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玉砕大尉の異世界英雄伝  作者: ペコちゃん
第6章 王の剣
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グレン家

御三家グレン家の当主ブルーフはため息を吐く、どうしたものか…


御三家とは言ったものの、南部貴族と関係が深く、最も多くの貴族から支持されるヴェルセン家、北部貴族からの支持と現国王を輩出したベルモント家と比べれば勢力が弱く、影響力は格式でなんとか公爵家を上回る程度、実利的には公爵家にも及ばない。


与えられる役割も外務卿と財務卿であり、王の総務を補佐する宰相と実質的に軍務のトップである副元帥と比べると一段低く見られる役職である。


今までであれば、領地が王の直轄領の南側にあること、同じく直轄領に接するベルモント家とは様々な面で対立していたことで、南部貴族と関係の深いヴェルセン家と南部貴族筆頭であるオルタラント公爵家との関係を重視して安定していた。


実際、ここ数十年間は南部と北部の中継地としての役割を担い。経済力では、王直轄領、ヴェルセン王家、ベルモント王家、ハイラント公爵家に次ぐ規模を誇っていたし、軍事面でも王都防衛の後方支援や対マーシアにおける軍事物資の集積地として一定の影響力を保ってきた。


ただ、最近は何をやっても上手くいかない。いや、グレンだけではない南部全体が上手くいっていないのだ。原因はここ数年でベルモント王家、ハイラント公爵が経済規模を瞬く間に増大させているからだ。


その躍進はリットラント辺境伯…いやラース将軍の影響が大きいとも分かっている。ラース将軍が懇意にしているブルセント商会が、南部に安価で質の良い製品を供給しているからだ。


当初は中部の南部派閥貴族と連携して通行税を挙げることで産業を保護してきたが、食料や原料などの必要な物資まで値上がりしてしまいじり貧状態になった。


完成品だけに課税しようとしたが…そもそも入ってくる物資を全て見るなど人手がいくらあっても足らない。


さらに、ハイラントやリットラントの切り崩しで北部派閥に寝返る貴族も少数ではあるが存在した。とはいえ、当初は寒村を抱える領ばかりで、切り崩されても気にもしなかった。


さらに、寝返りの条件は、通行税を一定水準以下にする代わりに、リットラントからハイラントに続く、街道の整備と維持管理をリットラントを中心とする北部が行うこと。


また、貧しい領主は借金を抱えていることも多いため、高金利の借金を、低金利な借金に借り換えるなどの条件も出されたようだ。


これらには莫大な費用加えて人手が必要になる。さらに、盗賊や災害時の対策にも金がかかる。加えて、貧しい領主の借金など不良債権に近い。初め聞いた時には出来るはずがないと思ったし、牽制にしても意味のないことをすると思った。


しかし、寒村しか持たない領主からすればゼロに近い通行税収入を下げることで、街道が整備され、治安も維持され、借金の返済額も少なくなる。これでは、飛びつくしかない。


結果だけ見れば、その要所をついた切り崩しは見事としか言いようがない。なんせ最小限の切り崩しで、南部とその先のプロセリアまで続く物流を作り上げ、通行税による牽制は無意味になった。


さらに、寝返った領の歳出は物流による宿場町や商業の発展により、軒並み好転しており、不良債権だった貴族の借金も順調に返済されているらしい。


とはいえ、それは中小の貴族の場合である。ある程度の規模の貴族達やそれに近い南部貴族達は割りを食っており、不満が溜まっている。


さらに、北部貴族がここにきて進んで寝返りを求めないことも、南部貴族の結束に拍車をかけていた。寝返りたいと思って声をかけても冷遇されるのだ。


また、三大商家もブルセント商会の台頭に神経をとがらせおり、内々にではあるが、軍事行動を起こすなら協力するとまで言ってきている。商家が、これほど直接的に軍事行動に言及するのは異例である。


それほど、ブルセント商会と裏で糸を引くラース将軍の行動が商会にダメージを与えているのだろう。


プロセリアも動き出した。対オースティンの貿易収支の赤字が許容できる範囲を大きく超えたからだ。公式にオースティンに抗議している。


オルタラント公爵家はプロセリアと深い関係にあり、プロセリアからの軍事的協力を約束されていた。プロセリアと南部貴族による、対北部オースティン同盟である。


これは、南部貴族が軍事蜂起した際にプロセリアも国境に軍を集め、現王政府に圧力をかけるというものだ。マーシアがいる限り、王政府もリットラントも譲歩せざる得ないから成り立つ軍事的恫喝による交渉だ。


ただ、これはかなり危険な賭けだ。まず一つに目的がハッキリしていない。まぁ、短期的には経済的な補償と技術提供を求めることになるが、どこまで譲歩を求めるのか各貴族で曖昧だ。


各貴族が個々に切り崩され、先導した有力貴族が責任を取らされる可能性がある。ただ、これは現状のままではいずれ没落して力を失うので、賭けに出る者も多いいだろう。


南部貴族はオースティン全体の6割を占めており、数の上では優勢だ。領土の面積でも7割を占めている。有利は間違いないと思っている南部貴族が多い。


ブルーフもそう思いたかったが、財務卿としての見解は異なる。貴族の数はともかく、経済では北部が多少優れてていると知っているからだ。それは、確実な統計によるものではないが…


そもそも…オースティンは国家としての人口も把握しておらず、各貴族に任せているからだ。自身の領地でさえまともに把握しているのは一部の貴族だけだろう。ブルーフ自身も自領ならともかく、それほど気にしたことはない。


とはいえ、外務卿として物流の動きを資料で、長年のあいだ見てきたのだ。なんとなくは把握している。ただ、それだけだ、挙がってきた予算や脱税の兆候があれば別だがそれぞれの事象を細かくは検討していない。


ただ、今後どうするかという選択を迫られた状況で不安を払拭したかったのだろう。資料を見直すことにした。その途中で手が止まる…悪寒が走り、汗が額をつたう。


贔屓目に見ても1.5倍…悪ければ2倍以上の差がある。金銀の流通から見れば経済規模は多少どきろではない差がある。さらに、ベルモント領に物資が集まっている兆候がある。


これがどういう事か分からないほど馬鹿ではない。すぐに、早馬を走らせた。


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