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玉砕大尉の異世界英雄伝  作者: ペコちゃん
第6章 王の剣
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岐路

マーシアの侵攻から2年が経った。将軍職についたためお偉いさん方の会議にも参加せねばならなくなった。正直めんどくさい。


「私としましては、魔術兵、航空部隊及び王都の対空防御に関する研究、グリフォンによる航空部隊の拡充を希望します。」


「ふん…壊滅した帝政の魔術兵団を防ぐ方法や一般市民を攻撃する方法など研究する必要があるのかね?新設将軍殿はどうも心配症のようだ。なぁ、諸君!」


王家御三家の一つグレン家の当主であるブルーフ グレンが嫌味たっぷりと、取り巻きを煽りながら反論してくる。


「提出した書類は読んでいただきましたか?今後は、マーシアも航空戦力を増強してくるものと思われます。そうなれば、王都が直接攻撃される危険もあります。さらに言えば、空で騎士同士が戦い、その戦いの結果が勝敗を左右することになるかもしれません。」


「予測の話をしてもしょうがない。先の戦いでは帝政マーシアの脆弱性が明らかになった。新米の指揮官が数千の兵で撃退できたのがその証拠だ。その対策のために、予算を割くよりも経済の立て直しとプロセリアとの友好関係を強化することに力を注ぐべきだ。」


こちらは…御三家筆頭ヴェルセン家当主メルーボ ヴェルセン…宰相の地位にある馬鹿野郎…何かにつけて僕がやることにケチをつけたがる。まぁ、そうなるように仕向けたんだがね。


マーシアが脆弱?馬鹿か…死ぬのか?マーシアとオースティンには、未だに軍事的、経済的に隔絶した差がある。そもそも、今回の戦争で勝てたのは、グリフィンと前の世界の知識があったからだ。そのどちらかがなければ負けていた。


あと、プロセリアと友好?…そもそもプロセリアは領土紛争を抱えるは潜在的敵国だ。それに、ここ最近の貿易赤字で、対オースティン感情は悪化の一途を辿ってるはずだ。そのため、プロセリアはマーシアに接近しつつある。


要因はもう一つある。オースティンが大勝したことだ。今まで貿易の利益はあるが圧倒的に強く脅威であると認識されていたマーシアと自分のとこより少し強い隣国のオースティンが対立していることで、蝙蝠外交を展開してきたわけだ。


ただ、利益のある方は実はそれほど脅威ではなく、隣国の方が危険な国だと分かった。こう考えた場合、オースティンの弱体化という共通の目的のために、プロセリアとマーシアは急接近するはずだ。そうなれば、マーシアはプロセリアを支援してオースティンを牽制してくるだろう。


それを…同盟強化?アホか…こっちがその気でも向こうに梯子を外されるわ。それなら、マーシアの体制が不安定な今のうちにプロセリアと戦争した方がまだマシだ。


まぁ、このまま貿易していれば勝手に干上がるから建前上の同盟は維持しておけばいい。戦争なんてしてプロセリアを占領しても旨味は全くない。


経済の立て直しについては同意見だ。ただ、国際情勢を見れば軍事的な優位性がなければ国が保たない。何もしなければ…遅くとも20年後にはマーシアに占領されているだろ…


それに、経済を疲弊させているのはヴェルセン、グレン両王家の通行税や商業税などの重すぎる税と、域内への行き過ぎた保護主義のせいだ。


と考えていると、ザルフ卿から助け船が出る。


「まぁまぁ、グリフォン隊の新設はともかく…現在あるグリフォン隊の維持や対空防衛研究のための予算を出すぐらい良いのではないですか。先の戦争で結果を出したのはラース将軍だけですし、その意見は尊重されるべきではないでしょうか。」


「ふん…婿殿には甘い訳だ。身内贔屓は感心せんぞ。」

それにすかさず、


「身内贔屓?正しい評価をそう呼ぶならそうなのでしょうが…この度の戦功を評価し、ラース殿に将軍職をお与えになった陛下をお疑いなのでしょうか?」


「な…そうは申しておらん。ただ、些か不確定な要素がある。」


「不確定な要素は当然あるでしょう。なんせ未曾有の国難であったのは間違いない。不確定な要素をご自身の都合の良いように解釈することの方が感心しませんね。マーシアが弱体化していたなどどこの情報ですか?」


「ぐっ…」


おし、いいぞもっとやれ!ザルフ父ちゃんと心の中で煽っていると陛下が口を開く。


「ザルフ卿…もう良い。ここにおる者の中には、先の戦いの結果に色々と思いを巡らす者も多いようだ。たしかに、不確定な要素が多くある事は確かだ。」


ここで陛下が家臣を見渡す。


「ただ…今回のラース卿の活躍が我が国を救ったことは疑いのない事実だ。今はその事の真贋を争う時ではない。純粋に国の方策について話すべきではないのか。」


「…申し訳ございません!陛下、このザルフの浅慮をお許しください。」


「…申し訳ございません。」


「良い…二人とも国を思っての発言であろう。許す!」


言い争っていた王族と公爵が謝意を述べ、陛下が受け入れる。陛下…ザルフ卿…おふざけが過ぎる。


この通り、現在のオースティンでは王政府、ベルモント王家、ハイラント公爵家、リットラント辺境伯を中心とする北部貴族とヴェルセン王家、グレン王家、オルタラント公爵家、バインラント侯爵家を中心とする南部、中部貴族の対立が先鋭化しつつある。


貴族の数では南部、中部の方が多く、王族や貴族から見ると南部貴族が優勢に見える。それを好機と見たのか南部貴族を中心に不穏な動きを見せているのだ。


これは、僕が狙ったことでもある。この国の貴族領は通常の税に加え、通行税や商業税を取ることを許されている。そのため、交通の要所を抑えれば、税が取れる仕組みになっており、発展の妨げになっているのだ。


既に北部の貴族は、それらの税を廃止することで同意しているが、南部は収入が少なく消極的である。というのも貴族の数が多すぎるのだ。


これはオースティン全体の問題でもあるが、領地持ちの貴族の数を現状の3割ほど間引かなくてはまともな国家運営などできない。日本の版籍奉還のように領主に土地を返還させることが出来ればいいが、北部の貴族が応じても、南部貴族が応じないだろう。


そんなことをすれば、直接マーシアの脅威に晒されていない南部は、反乱を起こしかねない。


ただ、調査したところ総人口と経済規模は北部の方が遥かに大きいことが明らかになった。また、マーシアと戦ったのはほとんどが北部貴族であり、装備や武器も北部貴族が優越している状況だ。


つまり、経済的にも軍事的にもお話にならない差がついているのだ。どうせ反乱を起こすなら、マーシアが利用する暇もないほど、まとめて短期間で鎮圧したい。


そのため、あらゆる手段を使って、潰したい勢力が手を取り合い、反乱を起こすように誘導しているのだ。必要な情報は、全て握っている。


まともな諜報や情報の重要性など、まるで認識がないのだ。貴族の頭数だけ見ているのが良い証拠だ。ワザと流した有利な情報を鵜呑みにして、プロセリアとの連携や軍事的な優位をチラつかせる馬鹿もいる。


当初は僕も、経済的に締め付けて穏便な方法で領地を放棄させようと考えていたのだが、一部の賢しい馬鹿が、あろうことかセロアやミリィの暗殺を実行しようとしたり、分を弁えず脅迫してきたりしたため、直接的な方法をとることにした。


そして、一部の気づいた人間はこちらに取り込んでいく、優秀な人間ならば状況を把握すれば、こちらにつくのが正解だと気付くはずだ。そうならなくても、馬鹿は自分の聞きたくないことを言う部下を遠くに置きたがるものだ。


いずれにせよ。他国(プロセリア)と共謀して反乱を起こしたり、一定割合の貴族がまとまって軍を起こした瞬間に、陛下から南部討伐の勅命が出ることになっている。


向こうは戦うつもりなどなく、交渉のための挙兵のつもりだろうが、そんなことは許さない。覚悟ができていない馬鹿を徹底的に叩き、中央集権化の流れを作らせてもらう。

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