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それぞれの役割

 グランドに初めていって戻ってきた一同は、トリントンの召集によって食堂に集められていた。


「これで全員そろったな」


 トリントンはダイニングテーブルに並んだ一同を見回す。


「ナスタの活躍もあっておれたちは悲願のグランドまでのミチを繋ぐことができた。もちろん、最後繋げたのはナスタだが、これまでみんなの協力があったからこそ辿り着けた。本当にありがとう」


 トリントンは頭を下げるとそのまま続ける。


「だが、これは終わりではない、始まりだ。ようやくミチは繋がったが、いくつか課題がある」


 こうして、トリントンはこれからの課題とやるべきことを次々と列挙していった。具体的にはミチの整備、グランドで採取する物資の確保、採取した物資の販売網の構築やミチ自体の存在が魔物にばれないようにするための偽装工作、そして、これらを達成するための人の確保が急務だった。


 これらを行う上でトリントンは今のレジスタンスを大きく二つに分けて、それぞれのグループで動くそうだ。アインス、ツヴァイ、ナスタ、ノンがミチの整備や物資の確保、トリントン、ビスタ、ミゲル、ウンブラが販売網の構築や人の確保にあたる。


「これで思う存分グランドに出られる!」


「このファームからもおさらばできるぜ!」


 トリントンからの説明を聞いたアインスたちは喜ぶがすぐにビスタから釘を差される。


「バカかお前等? 基本的な物資の探索はナスタとノンの仕事だ。お前等はこれからもしばらくはミチの整備だ」


 しかしその言葉を聞いてナスタが驚く。


「そ、そんな大役、僕で良いんですか?」


「あぁ、その点はあまり心配していない。万が一魔物に襲われたとしてもお前たち2人ならなんとか出来るだろうし、それほど調子に乗らないだろうからな」


 トリントンはアインスたちの方を見ながらナスタたちが選ばれた理由、逆に言うとアインスたちを選ばなかった理由を説明した。アインスたちは反論しようと口を開きかけるが、ビスタに一睨みされてその口を塞ぐ。どうやら2人にとって一番の脅威は魔物ではなくビスタのようだ。


「大丈夫ですよ、ナスタさん。グランドは私もいたことがありますし、魔法以外でも色々とお力になれると思います」


「そっか、たしかにそう言われてみるとそうだよね。うん、それなら大丈夫そうな気がしてきたよ」


「わかってくれたならよかった。とりあえずナスタたちには木材の調達や果物や野菜、ウサギ肉や鶏肉の確保ができないか検討してほしい。最終的にはミチのすぐ近くにグランドの拠点にできるようなところも作りたいと思ってるからそのつもりで候補地の選定も頼みたい」


「さっき見て回ったが木材はいくらでもあるから、場所と食料の確保ができれば御の字だな! 頼むぜ、2人とも!」


 そう言ってビスタはバンときれいな音を立ててナスタの背中を平手打ちする。ビスタなりの景気づけなのだろう。


「はい、まずは安全第一でいってきます」


 トリントンはナスタの言葉に無言で頷く。


「じゃあおれたちはこれまで通り穴掘りといきますか」


 アインスたちはしょんぼりしているとミゲルはアインスたちの肩を叩く。


「まぁいいじゃん、私なんかトリントン、ビスタの年長コンビと一緒にファーム周りなんたから」


 そう、何気にミゲルもグランドにいけないことをしょげていた。


「まぁそう言ってくれるなや。お前等もある程度落ち着いたら休みにいけばよいやろ。何よりミゲル、今回のファーム側の準備はお前が頼りなんや、すまんが頼む」


「え? どういうこと?」


 事前に特に説明をうけたわけでもないようで疑問の顔を浮かべているミゲルにトリントンは説明する。


「お前の影魔法を使えば実際のこの場所を知られることなくここに連れてくることができるだろう? それに、ファーム内を自由に行き来しようと思うとミゲルの魔法が重宝する」


「なるほどね、まぁそう言うことなら仕方がないわね」


 ミゲルは少し残念そうだったが、それでもレジスタンスの目的のためと思うと割り切ることができたようだ。


 その後、トリントンは細かな指示を出すとこの日は解散となる。実際の作業は明日からだったため、ナスタとノンは部屋に戻り床に腰掛ける。


「グランドって初めて行ったけど、いいところだね。勝手なイメージで、もっとおっかないところだと思ってたよ」


「そうですね、今回出た先が森の中っていうのもよかったのかもしれませんね、ナスタさんが言うようにおっかないところももちろんあります」


 ノンが膝を折って床に座るから、太股の隙間が露わになったため、思わずナスタは目線を逸らす。


「たまたま、か。じゃあグランドで気をつけた方がいい場所ってどんなところがあるの?」


「そうですね、ちょっと今回でたグランドの場所がどのあたりかわからないので、現時点で注意しないといけないかどうかはわかりませんが、グランドにあがる層間エレベータがあるあたりはおそらく近づかない方が良いと思います」


 そう言って、ノンは簡単に指で床に絵を描いてグランドとファームの関係を説明する。


「グランドも、層間エレベータを中心に地域が構成されていて、その層間エレベータを守っているのが竜族と、その眷属でいるスライム族です。おそらく、自分たちが許可していない人間がグランドにいるとなると攻撃されるリスクがあるのでそこは行かない方が良いです」


「魔物も種族が分かれて各地域にいるんだね」


「はい、エルフ族やドワーフ族、アンデッド族など、色んな部族がいます。ただ、それらの部族が協力できないように竜族とスライム族は協力してグランドを二分し、全部族が一致団結して自分たちを攻めてこないようにしてるんですけどね」


ノンはさらに、竜族がグランドを牛耳っていること、スライム族はそれについていって周りの種族から白い目でみられていること、竜族の統制に周りの種族はフラストレーションが溜まっていることなどをナスタに説明する。


「まぁ何にしても今自分たちがでたところがどの辺りなのかわからない限りはどうもしようがないんですけどね」


 ノンは笑ってナスタに説明するが、笑い事ではないなと苦笑いを返すしかなかった。

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人として大切なことは全て異世界で学んだ!-大切なのはスキルでも境遇でもない、心だ!-

社畜サラリーマンが転成先で超絶魔力量を手に入れたものの、悩み、そして人として成長するお話です。是非お読みいただけると嬉しいです。
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