最終章
最終章
絶望は目の前に広がっていた。
「治る病気は治る。治らない病気は治らない」
医者の知ったことではない。
医学なんてもう要らない。
…
頼るのは永遠に自分の心のなかで、輝き続ける魂のみだ。
最後に、
家人のために指輪を買ってやろうと思った。
指輪のサイズはと聞くと十一号だと言っていた。
確かめるため糸をもっていって左手の薬指を測った。
十一号はとても無理な気がした。
店に行き糸で測ったサイズの指輪を探してもらった。
ディズニーをあしらった真ん中に小さなダイヤがはめ込んであるのが見つかった。
十六号だった。
このサイズは自分の指にもはめることのが出来た。
これ以外に下のサイズはなかった。
「内側に刻印ができますか?」
「できますよ」
「何日かかりますか?」
「十五分でできます」
今日の日付を入れてもらうことにして買うことに決めた。
家人が亡くなってもこのサイズなら自分の指に嵌る。
なんとなく心に光が灯るような気がした。
店の楽器売り場から「猫ふんじゃった」のメロディーが聞こえていた。
何度も何度も繰り返し「猫ふんじゃた」が躍って跳ねていた。