第2章 捜索
久しぶり過ぎる投稿です!
「…えっと、何の?」
僕はパートナーの意味を沙貴音さんに問う。
パートナー?人生のパートナーは決めてるからそれ以外ねっ!
「ああ、実はお前に仕事を頼みたいんだ」
お仕事のパートナーですね!なるほど!
「仕事ですか」
「ああ。少し厄介でな。まあお前はレンの護衛をしたらいい。目的地はレンが知ってる」
「まあその方が分かりやすくていいです。分かりました。明日ですか?」
沙貴音さんはしばし悩みコクリと頷く。
「分かりました」
「それで、だ。お前の服装これな」
と、差し出された袋を受け取る。中を見れば黒に赤のラインが少し入ったバトルスーツ、フード付きの黒いマント、そして目の部分が赤く光る黒い面が入っている。靴も手袋も黒。しかもそれら全てに認識阻害魔法陣が埋め込まれている。
「何処に行くんすか…」
「戦闘になって、学校がバレたら多分厄介だからな。そうそうほれ、ボイスチェンジャー。少し男にしては高いからな。これでダンディボイスになるといい」
戦闘になることを想定、いや確信している感じか。ん?
「あの、レンは?変装とか」
「私服にマントと面で大丈夫だろう。任務完了次第即帰ってきてもらうからな」
「分かりました」
「頼むぞ」
「了解です」
沙貴音さんには本当にお世話になってるから不安だが断れないなあ。
***
「んじゃサラ、行ってくるよ」
「うん。行ってらっしゃい。気をつけてね」
「うん。じゃあレン、行こうか」
「了解です」
そして僕とレンは継続加速魔法陣を展開し、走り出した。
「ねえレン」
と、切り出したのは走り出してからかなり経ち、森へ入った頃。行き場を聞かされていない僕は我慢することができずに聞いた。
「これ、何処に向かってるのかな」
「神樹の森の中心にあると言われている神域に向かいます」
「そんな存在不確定な場所に行くのか…不安だ」
「大丈夫だと思いますけどね」
神域は『証』を持つ者以外入ることができず、しかも他言無用。存在してるかしてないかすら言うことはできない。なのにほとんどの人が存在していると信じている。
ちなみに僕は信じていない派。
そんなことはさておき、神域を目指すと言ってもどう探し出すのだろうか。そもそも存在不確定だし、神樹の森の中心にあるって言ったのもお偉い人が適当に言ったことだし。
うーんと考えていると視界に黒い影が入る。その影は少しづつこちらを向いて…
「ッ…!」
「ふぐっ!?」
僕は加速魔法陣を6重に組み、すぐさま発動。一瞬にしてレンの前に行き、抱きとめ音を立てぬように茂みに隠れる。
その数秒後、2つ3つと足音が聞こえる。その足音は十数秒探すように歩き回り、どこかへ行った。
「ふぅ、いきなりごめんな、レン」
「いえいえ、ありがとうございます」
「ん、それより誰だ?」
「狙ってきたんでしょうね」
「僕たちが探しているのを?」
僕は何を?と問わずある程度予想をして聞く。するとレンはコクリと頷く。そしてゆっくりと口を開いた。
「はい、《歌姫》です!」
「ああ《歌姫》……………はぁ!?」
「ちょ、先輩声でかいです」
「す、すまん。いやそうじゃない。《歌姫》?《歌姫》を探しているのか?」
僕は軽く混乱したままレンに問うが、レンは冷静にコクリと頷くだけだ。その様子を見て僕も少しづつ落ち着く。
《歌姫》。膨大な《聖》の魔力を持ち、その歌声は全てを浄化すると言われ、平和の象徴となっている。
「…《歌姫》を探して、どうするの?」
「沙貴音さんには連れて帰れと」
はあ?何言ってんのあの人。僕は深くため息をつき、開き直ることにした。なんだか乗りかかるどころか乗ってしまった船にいるようなような気がしたから。
「はあ、まあいい急ごう。ささっと終わらせないといけない気がしてきた。何か手がかりとかないのか?」
「歌が聞こえないんですよね…私だけに聞こえる歌が聞こえるはずなんですけど」
「まだ遠すぎるとか?」
「かもです。もう少し中心付近に行ってみましょう」
僕とレンは静かに、素早く移動。中心へと急ぐ。するとレンが軽く目を見開く。
「先輩、聞こえました」
「案内頼む。僕には全く聞こえないから」
「はい!」
それから数分走ると、光の膜がドーム状に存在していた。
「これが神域っぽいですね、先輩」
「あったのか…まあいい、レン行ってらっしゃい」
「先輩は?」
「僕は『悪』だからね。神域に拒絶されると思う」
僕は苦笑いしながら告げる。それを聞いたレンはうーんと考えてからポンと手を叩く。
「大丈夫ですよ!行きましょう!」
と言って僕を無理矢理神域の中へと引きずり込む。
「わわっ!ちょ流石に……あれ?」
「ほら!大丈夫ですよ」
「そだね」
草木の全てが黄金に輝く夢の中にいるような感覚に陥る。だが、それらをも凌駕するほど、美しい少女がいた。
「《証》を」
美しい声音で短く言う。それで理解したのかレンは前髪で隠れていた左目を見せ、《蒼》に輝かせる。
それに反応するように、少女の右目が《碧》に輝く。
「付いてきてくれますか?」
「ええ」
「……………終わった?」
「はい、後はお持ち帰りするだけです!」
「言い方を考えようよ。まあいい、脱出させるよ。レン、彼女を抱えて走る体制になって、継続加速魔法陣を展開しておいて。僕が追加で加速を6重と減空気抵抗を組むから」
レンは黙ってコクリと頷く。レンも察せてる。囲まれているのだと。
「全速力でね。僕は引きつけるから」
「はい」
「3数えるよ。3、2、1、ゴー!」
僕の合図でレンは地面を蹴る。するとロケットの如く飛んで行った。
僕は空かさず予め書かせていた魔法陣を展開する。そして仮面を付けボイスチェンジャーをオンにする。
神域を出ると案の定囲まれている。予想より多いけど。
「結界魔法陣を解け」
「そんな義理はない」
「………殺れ」
「……」
殺意を剥き出しに迫る。それを目視してから僕も刀を抜刀した。
***
「そわそわし過ぎた。サラ」
「でも理事長!流石のトー君でも危険じゃないですか?」
「大丈夫だって」
ずっとこの調子のサラに、沙貴音はため息をついた。すると、コンコンとノックがされる。
「どうぞ」
「失礼します。《歌姫》の保護完了しました!」
「刀夜は」
「敵を引きつけてます」
まあそういう任を与えたからなと思いながら、沙貴音は口を開く。
「そうか。ならあいつが帰ってくるのを待とう。話はそれからだ」
「はい」
その数分後、刀夜は酷い傷を負った状態で、理事長室に顔を出した。
***
「大丈夫?トー君」
「うん。なんとかね」
治療室にて、僕は治療を受けている。なんだか最近怪我が多い気がする。
「刀夜、敵は誰か分かるか?」
「水明学院です」
「………仁か」
「二波理事長と知り合いなんでしたっけ」
「ああ、同級生で、共に聖戦を戦った仲だよ。誠の次に強い」
「父さんの次って、すごいですね」
父さんは昔、第五次聖戦において暗黒神に重傷を負わせ、撤退させた。その次の実力ならば手強い相手だ。
「何が目的なんでしょうか。何としてでも奪うっていう感じがビシビシ伝わってきたんですが」
「……聖戦の終焉だよ」
沙貴音さんが言い放つ。サラとレンは絶句していた。その一方で僕は、誰も気づくことのないように、笑ってしまった。
僕はまずいと思いすぐに顔を引き締める。
「《歌姫》は膨大な魔力を有していますけど、核でない限り………あ」
「そう。魔力核兵器でなければできない」
「でもそれでもそんなにいい方法と言えませんよ」
「多少の犠牲は仕方ない。そういう奴だ」
「多少!?その程度じゃ済まないですよ!」
僕は声を荒げて叫ぶ。サラとレンが少しビクつく。そういえばサラの前で声を荒げたのは初めてかもしれない。そう思いながら僕は沙貴音さんを睨むことをやめない。
「何か、対策を練らなければな」
「……戦争の、ですか?」
「……ああ。必ず居場所を突き止めて、渡すように言ってくる。拒否すれば、戦争だ」
核を使っても必ずしも聖戦が終わるとは限らない。それよりも今後起こる第六次聖戦に勝利する方が死人は少ないだろう。
核を使ってしまえは死人が多いだけでなく環境汚染もある。しかも、再起不能なほどの汚染になるだろう。魔力核兵器は普通の核兵器よりも強力で、危険なのだ。それが多少の範囲に入ってたまるものか。
「戦争は避けられんな。明日、集会を行う。今日はもう帰れ」
「…………了解です」
正直言ってもう言うことはない。僕は苛立ちを収められないまま理事長室を出た。
「トー君!」
サラが慌てて追ってきて、僕の隣を歩く。僕は少し歩行速度を緩めた。
「……また、戦争なんだね」
「仕方ないよ。そういう世界だ」
「先輩!《歌姫》は?」
「レンが預かっていてくれないかその子、そういえば名前聞いてなくない?」
と言うとレンはハッとした表情になる。レンも抜けてたらしい。
「ミナです。ミナ・フェローサ」
「こんにちは。僕は水蓮寺刀夜。そしてサラ・ヴァイスハートと、レン・アウクルス」
僕が勝手に二人の紹介も済ませる。サラとレンが挨拶すると、ミナは丁寧に挨拶を返した。
「んでトー君、これから、どうするの?」
「正直に言うと分からん。戦うんだから訓練しなきゃだとは思うけど、勝利条件も分かんない。水明学院を倒せばいいのか、ミナを守りきればいいのか、その場合いつまで守ればいいのか。まあ細かい事は気にしなくていい。沙貴音さんがなんとかする。だから訓練をしよう。龍双と八雲さんが来れるようならきてもらう」
「そうだね。そうしよっか」
今はただできる事且つ無駄にならない事をしよう。
「行こっか」
そう言って歩き出す。その先に希望があればいいなと、期待して。
次回、『歌姫』かな!




