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カタストロフ・クリーク  作者: 海風 奏
第2章 蒼槍の騎士と贄の歌姫
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第8章 絶望と希望入り混じる戦場、そしていつかの想い。

自分にしてはいいペースだなと感じております!

戦いはいよいよ終盤!盛り上がるよう頑張ります!


戦いは酷く一方的だった。まともな当たりは食らっていないものの、防戦一方。

やはりアレを使うしかない。


「そろそろか」


とその時、二波理事長がぽつりと呟く。


「できれば排除しておきたかったが、時間切れだな。ラボに向かわせてもらう」


「行かせるかッ!」


そう叫び、1歩を踏み出した瞬間、魔法陣が浮かび上がる。これは…罠か!


「ッ!」


咄嗟に体を捻って左に逸れる。ギリギリで爆撃を避けることができた。


「足止めは任せたぞ。阿良坂あらさか


「了解。この僕に任せてください」


「…《罠師ラヴーシュカー》」


「やあ、《月夜演舞ナイト・パラスタシア》二波理事長は忙しい人だからね。僕が相手になるよ。まあ僕がやることは徹底的な足止めだけど」


罠系は苦手なんだよなあ。下級の罠魔法でも、大抵は《読見の審判》などの魔法でも見えない。試しに発動する価値すらない。

対策は敵のパターンを把握する観察眼を鋭くし、あとはもう勘を頼りにするしかない。

まあ何が言いたいかというと、見えるののみに敏感な僕には不利な相手だと言うことだ。見えないものは《読見の審判》に頼りきってしまっていたがための自業自得でしかないのだが。


「さあ、僕の手中で踊ってくれ。水蓮寺君」


「阿良坂君の思い描く振り付け通りに踊ってやるもんか。台無しにする」


「やれるもんならやってみてよ。もう罠は設置してるから」


ここをどう突破するかは決まった。それを悟られぬよう演技をしながら、準備を進めるだけだ。

その過程で倒せればそれはそれで良し。早いに越したことはないからな。

さて、罠の中にも即発動型、秒数指定型、自発型とある。それらがどこにどういう意図であるのかを予測しながら動かなければ。

それが苦手且つ反射速度が速いのなら、即発動型は刀を滑らせてわざと起動させる。秒数指定型は発動直前に魔法陣が淡く発光する、自発型は何らかのアクションが必須、つまり目視してから回避。

とても危ない橋を渡ることになる。

迷う暇などこの場にない。僕はただ走るしかないのだ。


***


同刻、水明学院校門付近。

龍双は序盤こそ圧倒していたものの、形勢逆転を許してしまった。原因は魔力量の差。この1点に尽きるだろう。

《眼》と魔法を同時運用し続ければ、魔力消費が激しいのは目に見えてはいた。


「そろそろ限界ですか?加我君?」


「ぬかせ」


限界です。まじでもうダメ。

けど、負けたらまずいハヤテならワンチャンあると思ったが、見た感じ溶かしきることは無理だろう。

そろそろだな。残りの魔力的にもう限界だ。今しかない。

《時間》を《加速》できるのは物体だけじゃねえし。今まで絶対零度の氷を対象に《加速》させて、隙でも突こうなどと考えていたがもう無理だろう。


「そろそろ終いにしないか?唐木君?」


「いいですね。何処からでも、どうぞ?」


彼が得意としているのはカウンター。それに気をつけなければいけないが、龍双には関係のないことだった。


「10秒だ」


「…何?」


「10秒で決めてやるよ」


こんな調子の乗った龍双の発言に唐木は表情一つ変えず、苛立った。


「やれるものならやってみろ」


表情こそ変わっていないが、口調がバッチリ変わっていた。

なら遠慮なくと、龍双は1歩を踏み出す。刹那、《眼》を強く光らせる。

《加速眼》。世界で龍双だけが持つ希少亜種指定の《眼》。0.1秒の間だけ、指定した《時間》を加速させる。その倍率は本気の刀夜の比ではない。

だが所詮、0.1秒。なんの足しにもなり得ない。ただ1人、龍双を除いて、だが。

《ウロボロス》。永遠の象徴。その極大魔法は指定したものに《永続》の効果を付けること。

つまり龍双だけは、0.1秒の《加速》を、魔力が尽きぬ限り《永遠》に《加速》できる。


「ガハッ…」


唐木は血反吐を吐き、すぐに崩れ落ちる。

たった1秒。それだけあれば、龍双は唐木の体を刻み付けるのは容易い。

だが、これ程の物に代償が無いわけがない。

龍双は唐木の2倍近い血反吐を吐く。激しい頭痛に襲われ、体中に痛みが走る。

魔力消費が膨大な上に人体が耐えられる速度を軽く越したのだから当たり前だ。


もう無理だなぁ。任せよう。俺は少し寝る。


寝てしまったら覚めないかもしれないとか、全身が痛いだとかあるけど、疲労と睡魔には勝てず、龍双は意識を手放した。


***


ラボ内部。

雷切の1撃で白金を、ラボ内にぶち込み、やっとの思いで、内部に入ることができたサラたちは、破壊対象を視界に捉えた。


「なんとしても守れ!絶対にだ」


白金が声を荒げるが、疲労が激しいのか、返す声は上がらない。


「決めるぞ、風歌!」


「りょーかい、援護するね」


風歌は風を操り、雷切の直線上に白金のみの場面を作る。


「【我が雷。哮ろ。轟け。その一閃は万物を消し飛ばす雷光】」


雷切は即座に短い極大魔法の詠唱を唱え終える。そして低く構え、白金に一直線に突っ込んだ。


「【我無敵なり。我が肉体は傷つくことのない玉鋼】」


ほぼ同時に白金も極大魔法の詠唱を終える。


「【かい雷切らいきりつい〕】!!」


「【不動玉鋼菩薩ふどうたまはがねぼさつ】!!!」


結果を言えば、雷切は斬ることができなかった。だが、それでいい。

勢いよく振り抜かれた《雷切丸》は命中と同時に膨大な雷の放出が行われ、白金は思いきりぶっ飛ばした。

以後、白金は動く気配がない。軽い脳震盪を起こしたのだろう。

案外消費しなかったな。ぶっ倒れるかと思ってた。


「雷切!大丈夫!?」


「ああ、魔法はもう全く使えねえが、戦える」


「良かった。なら行くよ!」


「おうよ」


雷切と風歌はサラたちとバトンタッチして、水明学院の生徒の相手をする。


「ハヤテ、あれを壊して!唱える時間はあげるから!」


言われずとも。ハヤテは既に詠唱に入っていた。たっぷり1分半弱。詠唱回数190程度。これで壊れなかったら泣ける。極大魔法のネーミングなど、恥ずかしくてできなかったが、敢えて名付けるなら。


「【焼き尽くせ】!《グランプロミネンス・シャウト》!!!!」


爆発。舞う爆炎。広がる煙。ものすごい火力だというのに、ハヤテの顔色が良くない。真っ青とはこのことを言うのだろう。


「見事。だが取るに足らないな」


煙の正体は水蒸気。《海神》の水が蒸発したことにより発生したものだ。


「嘘…トー君が戦ってるはずじゃ」


「時間もないからね。《罠師ラヴーシュカー》、阿良坂に足止めを任せてこちらに来たんだよ」


最悪だ。最も強敵である二波理事長が、サラたちの前に立ちはだかる。


***


同刻。聖命学園。


「レン。起きろ」


声がした。私を呼んでいる。薄っすらと目を開けると、沙貴音さんと美咲さんが目に入る。無理に上体を起こすと、セリアリス先輩の姿も入った。

そこまで認識して、思い出す。


「ッ!沙貴音さん!すいません…ミナが」


「わかっている。なあ。まだ戦えるか」


「…………無理、です」


「どうして」


「ダメなんです。私に本物の戦争は、早かったんです」


「甘えるな」


そう言った沙貴音さんの声は聞いたことがないくらいに酷く冷たい声だった。


「こんな世の中だ。早いも遅いもクソもあるかよ。正直言えば私も美咲も第5次聖戦が初めての戦争だ。聖戦の試練なんてもの、ありはしなかったからな」


「どうして、沙貴音さんは、戦えたんですか」


単純に疑問に思った。ミナを守り抜く。それだけだけじゃもう1度立つのには足りなかったから。


「私が単純にバカだったと言うこともある。が、1番は、大切な人を失ったら、その後。戦争後の生活はどうなってしまうかと、考えたからだ」


失ってしまったという仮定で考えたと、沙貴音さんは言った。

ピンとこなかったが、ミナがいなくなってからを考えると、わかった。ゾクリとした。あの笑顔が、歌が、消えるのだと思うと、怖くなった。

その様子を見て、沙貴音さんはもう1度、私に問う。


「まだ、戦えるよな?」


今度は優しい声で。私は即答する。


「戦えます!…でも、実力不足です。目に見えてました」


「任せろ。都合の良さが売りの私だぞ?お前に《力》を授けてやる。強制解放の、な」


「強制解放?」


「解放状態に無理矢理にでもなるんだ。使用後は反動バカでかいが、いいか?」


「はい!問題ありません!」


そう返事すると、沙貴音さんはアホだろと笑いながら左手の甲に刻印をする。


「10分くらいしか保たないから気をつけろ。じゃ、セリアリス、ゴー」


「え、セリアリス先輩が連れて行ってくれるんですか?」


「ああ、戦線にも余裕ができたからな。行ってこい。ミナと一緒に帰ってきたら賞賛を送ってやるよ」


「ッ!はい!」


そして走って行く2人の背中。それを見守る沙貴音は、密かに思い馳せる。かつての戦友であり、恋い焦がれた唯一の《人間》。

まだ、あのお前はそこにいるよな。

次回は字数多くなるかもです。でも2つに分けると短い。というわけで次回で「蒼槍の騎士と贄の歌姫」は最終回です!

最後に刀夜について、触れていきたいと思います。

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