外資系テーマパーク殺人事件
岡山県での「ペーパーふぐ調理師殺人事件」、滋賀県での「万灯流し殺人事件」、栃木県での「しもつかれ・しょっから煮殺人事件」と過密スケジュールでの殺人事件捜査を行っていた僕は、事件で知り合った河豚調理師と共に、千葉県を訪れていた。
千葉県は、合法的に制服ケモ耳女子中学生を閲覧できる土地として知られている。起源は諸説あるが『南総里見八犬伝』に代表される千葉県民の異類婚姻譚趣味が、高じて獣人嗜好となり、県下全域でケモ耳に対する忌避感が薄く、女子中学生も当たり前のように昼日中にケモ耳カチューシャをつけて出歩くようになった、とも言われる。この地に進出した外資系テーマパークもまた、その土地柄に合わせて園内でケモ耳カチューシャを売るようになった。他県から来た修学旅行生等はケモ耳カチューシャがこのテーマパーク発祥であると思い込み、当たり前のようにそれを付けて出歩いているが、土着の民からどのような目で見られているか、歴史を知ってしまえば想像するだに恐ろしい。
僕は生憎とケモ耳趣味も女子中学生趣味もないのだが、連れの河豚調理師、谷許等はその限りではないようだった。ケモ耳の着用を強要することは児童福祉法に抵触する物だから、彼は常々千葉を訪れたいと願っていたのだと彼は熱く語り、ふうん、と僕は気のない相槌を打った。
その谷許の死が、今までの事件すべてに、複雑に絡み合い、つながっていたとは。
「落花生の筋のように……か」
谷許の最期の言葉を噛み締め、その棺桶に落花生の殻を一掴み振り撒く。地元を追放された彼を岡山の地に埋葬することは叶わなかったが、彼の愛した千葉の作法で、永住を望んだ千葉の砂浜に埋められることを、彼自身は喜んでいるだろうか。犯人が明らかになっても、死者は――何かしらの霊媒師の力を借りなければ――戻ってはこない。
四十三件を暗躍する県跨ぎの犯罪組織《落花生の筋》。その名が、谷許がその命と引き換えに残した情報だった。僕はそれを心に深く刻み込み、名前からして千葉に本拠地があるだろうと推理して、県警の人にお話しして、捜査を任せることとしたのだった。
ありがとうございました。




