作戦決行 ダグザとラーナ
夜明けが近づく。まだ暗闇の中にいるが、薄らと照らされたグリフォンの翼が美しい。
あらゆる生を愛でるダグザにとって、それは尊く感じられた。
「……出るぞ」
そう言ってロイヤリーが人間に透明化の魔法をかける。つくづく、元一位は魔法の天才だと思い知らされる。普通なら妖精のヤコちゃんに頼む所を何の苦労もなくかけてしまうのだから。
「えっと、これ透明に……なってるんですか?」
ミュルちゃんが私に尋ねてくる。その問いに見えないだろうけれど頷いて答える。
「なってるわよ!要領はマジックバッグと同じで、条件付きの透明化って感じよ!」
「……マジックバッグ……。あ、いえ!なんでもないです!確かに皆さん見えなくなりましたし、野暮な質問ですみません!」
「いいのよ!ミュルちゃんはこういうの初めてなんだから、疑問は潰しておかないと!」
そう言いながらダグザは考える。
(……マジックバッグで一瞬この子は考えを止めたわ。マジックバッグは元々別のお方が立案して実用化させたモノだけど……やはり、ロイヤリーのカンは鋭いわね)
そう思っていると、グリフォンの一羽が乗れるように屈んでくれる。それに感謝の意を示して拝みながら乗る。
「ふわっふわだわぁ……」
その言葉に自慢げにグリフォンがひと鳴きすると、ロイヤリーの一言で飛び立った。
「行くぞ。潰しに」
私とラーナちゃんは周囲偵察の役割。ミディアは伏兵も怠らない、いやらしいが基本的な戦術を抑えている移動国であるが故に捉えきれていなかった。
しかしそれは自由の身になった私達の敵ではない。
小声で植物に語りかける。
「豊穣のダグザがここに。悪しき者を示したまえ、生きとし生ける我らが同胞よ」
そう言うと植物達が少しずつ動き出す。
大木の枝が一本折れる。しかしその向きは不自然であり、枝の先がまるで何かを示すように転がっていた。
横にいるラーナと顔を合わせ……いや、気配で分かるが、頷くとそちらへ向かった。
予想通り、ミディアの伏兵は隠れていた。茂みの中に隠れ、いざとなれば逃げ出せる準備もしていた。
しかしそんなもの、私……『豊穣のダグザ』には関係ない。
茂みの中の伏兵を見据えて、地面に手を着く。そして伏兵の地面から蔓を出して茂みから上へと持ち上げて拘束する。
「なんだッ!?」
唐突な異変に声を上げるも、その続きは言われることは無かった。
地を蹴って飛翔したラーナが剣で首を切り落とす。そのまま追撃で顔を切り刻む様子はとてもでは無いがミュルちゃんには見せられないと思いつつ、植物に頼んで茂みに隠蔽してもらった。
次に居たのは大木の上だった。私は瞬時に枝の矢を生成して鼻の部分を狙って撃ち抜く。
死んだことすら分からないミディアの伏兵だが、哀れみは持たない。そのまま蔓にて覆うと次を探索した。
それを何回繰り返しただろうか。時に茂み、時に地面の下。挙句の果てには大木の一番上に隠れている事もあった。
(ああ、本当にいやらしい奴ら)
そう心の中で憎しみを持ちながらも植物に干渉してこちらに有利になるように動かした。
地面の下にいれば傍の植物の根っこを伸ばして窒息させ。
大木の上にいた奴にはラーナが静かにその全身を細切れにし。
茂みの中にいたやつは先程と同じ方法で上に引っ張りあげてラーナにトドメをさしてもらった。
(……これで八人。植物ちゃん、まだいるかしら?)
魔力で語りかけると、蔓がひとつの方向を示した。
それは森の奥の奥。国境のすぐ側。
(……逃がさないわよ)
道が作られていく。植物に導かれていく。
やがてその場所にたどり着くと、無造作にこちらに呪いが飛んできた。
ラーナと共に避けると、声が聞こえた。
「我らミディアの伏兵が倒れていくのはわかっておったぞ……?けれど国境を越えてしまえばこちらのもの。今なら見逃すが……?どうする?ヒヒッ」
その言葉に、キレた。
「あら……国境を越えられると確かに追いにくいわね。とっても。……けど、本当に越えられるかしら?」
「……何?」
そう呟きが聞こえた直後。植物の群れが国境線を塞ぐようにドンドン伸びていく。
数秒も経たないうちに、国境線は塞がれていた。
「なん……いや、これはまさか……ティタスタの……!」
「あら、覚えてもらえて光栄と同時に気持ち悪さが出るわぁ」
そう言って相手の周りに蔓を配置、ドンドンと逃げ場がなくなっていく。
「くっ!」
苦し紛れの魔術。確かに命中すれば私は傀儡になるだろう。けれども、それが命中することはない、
そっとラーナが魔術を斬る。相変わらず無茶を通す数者だと思いながらその言葉を口にした。
「この植物の量……明らかな意志を持った植物……!お前は……!」
その言葉に最期の慈悲をかけて終わりにする。
「元十位、『豊穣のダグザ』。……目障りなのよ、早く死んで頂戴」
そう言った次の瞬間に動けなくなった伏兵の大将がラーナの不意打ちによって切り刻まれた。
「これで最後?」
「そうみたいね。一応もう一度探知してから合流しましょ」
そう言って透明化したままの二人は、明るくなってきた森の中を静かに駆けた。
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