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玉砕大尉の異世界英雄伝  作者: ペコちゃん
権力と統合
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失策

プロセリア側の表面上の動きがないまま2週間が過ぎた。当初の予定通り引き上げることにする。


探知魔法と諜報からの通信魔法によると、僕の暗殺のために二日前から既に待ち伏せしているようだ。ご苦労なことだ。


数や武器の種類は事前の情報と擦り合わせている。なるほど…問題ない。賓客が帰るというのにプロセリア側の対応は最低限のものであったが…問題ない。


まぁ、期待もしていなかったし、王都で襲われないだけマシだろう。むしろ、道路などを規制したのは意外だった。


まぁ、これは早く待ち伏せしている場所に行って欲しいからというのが理由かもしれない。舐められたものだ。まぁ、プロセリアにはマーシアとの戦争について正確な情報を一切伝えていない。


マーシアも伝えていないのだろう。現に、僕の暗殺に盗賊に毛が生えた程度の軍属を寄越したのだ。控えめに流した情報を、誇張していると考え過小評価しているのだろう。


一人で乗り込んだバスの前方に目をやると、そこには大きな金属塊がある。魔術で軽量化してあるが、実際の重さなら馬車が動かなくなってしまうほど重い。


この軽量化の魔術は、ミーア族が使っていた身軽になる魔法を僕とセロアが改良したものだ。これにより、今まで移動不可能だった物を動かすことができるようになった。


問題は魔力消費量が多すぎてることだが、安定して重さを軽減でき、一定時間継続するので魔術を使用している者だけでなく、魔術を使えない者も重量物を扱うことができるのが強みだ。


例えば、熟練の職人達が直接軽減した物体を扱えるのだ。これのおかげで山脈を超えて、多量の物資を運んだり、今まで不可能だった場所に砦を構築したりすることが容易になった。


馬車が速度を速め始めた。王都から出たらしい。待ち伏せしているプロセリア軍とは3時間後に会敵する予定だ。その間にマーチ殿下の馬車に乗り移らなければならない。


ーーーーー


近衛騎士隊と魔術騎士の指揮を任されたプロイセン貴族 バムエル ファンは完全に油断していた。


それは、南部大陸中部では不敗を誇るプロセリア騎士隊とマーシアからの軍事支援でより強力になった魔術騎士が指揮下にあり、敵がオースティンの大貴族を含む十名程度の少数だからだ。


常識から考えれば、勝利は確実だろう。負ける要素がない。しかも、生け捕りの必要もなく、あらゆる手段を使って殺せばいいだけだ。


はっきり言って、実際に3台の馬車と騎兵5を見たときは楽勝だとすら思っていた。既に包囲していると言っていい布陣だ。


しかし、魔術による奇襲攻撃を仕掛けた瞬間にそれが間違いだったと悟った。


魔術騎士と近衛の魔術師が放った遠距離魔法が全て弾かれたのだ。


「な…常時、防御魔法が展開されているとでも言うのか?それでは魔力が持ちまい。魔術騎士を先頭に包囲を狭めよ…直接攻撃で防御魔法を削れ!突撃ぃ!」


いくら防御魔法が展開されていても、数百名が構築する防御魔法とぶつかれば一時と持たない。そのはずであった。


ただ、次の瞬間に味方の防御魔法が解除され、減速できなかった数十名の兵達が防御魔法に吹き飛ばされた。


「な…なんだ。どうなっている?」


理解が追いつかない。相手はまだ何もしていないのだ。これで、攻撃されたらどんな被害が出るのか?


答えはすぐに出た。敵の先頭を走っていた馬車から出た閃光が進行方向の味方を全て薙ぎ払ったのだ。たったの一撃で百名近くは被害を受けただろう。


もはや、攻撃どころではなかった。次には自分達がああなるのではないか?兵達は蛇に睨まれたカエルのように身動きが取れなくなった。そんな中で、敵の護衛についていた騎士が声をあげた。


「この馬車が、オースティン王国大公爵ラース リットラント様の物と知っての狼藉か!卑怯にも賓客を襲うとは恥を知るがいい!ただ、ラース閣下は寛大であらせられる。大人しくここを通せば、他の者には慈悲を下さるそうだ。」


そう一方的に告げると、何事もなかったように馬車が進み始めた。ただ、その速度は通常の馬車よりはるかに速い…まるで馬車など引いてないようだ。


バムエルは一瞬ではあるが迷う。ただ、このまま王都に帰れば身の破滅である。なぜ?攻撃してこないのか。先程の攻撃を連発できれば、こちらの全滅さえ可能だろう。善意でなど考えられない。


「先程の閃光や防御魔術は数が撃てないのだ!今がチャンスだ!追え!追うのだ!」


それは、希望的な観測だったが、幸か不幸か常勝の指揮官のその声で騎士たちは我に返り、馬車を追い始めた。ただ、街道に全部隊が一列に並んだ状態になる。


まるで、ソレを待っていたかのように、先程の何倍もある閃光が全部隊を吹き飛ばしたのだ。落馬したバムエルと数名が生き残ったが他は全滅…。


「馬鹿な…」


そう言ってバムエルは地面に膝をつき呆然とした。ただ、本当の恐怖は王都に戻った時だった。


疲れ果て正気を失いそうだったが、祖国のため報告せねばならない。そう考え王都に戻ったバムエルが見たのは、プロセリア自慢の城壁の一部が吹き飛ばされ、王城も三つある塔の内の一つが崩壊した無残な王都の姿だった。


崩れ去った塔の中には、今回の襲撃を計画した貴族の大半がおり、ソレを聞いた時にバムエルはなんとか保っていた正気を失った。


この襲撃を理由にオースティンがプロセリアに宣戦布告したのは、プロセリア側の襲撃が失敗した2時間後であった。

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