……
ホッとしたのも束の間、手にした本を開き数行読んだところで再びまた耳障りな声が聞こえてきた。
「……でも。でも、よ……何か足りないんじゃない?」
終わったと思っていたが、まだ彼女の話は続いていたようで。
「もっとこう……申し訳なさというか、誠意が足りないんじゃない?」
「はぁ……」
申し訳なさ?誠意?急に何?何の事?
「何よ!そんな気のない返事して!謝罪よ、しゃ・ざ・い!人に怪我させておいて、謝罪の言葉が一つもないなんておかしいでしょう?」
『謝罪』……土下座でもしろって事かしら?
そんな事したら、本当に罪を認めた事になってしまうし……この場にいる他の人に土下座してるところなんて見られたら、世間的にもちょっとしたニュースになって私だけじゃなくて家族にまで迷惑をかけてしまう。
う〜ん、困った。どうしようか。
ライヤはさらに近づいてきて、仁王立ちでこちらを見下ろしている。
近い。近すぎる。
広げた本の端を、サラサラ……と風に揺れる彼女のドレスが撫でていく。
謝るまでここを退かないぞ、といった感じだ。
本当にどこまでも子供っぽい人だ。
「ええと、そう言われましても……私は何もしておりませんので……」
「なっ……!反省してなかったのね、あなた!」
「ええ。反省する必要がありませんから」
「……っ!騙されたわ!認めたフリをしたのね!」
「フリも何も……本当に何もやっておりませんよ、私は」
「嘘よ!そんなの嘘!あなたが背中を押した感触、まだはっきり覚えてるわ!」
何度も言うが、それはない。
「そうよそうよ!」「私、見てましたわ!」
腰巾着達も、あたかもその場を知っているかのようにしきりに賛同する。
「まさか忘れたの?」
「いえ、忘れたとかではなくて……そのような事実はなかったはずです」
「はぁ?!まだなんか言うつもり?!」
そう言うライヤは、眉間に皺を寄せ目を吊り上げて……まるで女を捨てたかのような下品で醜い顔。
まだ若いというのに老婆のような皺々の肌で、きっと昔からこういう表情ばかりしていたのだろう。
性格の悪さが顔に染み付いてしまっていた。
そんな表情のまましばらく何か言いたそうにこちらを見ていたが、「もういいわ」と吐き捨てて私の元を離れていった。
何を思ったか、ライヤは部屋の中央へ向かって歩いていった。
そして、ちょうど真ん中あたりまで来たところで突然大きく手を叩いて、周囲の注目を仰ぎ始めた。
「皆!ちょっと聞いてちょうだい!」
何事かと全員の視線が集まったのを目視で確認して、彼女は何やら芝居がかった演説を始めた。
「聞いて聞いて!この人ってば、ひどいのよ!私を階段から突き落としたの!」
私を指差してそう言うと、ライヤはまるで悲劇のヒロインのように悲しげに目を伏せた。
つい数秒前まで凄まじい顔をしていたというのに……女優ばりの素晴らしい切り替えっぷりに、ある意味感心してしまった。
「あれは先週、この屋敷で行われた晩餐会の日の事よ……階段を降りていたら、あの女がドンって急に押してきたの!それで、バランスを崩して……私は……!私は……っ!」
押し切るのは難しいと判断したらしい彼女は、今度はどうやら、周りにいる人達を巻き込もうとしているようだ。
感情に訴えかけて味方を増やし、私を追い込むつもりらしい。
よよよ……と目元をハンカチで押さえ、これまたわざとらしくしゃがみ込み、その場に泣き崩れ(るフリをし)始めた。
事実を知る私からするとなんとも白々しい演技だったが……しかし、ライヤの涙によって部屋の空気は一変した。
一瞬のうちに彼女を心配する人だかりができ、そしてその場に『階段から突き落とした悪い人と、そのせいで怪我させられた可哀想な人』という構図が出来上がってしまった。
「ああ、なんて可哀想!」「いい加減謝りなさいよ!」
腰巾着達の声も、余計にその演出に拍車をかける。
三人がかりであたかもそうであるかのように言うものだから……嘘の話のはずが、もはや真実となってしまいそうな勢いだった。
部屋の中はざわついている。
何も知らない人からしたら、今の私はとんでもなく悪い奴に見えているのだろう。
皆が私を見る表情は固く険しいものだった。
人を怪我させておいて平然としている人間に対する嫌悪感と、まさかそんな危険な人間と同じ場に居合わせてしまったなんて、という恐怖の入り混じったもので……どのみちあまり良い感情は持たれていないのはよく分かった。
嘘の話を信じ込む皆の真剣な顔を見て、より彼女の演技に熱が入っていく。
「私、あなたの事は嫌いじゃなかったのに……!むしろ仲良くなりたくて仕方なかった!」
嘘おっしゃい。さっきまであれほど嫌っていたくせに。
『誰にでも優しい私』を演じてより一層自分の株を上げることで、相対的に私の評判を落とそうとしているようだ。
「あの日は靴擦れがひどくて、うまく歩けなかったの。でも、そんな私にあの女は言ったのよ……『ノロノロしないで!邪魔よ!』って!」
言ってない。嘘のオンパレード。
それに……あの日、好みの男を見つけるたびに駆け寄って猛アタックしていた姿を見ていたから、真偽のほどは言わずとも分かる。
ちなみに、その標的は三人だったが……見事に全員から振られていた。
すでに彼女に恋人がいる事は広く知られていたから、さすがに自ら進んで浮気相手になるような人はいなかったようだ。
それに、恋人がいるというのに平気で男漁りをするような女なんて……一体誰が付き合いたいなんて思うのか。
周囲の反応がいいからと、彼女はノリノリでデタラメ話をさらに展開していった。
「それで、足が遅いからってイライラしたあの女は……私の背中を押して、階段から突き落としたのよ!ひどいでしょ!」
「ひどい!なんて女なのかしら!」「最低よ!最低女!」
彼女のテンションに合わせて、仲間達のよいしょの声もよりヒートアップしていく。
「忘れもしないわ、あの時……私が忘れ物を取りに『自分の部屋に戻ろうとした時』よ!ほんと、最低の女だわ……!」
彼女の話を真に受けて、周囲はさらにどよめいていくのに対し……その一方で私は安心していた。
最後の一言。
軽くさらっと聞いただけでは、何の問題もない普通のセリフ。
しかし、これこそが彼女の大きな失態であり……私の不戦勝が確定した瞬間だった。
どうなる事かとここまでずっと内心ハラハラしていたが、ここでようやくホッとすることができた。
「『部屋に戻る時』ですか……」
「ええ、そうよ!」
思わず漏れた私の独り言に自信満々に答える彼女は、まだ自身の敗北に気づいていないようだ。
その姿のなんともおかしいこと。
「……っ、ふふっ!」
必死で耐えていたが、堪えきれずにとうとう笑いが溢れてしまった。
「ちょっと何笑ってるのよ!ふざけてないで、ちゃんと謝りなさいってば!」
「ねぇ、謝れってば!」「謝りなさいよ!」
謝れ謝れと相変わらずやかましいコーラス部隊だが、流石にそろそろ耳が慣れてきた。
「謝れって言ってるの!」「話聞いてた?!」
二人のハモる声の向こうで、窓の外から軽快な馬の蹄の音が聞こえてきた。
小さく鈴の音も鳴っていて、自分の家の者だとすぐに分かった。
家の風習として、飼っている全ての馬の首に鈴をかけているのだ。
ならば、そろそろ帰り支度をしないと。
本に付箋を挟みパタンと閉じて、おもむろに立ち上がる。
「待ちなさい!あなた、まさかこのまま帰るつもり?!」
般若の形相で、こちらをキッと睨みつける彼女。
意地でも私に謝罪をさせたいようだ。
さっきまでのしおらしい雰囲気は、もはやどこへ行ったのか。
「ええ、帰るつもりです。あまり長居しては申し訳ないので」
「シラを切って逃げるつもりね?!」
「逃げる……私が?なぜ逃げる必要があるのですか?」
「はぁ?!何言って……!」
「あなたのお部屋は『二階』ですよね?」
「え?そ、そうだけど……急になによ、それがどうしたっていうのよ!」
「それで、『自分の部屋に戻る時』に階段で『突き落とされた』のでしょう?」
「あっ……!」
今更気づいても、もう遅い。
「『上へ落とされる』だなんて、素敵な言い回しですね。なんとも詩的で味のある表現ですこと」
今までの仕返しとばかりに皮肉たっぷりに返す。
客人を呼ぶような部屋は普通、どんな屋敷でも一階にあるものだ。
この屋敷も例に漏れず客間は一階。
それも、ついさっきまでそこで茶会をしていたばかりだった。
周囲の皆の視線が、一つに集まっていく。
さっきまでものとは一変して、鋭くピリピリした疑いの目が彼女の全身に突き刺さる。
「あ、えっと……!その、違うの!違うのよ……!」
何が違うんだか知らないが、嘘つき女としてのレッテルが貼られてしまった以上、挽回は不可能だ。
誰からも信用されなくなり意味を持たなくなった彼女の言葉は、ただの不愉快な雑音となって部屋に響く。
「違うの!ちょっと言い間違えただけで、あの女がやった事に変わりはないんだから!ねぇ聞いてってば!信じてよ……!」
信じてよ、なんて言われたって……あれほどはっきりと言い切ってしまった以上、もはや撤回はできない。
やれやれと思っていると、ふいにホールにメイドが入ってきて私の方に駆け寄ってきた。
「お話し中、失礼します……お迎えの馬車が到着いたしました」
「あら、良いタイミング。ちょうどお迎えが来たようね」
本を鞄にしまい、座り皺のついてしまったドレスの裾を手で整えていると……間髪入れずに玄関の扉が勢いよく開いた。
「お待たせ、迎えに来たよ」
爽やかな声と共に現れた男の姿。背が高く、精悍な顔立ちの美青年だ。
嫌な予感がして、彼女の方を見ると……ああやっぱり、といった感じだった。
イケメンに目がない彼女……絶望に打ちひしがれていたはずの瞳は一瞬で輝きを取り戻し、すぐに彼をロックオンしていた。
サッと立ち上がるなり崩れた髪形を手櫛で直し、男に向かって小走りで駆け寄っていく。
たくましいというか、図太いというか……あれほど周囲に睨まれて決まりが悪そうにしておきながら、まだ懲りていなかったようだ。
しかし……
男はそれに見向きもせずスタスタと私の方へ。
「きゃあっ!」
空振りとなった彼女は勢い余って大きくつんのめり、倒れた。
変に作った声で甘ったるい悲鳴を上げながら。
「もう、いったぁ~い!」
自分の声に気づいてさっきの男が助けてくれるかもしれないと、倒れたまま満面の笑みでバッと顔だけ上げると……そこには何もないただの空間があった。
「随分と遅かったじゃない」
「ごめんごめん。外が思ったより寒いから、君の上着を持って行こうと思ってさ……途中まで来て一回家に戻ったんだ。同じ道何度も往復しちゃったよ」
そう言って彼は私の背後に周り、着やすいようにコートを大きく広げてくれた。
着ている間、恨めしそうな視線を感じたが……無視。
「ありがとう。でもそれなら……あなたの方こそ、長い間外にいて寒かったでしょう?わざわざ取りに帰って……」
「いいよいいよ、世話になるのはお互いさまだろ?だって……もうすぐ『夫婦』になるんだから」
どこかでグサッという音が聞こえた気がした。
恋人がいない事でマウントを取ろうとしていたはずが、恋人どころか婚約者がいたのだから……もはやオーバーキルだろう。
「『口は災いの元』ですね……それでは、皆様ごきげんよう」
そう言って、私は彼と共にその場を後にした。
読んでいただきありがとうございます!
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