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実験報告書:ケルド

実験報告


・実験対象

ケルド


・鑑定結果

外見は平均的な亜人族の草人に酷似しており、身体能力及び魔力共に平均的な一般人のそれを逸脱しません。

スキル構成及びその能力については、一般的な草人の能力より劣る傾向を見せ、ケルドの割合に比例して、その能力差は顕著に表れます。


特に、<翻訳>スキルや<感知>系スキルなどの、外部とのコミュニケーション能力に乏しく、他者への配慮や道徳、思いやりなどと言った、群れでの行動に必要と思われる能力が欠如しています。


<鑑定>に草人と現れる個体は、ケルド率50%未満に限られ、50%を超えた場合、全て人間ケルドと表記されます。

また、50%未満の個体であっても、人間と表記される個体が確認されております。その個体の特徴として、スキル習得能力が低い傾向が観測されております。


この事から、魂にはスキルを担う部分と、種族を担う部分が異なる可能性が示唆されております。<鑑定>が何処を基準に種族を確定しているかは現在不明ですが、ケルドの割合だけで種族が確定されない事が予測されます。


 以下の実験は、ケルドの習性や生態を観測する為の、実験結果と考察になります。






・実験1 習性観察

 出口のない部屋に複数体のケルドを放置。その後、条件を変えて彼等の行動を観察します。


・ケース1

ケルド率が同等の固体を同室内に放置、その後の経過を観察します。


・観察結果

 壁や床へ向けて、殴る蹴るなどの暴力的な行動を繰り返しました。その行動は、ケルド率に比例して過剰に、長くなる傾向にあります。

その後の変化はなく、ほぼ一様の行動を繰返し、体力の劣る個体が疲労と飢餓により餓死。その後、餓死した個体を他の個体が捕食することを、最後の一体になるまで繰り返しました。


・考察

 観測者の主観になりますが、共食いに対する嫌悪感が見られなかったことが報告に上がっております。

 また、最後に残った被検体を観測した所、著しい能力の向上を観測しました。その上昇率は、レベルの向上による上昇値をはるかに超えています。




・ケース2

 ケルド率が異なる固体を同室内に放置、その後の経過を観察します。


・観察結果

 壁や床へ向けて、殴る蹴るなどの暴力的な行動を繰り返しました。その行動は、ケルド率に比例して過剰に、長くなる傾向にあります。

 数時間観察後、疲弊と空腹による共食いが発生。ケルド率の低い被検体から、順次捕食され、最後の一体になるまで繰り返しました。


・考察

最後に残った被検体を観測した所、著しい能力の向上を観測しました。その上昇率は、レベルの向上による上昇値をはるかに超えています。

また、ケース1よりも上昇率は緩やかな傾向を示しました。これはケルドの割合が高い程、能力の向上率が高いことが予想されます。




・ケース3

 生存ギリギリの食料を提供する魔道具を設置し、放置しました。


・観察結果

 食料が得られることを確認した被検体は、魔道具の破壊を試みました。


・考察

 更なる食料の確保のための行動と思われます。魔道具が壊れた場合を想定していない事が予想されます。

 その後の結果は、ケース1及び2と同様となります。




・ケース4

 魔物が徘徊する地下迷宮へ放逐しました。


・観察結果

 全ての被検体が脱出を試み、迷宮内を徘徊し、道中遭遇する魔物には躊躇なく襲撃を行い、死亡しました。

但し、ケルドを含む個体でも、ケルドと表記されない個体は人間よりも高い順応性を見せ、徘徊する魔物への危機感を示しました。

ただし、目の前に魔道具、金品、食料などの利益を提示すると、その危機管理能力に著しい低下を見せました。


・考察

 ステータス、スキル共に攻略不可能な個体に対して、迷いなく襲撃を掛けたとこから、種族として<感知>系の能力が乏しいことが予想されます。


 ただし、勝てない事を察知した後には逃亡、及びケルド率の低い被検体を囮にするなど、自身の生存を最優先する行動を取ります。観測者の主観になりますが、その際に恐怖心を抱いていることが報告に上がっています。




・総括

自分以外の人族を迫害する傾向を持ち、その対象はケルドの割合に比例して過激になります。

また、直近の危険への反応は示しますが、そこに至るまでの過程では反応を示さず、未来を予想する能力に著しい欠陥を示します。


これは、消耗品として生成される魔法生物の習性にとても酷似しております。


しかし、死の間際であれば危機感を抱くなどの差異を見せる事からも、通常の魔法生物と同等の存在とは言い難く、今後とも検証の必要性があります。


但し傾向として、この差はケルドの割合に大きく影響される事が分かっており、ケルドの割合が50%を超えた段階で、ほぼ同じ習性を示すことが確認されております。





・実験2 解剖と、魂の存在確認

 人間(ケルド)を物理的に解体し、ケルドを含まない通常の亜人族との差異を観測しました。今回は、外見的特徴から見て、類似点が多々見られる草人を主体に観測します。

 ※解剖に使われた純粋な草人は、死刑囚、または志願者を使用し、志願者は観測後、適切な治療を施しております。



・ケース1 

 骨格、筋組織、内臓、神経系などの構造や、目視による物理的な比較を行いました。


・結果

 差異は観測されませんでした。


・考察

繁殖が可能な事もあり、個体差があれど肉体に限れば、人型状態のケルドと草人は同一なものであるとの結論に至りました。




・ケース2

 魔力の波長や属性の質を変えつつ、それらに対する生理的な反応の比較を行いました。

 

・結果

 差異は観測されませんでした。


・考察

 ケース1と同様。



・ケース3

 生命活動を維持しつつ解剖し、切除した部位に随時<鑑定>を実行。魂の存在証明と、存在する箇所の確認を行います。

※ケルド、及び、死刑囚のみに実施。


・結果

四肢、及び胴体と頭部の切り離し、それぞれの部位に<鑑定>を実施。頭部にのみステータスが観測され、他の部位には、観測されませんでした。

それに伴い、頭部を更に細分化。脳の一部を切り離した後<鑑定>を実施すると、それぞれにステータスの観察が可能な事を確認しました。

しかし、ステータスとスキルが常に変動し、不安定なものとなりました。


神経が繋がった状態で2つに分割した頭部のそれぞれに<鑑定>を実施し、その状態を維持しつつ繋がりを断ち切った場合、その瞬間に<鑑定>の結果が不安定なものへと変化した。


 頭部のみの状態で経過を観測した所、一定時間が経過した時点で、経験値の取得を感知、魂の消失を確認しました。魂の喪失にかかる時間は、頭部の損傷率に比例します。これは損傷がない頭部も同様です。

但し、意識を保った状態の頭部であれば、魂の喪失は観測されませんでした。これは頭部に損傷がない被検体でも見られない反応です。


・考察

今後の実験に必要と判断し実施。


実験の結果、魂は頭部に宿る事が予想されます。

そして、意識があるか否かで、魂の保持能力に大きな違いがある事が確認されました。

意識を保つ機能が頭部に集中している為に、頭部に魂が宿るのか、それとは関係なく頭部に魂が宿るのかは不明ですが、魂の存在には意識の有無、または精神が大きく関わって居る事が予想されます。


頭部を細分化した際の反応が、融合・分裂する際のプル様と酷似したモノであることが報告に上がっております。 

 

頭部を壊された場合でも活動、再生することができる人族の存在も示唆されましたが、頭部を破壊した状態でも、一定時間は魂の存在を確認できたことから、瞬時の再生が可能であれば、蘇生は可能と思われます。




・実験4 魂への干渉

 観測範囲を切り離した頭部に限る事で不要な情報を排除し、魂の存在の観測、及び干渉を試みました。

不安定なものですが、直接魂へと干渉するスキルである<鑑定>を元に、魂の正体に迫ります。


・結果

 現在検証中。結果が出次第、追って報告いたします。


・考察

<鑑定>による魂への干渉が可能な事は、我々には他者の魂、又は魔石に干渉することができる器官や魔術的構造を、潜在的に所有していると推測します。

 魔石と違い、明確に魂を観測する事は未だ叶いませんが、魔石と魂の両方を持つ稀有な検体により、一部の者であればその差を感じることができる事が確認されており、その事からも上記の推測に間違いないと思われます。


また、スキルによる観測は、各個体の能力に左右される為、魔道具による統一された結果を目標とします。












・追加報告

ケルドへの変異を促す魔力の波長を発見しました。それにより、変異への機構とその過程の観測が可能になりました。


その過程で、複数の変異した邪魔物状態のケルドを遭遇させた際、溶け合い一体の個体となりました。

その能力は警戒に値する数値であり、安全を優先しその被検体は破棄いたしました。


以上の結果から、邪魔物の特性に群体生物の可能性を提示します。一体一体は貧弱ですが、複数個体が集合した場合は、早期の対処を推奨いたします。


 また、融合した個体を複数用意し、近づかせた場合、より強い個体に群がる様に融合する挙動を見せました。


 この性質を利用すれば、強力な個体を用意し管理すれば、周囲に居るケルドを収集することが可能かもしれません。


 魔道具による現象の再現も視野に入れ、検討いたします。


「ほむ……敵への浸食と攻撃を兼ねた、自立型の経験値収集兵器って所かな?」

「なの? 何か言ったなの?」

「いえいえ、別に~? ただ、そう、気に食わないですね~……あぁ、本当に、気に食わねぇ」

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