目覚め
初めての投稿です。楽しんでいただけますように。
・・。
・・・、・・・頭が痛い・・・
・・・くやしい、くやしい、どうして・・・うそ、嘘つき。
もしわたしが・・・だら、あの二人はどう思うんだろう。
(おかあさま・・・どうしてきてくれないの。ばあやは? あとからくるっていったのに・・・ここにはおにいさましかいない。みんなしらないひとばかり・・・おねがい、おかあさま、はやくきて・・・!)
好きだったのに。好きって言ってくれたのに。なんであの二人が。何でもない顔して。私のこと、笑ってたんだ。
(ここはみんなこわいの、どうしたらいいの・・・おにいさまもわたしのことがきらいみたい。どうして、どうしてわたしだけ・・・おかあさま、おかあさまのうそつき。むかえにきてくれるっていったのに・・・!)
皆して私のこと笑ってたのかもしれない。明日、会社になんて行けない・・・そうよね、これで・・・あいつら、
一生・・・
「一生、後悔すればいいのよ!!!」
絶叫した瞬間、はじけるように目が覚めた。激しい動悸、背中や首筋に汗が伝っているのを感じる。
数回瞬きを繰り返す。見慣れない天井。何、ここどこ・・・?
ゆっくりと左右を見渡せば、寝ているベッドの四隅に支柱が立っている。目でゆっくりと追うと、重厚なこげ茶の支柱は天井につながっている。・・・私が見ているのは天井ではなくて、大きな天蓋だった。
え、何、ここ?
ベッドの右手には窓が見え、ベッドサイドにはこれもまた重厚なサイドボードらしきものと、その上に分厚いガラスの水差しが置いてある。左手の随分向こうに大きな木製の観音開きのドア。ベッドに寝ている今の体勢では見えないが、随分広い空間がベッドの左側にあるのが判る。飾り棚、また机らしきものも見えている。でもどれも・・・すべて大仰でがっちりとしているものばかり。テイストも自分の部屋とは全く違う。
絶叫した自分・・・あれは夢?その感触でまだ動悸も汗もひかないが、今度は別の意味でも寝ていられなくなってきた。私、どこかで倒れたりしたんだろうか。誰かの家に運ばれてきたのかもしれない。
「あ・・・」
「あの、誰かいませんか?」と声を出そうとしたのだが、声がかすれて、吐息と発声の中間のような音が出ただけだった。そして。
(え、何この声・・・甲高い?)
思わず口に手をやる。でも、そこで触った感触が。
え?こんなやわらかい?あと、私こんな鼻小さい?え?手も?
思わずペタペタ顔触って、それから自分の手に初めて気づく。色白で、小さくて、華奢なのにふんわりと丸みを帯びて・・・
(私の手じゃない!? こ、これ、子、子どもの手でしょ?どういうこと!!!)
寝ている私には、手しか見えない。どう見ても自分の手でない手でワタワタとかけてあった毛布をはぎ、起き上がろうとしした瞬間。
信じられないほどの激痛が頭を襲った。
「っぐ・・・!」
呻き声をもらしながら、もう一度頭を枕に埋め、両手で頭を抱えて丸まる。後頭部を鉄串で左右に刺されたような、眉間を鉄の・・・いうなればフライパンのような平たい鈍器で殴られたような痛みが走る。
「うぅ、う・・・」
もはや何も考えることができなくて、ただ頭を抱えて必死に痛みを逃すことだけ、少しでも楽な体勢を探すことだけに意識が向かう。いや、意識はほとんど手放していてしまっている。ただじっと、じっとしているだけ・・・
どれくらい経っただろうか。最初に気づいたときはまだ部屋に日の光が差していたのに、次に目を覚ましたときは、部屋は既に暗く、周りの様子もうっすらとしたシルエットでしか判らなくなっていた。
頭痛は大分ましになっていた。でも不用意に動くとまた同じ羽目になるかもしれない。私はそうっとそうっと細心の注意をはらって、丸まったままだった身体を伸ばし、そしてすこしずつ右側に身体をひねっていった。喉が随分乾いていたので、水差しの水を飲みたかったのだ。
右横向きになると、腕で上半身を少し持ち上げながら、なんとかベッドの右端まで移動した。水差しにそっと手を伸ばしてグラスに水を注ごうとして・・・片手ではとても持ち上げられないことに気が付いた。重いガラスの水差しに、水が半分入っているのだ。この手では起き上がっている時ですら、両手を使わないと水は注げないだろう。ましてや寝ころんだ体勢で左手だけなんて・・・
このまま朝まで寝てしまうのが一番、その後には人も来るだろうしと思ったものの、喉の渇きはひどく寝付けそうにない。そうっと上半身を起き上がらせ、ベッドに腰掛けようとしたとき、後ろから声がした。
「おい、何をやってる」
と。
もちろん、まだまだ序盤です。