内戦②
勅命から3日後には、グレン領に進軍、グレン家もこれを受け入れて、物資の提供など積極的な支援を行った。同日にグレン領周辺の南部派貴族が王に恭順を示し、こちらもこれに応じている。
思いのほか上手くいった。ブルーフ殿下の密告のタイミングも絶妙だ。グレン領の進軍が奴らの耳に入るのは明日の未明だろうが、聞けば泡を食うだろう。
数万の軍を編成して物資を準備すれば、当然に一週間以上かかる。にも関わらず、わずか3日程度で進軍し、本来は自分達の尖兵となるはずだった味方は開戦前に敵に寝返る。最悪の気分だろうな。
さて、馬上から討伐軍を見る。今回の討伐軍の装備は一見すると貧相に見えるかもしれない。
王国軍はプレートアーマを着ていることが多く、見るからに重厚で強そうな兵が多いのだが、討伐軍はレザーアーマが主で、頭部を守る兜こそ金属製だが最小限に抑えている。
この世界は防御魔法が発達してはいるが、使えるのは近衛などの一部のエリートだけだ。兵の多くはそもそも魔法を使えるないし、魔法を使えるものは武術が弱いことが多い。そのため、一般の兵は重装備になりがちだ。
ただ、僕とシルビアが二年の歳月をかけて作り上げたのは、10名の兵士に対して一人の魔術師をつける戦法だ。攻撃を兵士が、防御と強化を魔術師が分業することで何倍も効率を上げることが出来た。
さらに、魔法による防御力の向上と装備の見直しにより、兵士の重装備が必要なくなり、装備の重さが今までの3分の1以下になった。これだけで進軍速度は大分違ってくる。
それだけではない、この後の進軍でも、南部貴族は武装蜂起したことを後悔することになるだろう。
なんせ、セロアが実用化にこぎ着けた索敵と通信魔法機器は驚くほどの性能を発揮している。まず、索敵能力は敵意があるものが索敵範囲に入れば、人一人であろうとその位置を即座に把握し、追尾できる。魔力にもよるが、索敵範囲は平均して半径30kmである。
優秀な魔術師であれば、さらに広い索敵が可能であり、
それほど警戒せずに進軍できるし、待ち伏せや奇襲はほぼ不可能である。
加えて通信は50kmほどの通信半径を持ち、機器を持つ魔術士10名が中継して伝達すれば、反乱軍主力のいる都市の状況を瞬時に知ることができる。実際には50名ほど投入しているので、相手の状況は筒抜けだ。
ここ数年で、南部の街道を整備した甲斐も出てきた。なんせ、今回の討伐軍を先導するのは南部を出入りしていたミリィ子飼いの商人連中だ。
ここ何年も南部やプロセリアへ行商に行かせていたらしい。都市の構造から抜け道まで徹底的に調べさせていたのだ…いったいいつから見越していたんだ?まぁ、このおかげで進軍は驚くほど早く進むだろう。
「報告します。距離29km前方に敵意のある武装集団千程度が待ち構えています。どういたしますか?」
「千名で待ち伏せか…勇敢なことだ。それでは、騎馬隊Aで後方から奇襲し、混乱したところでグリフォン隊Bにより攻撃…その後本隊先頭部隊と挟撃しろ。」
このように本来なら奇襲を受ける場面でも、全く脅威にならない。それでも、散発的な襲撃はあるが、その度に、妻たちが作った状況に恐ろしさを感じる。絶対に妻の一人すら敵に回すのはやめよう。本当にそう思う。




