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ティーシェラン戦記  作者: 鈴木誠也
第5章 生命線を保とう
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安全確認

頑張って今日中に二投目を終わらせます!

 「それでは、オレが批准した条例を各区で実行しでください。

 ラー……、国王陛下に報告して参りますので。」


 

 会議を終え、領庁から自宅である領主官邸に戻る。戻ると言っても、この世界に来て初めて行くので、戻ると言えるかどうかイマイチ不明。


 直ぐ隣の星にあるので、然程離れている訳でもない。普通に飛行移動しても数分間掛かるか掛からないかの距離。


 しかし、主人公はスキルの効果を調査する目的も兼ねて『瞬間移動』を使った。

 『ワープゲート』や『縮地』などのスキルも一度は候補に出たが、『瞬間移動』は汎用性が高い。

 移動する距離に応じてMPを消費するが、それは即ちMPさえあればかなりの距離も越えられることを意味する。

 主人公のMPは同レベルの最頻値の三倍はある。もはやMPタンクとしか言いようがない数値ではあるが、主人公腐れ縁の『ケモスキー』さんは更に多い。

 上には上がありますね。


 領主官邸のある星では住民がいない、正確には()()()()()()()()

 侍従やメイドは皆、官邸の使用人フロアに住んでおり、領主の身の周りの世話をする。


 筈なのだが、ゲーム時代は特にそういった機能があった訳でもなくほぼ背景であった。


 主人公は頭を下げる侍従とメイドの間をツカツカをくくり抜け、自室の部屋の扉を閉めた。


 「ふ~、いやマジでビビった!!なにその報告書の量!解説付きじゃなかったら詰んでたわ!寿命縮んだわ!300年くらい!」


 一般市民の主人公に、そんな大量の報告書を見る機会などなかった。

 仕事をするにあたって、書類を全く処理しない訳ではない。むしろ結構書類仕事をやってきた方だと主人公は思う。

 それでも、限度というものが存在する。

 主人公とて、領官たちが分かりやすく纏めてくれたことを知っている。分かりやすく解説してくれたことを知っている。

 自分に経営の才能も、莫大な領の仕組みとやりくりを短時間で理解できる頭脳を持ち合わせていないことは百も承知。


 心の中で部下を拝み続ける主人公は物理的に拝まないように次のことを思い馳せた。


 「うちって、そんなに使用人居たっけ!そりゃ屋敷が広くなると必要数が増えてくるから結構育てたことは認めよう。

 でもなんなんだよ、その尊敬の眼差しは!こっち結構気配探知系のパッシブスキルを習得しているからヒリヒリするくらい感じるんだよ!」

 

 小心者の主人公に、100近くの尊敬の視線を浴びるなんてことは拷問に近かった。

 いや、近いではない。まさしく拷問そのものである。嫌なことを拒否できなくし、いつまでもそれをし続ける。

 これを拷問と言わずになんて言おう。

 なんとか視線を感じずに忘れようにも、パッシブスキルをシャットダウンする方法は数少ない。

 そもそも、わざわざ自分のスキルを妨害しようとする変人が少ない。


 


 一息ついて気を落ち着かせる。

 執事のセバスチャンに誰も入れないように伝えた。ならばこの部屋の中には敵襲でもない限り、誰も入れない筈。


 連絡用アイテム『カシールの双面鏡』を取り出す。

 スキルを使ってもでもよかったが、スキルはさっき『瞬間移動』を試したから今回はアイテムのほうに決めた。

 

 『カシールの双面鏡』はイベントから入手したもので、旅商人のカシールと男爵令嬢のエンフィールの密会に使われたアイテムである。

 無事に二人をくっつければ謝礼に貰える。頼まれた任務は結構めんどくさいものばかりだったが、このアイテムは使い勝手が良いのでかなりのプレイヤーが参加した。


 気を引き締めて起動する。全てのアイテムが正常に作動するかは未だに不明。

 一から試さなければならない。ここにはクレームを入れる運営が存在しないから。


 「あー、あー、もしもし、こちらナポリタン。聞こえてますかー?聞こえてたら返事をくださいー。」


 もしこれで返事がなかったら、第一歩は頓挫したということになる。そうじゃないことを願う。


 「あー、こちらラーメン。聞こえてます。ヤドゥーユ領とルシェーラ領はそれぞれどうなってますか?」


 「ヤドゥーユ領を確認したところ無事みたいです。鉱山の採掘を通常の30倍に増加させました。艦隊プロジェクトが遅れることはないでしょう。

 ルシェーラ領についてはこれから向かうところです。みたところ、そちらも無事という可能性は大きいですが、言ってみないとまだ分かりません。」


 「それは何よりです。自分も心配が無用だと分かって嬉しく思います。ルシェーラ領の確認が済んだらこちらには戻らずにケルメオさんの統治領に向かってください。」


 「カッチェドにですね。分かりました。そこも大事な労働力がありますからね。」


 カッチェドには数百億のアンデットが存在する。王国一の労働力貯蓄庫にして食糧庫である。決まり切った作業しかない農業はアンデットがもってこい。


 「安全が確認できた場合、問題にならない程度にアンデットの労働者をヤドゥーユに持って行ってください。

 アクアさんがより効率の良い改造方法を編み出して、30倍では足りない可能性が出てきました。」


 「分かりました、ルシェーラの確認が済み次第、カッチェドに向かいます。」


 「よろしく頼みました。」


 急いでカッチェドに向かわなくては、ルシェーラの確認を早く終わらせよう。

 

ナポリタンさんの帰省はもう少し続きます。その後すぐに出張してアンデットたちと戯れます。

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