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ミュル、飛ぶ

「と、遠い……!」


ミュルはシュネーの背中に乗りながら呟く。

先程居た場所から『青い鳥』まではかなりの距離があるとの事で、シュネーが快く移動役を請け負ってくれたのだがそれでも遠い。


移動にして何十分か。漸く到着する頃にはシュネーが疲れ果てていた。


「ごめんね、シュネーちゃん……戦ったばかりなのに」


謝りの言葉に彼女は可愛らしく首を横に振ってニコリと笑う。


「大丈夫、シュネーはグリフォンだから普通の人よりは丈夫!……でも疲れたからちょっとおやすみなさい……」


「ああっ!待って!せめて宿に入って……」


そのまま眠りの世界へ落ちたシュネーを見て、微笑みながらお姫様抱っこをすると宿の外から大声で中の人を呼んだ。


「アルトさーん!ダグザさーん!ミュルです!大事なお話があって……でも両手が塞がってて~!」


そう言うと扉が開く。ダグザさんがあら、と声を上げて驚く。


「シュネーちゃん!大事な話ってシュネーちゃんに何かあったの!?」


「ええっと、シュネーちゃんというかグリフォンの群れというか……ええと、説明するのでアルトさんも呼んで貰えますか?」


流石は《アウトナンバー》のお方。グリフォンの群れ、と聞いて何かを感じとったらしい。すぐさま中に入るように手招きをした後にアルトさんを呼びに行った。


「……それで、この部屋でする話っていうのは?」


アルトさんにはその場で要件を伝えるように言われたのだが、とても万人に聞かせられる話ではない。せめて個室が良いと言ったところダグザさんがフォローをしてくれた。


「シュネーちゃんだけじゃなくて、グリフォンの群れ全体に何か問題があったそうよ。それにロイヤリーじゃなくてミュルちゃんが来たって事は、緊急で何かやろうとしてるんじゃないかしら?」


全くもってその通りである。ブンブンと頭を縦に振るとアルトさんが厨房裏の自室に案内してくれた。


「ええっと、実は……『ミディア』?っていう国にロイヤリーさんが攻め込もう……というか潰すって」


その瞬間二人がガタッと立ち上がる。ビクッとした。こんな驚愕した顔の御二方、見たことがない。


「何!?ミディアの場所がわかったのかい!?」


「え、ええと……実はシュネーちゃんの群れがそのミディアの人の呪いにかけられていたらしいんです。それをロイヤリーさんが解いて場所を聞いて潰す、って……」


その話を聞いてダグザさんが口を開く。


「……ミュルちゃん、確認するわね。『攻め込む』じゃなくて『潰す』って言ったのね?」


その問いの意図は分からないが、こくりと頷く。するとダグザさんが真剣な表情でアルトさんと話し始める。


「アタシは何時でも行けるわ。後はお店のことだけど……」


「店も数日は休みだね。漸くあの忌々しい国を潰す絶好のチャンスだ。国や現役の《数者》に確認は取らないよ」


その言葉にふと疑問に思って問いかける。


「あの、国を潰すならむしろティタスタの国王様やお偉い方、それに《数者》の人に話した方がいいのでは……?」


その問いにダグザさんがふるふると首を横に振る。


「ミディアは移動民族みたいなお国柄でね。報告なんてしていたら居場所がまた分からなくなっちゃうの。……それに、国としては攻め込む『理由』が無いのよ。シュネーちゃんの一件はあくまでウチの件。国としては一切の関与がないの」


「な、なるほど……。……ん、また?」


なるほど、ロイヤリーさんも戦ったことがあると言っていた。逃げられたのだろう。移動民族と言われれば尚更だ。


「そうよ。だからロイヤリーちゃんが潰すって言ったならもう今しかないのよ。またティタスタの国民が取られるのも嫌だしね」


(取られた……呪いにかかったんだ)


それはそうとして、別の不安もある。


「でも、大丈夫なんですか?その、私はまだ冒険者で騎士では無いですし。御二方は行くって行っても……戦力的に……」


その問いに不敵な笑みを浮かべてアルトさんが答える。


「大丈夫さ。元《数者》、無限のアルトを舐めないでおくれ」


「い、いや!決して舐めているわけでは……!」


「わかってるさね。でも一番大きいのはロイヤリーだろうね」


そういえば二人もロイヤリーさんの指示に従っているように見える。まるで、元数者、それも上位の人が理由があるとはいえ命令をいとも簡単に受け入れる人……。


(……こんな考え、なんか前にも……)


思い出せない。デジャブが頭の中を過る。

そんな中、ダグザさんが楽観的に言う。


「まあ潰した後の事後報告なんてアタシとアルトの姐さんが城に行けばいいのよ」


「……え」


「あ、そうだったわね。アタシ、これでも《数者》の時は第十位にはいたのよ」


「ええっ!?」


その後に苦笑するようにアルトさんも言う。


「因みに私は元第三位。今の子の実力は分からないがね」


「ええええ!?」


元とは言え十位と三位。それは実力的には十分だ。

好奇心は猫をも殺す、とは言うが問わずには居られない。


「因みに、当時の1位と2位は……?」


それを聞くと二人共苦い顔をする。タブーに触れたようだ。


「あ……すみません」


「いや、いいのよ……ただ、アタシ達が抜ける前に1位と2位は『抜けたわ』」


「……えっ」


一位が今でも空白なのは知っているが、二位も空白なのは知らなかった。


「今の二位は……っと、そこまで話している余裕はないわね。準備するわ」


「ええ、私も。ミュルちゃん、申し訳ないけどもう少しこの部屋で待っていて頂戴」


「は、はい」


そうしてちょっと謎に包まれたまま、待機させられることになった。


いつも読んでくださりありがとうございます!

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