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玉砕大尉の異世界英雄伝  作者: ペコちゃん
第5章 世界の形
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商人達

オースティンの代表的な商会は、ダウ商会、ウエルス商会、キルマーズ商会で三大商会と呼ばれている。


これらの商会は、地域や分野が被らないように代表者による会議を開いて、競争を避け、利益を独占してきた。


会議では、競争相手を潰すため犯罪をでっち上げ、売れ始めた商品があれば職人を引き抜き奪い、地方領主と結託して利益を独占し、自分たちが有利になるようにありとあらゆる手段を話してきた。


ただ、ある理由で最近の議題はいつも決まりきっていた。今まで市場を独占してきた三大商会、その牙城を崩す存在が現れたのだ。


良質で安価な紙や砂糖を独占的に販売し、ありとあらゆる分野で動力機械による効率化を推し進めるリットラントの存在だ。


「しかし、ラース将軍には困ったものだ…慣習を守らず、勝手なことをされては困る。何か手を打たねばならん。」


ダウ商会のグスタムがそう言うと、それを目を剥いて非難するウエルス商会ジーク


「何かだと?何を気の長いことを言っておる。既に綿織物では市場を奪われておる。羊皮紙は元々が小さい市場だったし、紙とは用途が違うから当面は問題ないが、紙の市場はリットラントの独占状態じゃ…暗殺するなり、脅すなり早くすべきだ。」


その言葉に、堪らずキルマーズ商会のバインが口を開く。


「リットラントは国内最強戦力だぞ。相手がネズミならともかく、ライオンやドラゴンに猫をけしかけたって返り討ちに合うに決まっている。巻き添えはごめんだぞ。」


「それならどうする?王陛下に直談判でもするか?」


「リットラントは陛下のお気に入りだ。リットラントが進出してない分野で生き残りをはかるしかないな。」


「…逆にこちらが奴らの牙城を食い破ってやればいい。」


「…やろうとした。ただ、あちらの待遇が良く職人がうまく引き抜けない。引き抜いたとしても、工程ごとに細かく分けられていて、商品が生産できるまで時間がかかる。そして、製品が出荷できる頃には、こちらが競争できないほど安価で売られている。こちらが干からびるのが先だろう。」


「賄賂はどうだ…こちらに引き込むんだ。」


「…既にラース将軍の個人資産だけで国内有数の金持ちだ。引き込んだところで我々が無一文になっては意味がないだろう。」


「…ヴェルセン…グレン両王家はどうだ?オルタラント公爵も内心は面白く思っておらんのではないか?」


「まぁ、それはそうじゃろ。穀物の実りが豊かな北部に産業まで持っていかれては、南部の貴族と関係が深い両王家やオルタラント公爵は面白くないだろ。オルタラントはさらに、プロセリアとの関係で恥をかかされたとの思いも強いのでは?」


オースティンはリットラントを中心とする北部の農業地帯、王都とハイラントを中心とする北西部の商業地帯、ヴェルセン、グレン両王家を中心とする南東部の産業地帯、オルタラントの南部は工業地帯とプロセリアとの貿易というようにそれぞれの強みが分かれてバランスが取れていたのだ。


それが、リットラントの早すぎる工業化で壊れつつある。さらに、マーシアから得た旧オースティン領は、王都直轄領となり、そこから安価な鉱物資源が大量にリットラントに入っていることも事態に拍車をかけていた。


農産物を買わなければ生活できない南部は、北部や王都が商品を買わなくなれば金銀の流出が止まらない。そのため、王都に対する不満が高まっていた。


「ならば利用できんか?両王家とオルタラントを焚きつけて王位を簒奪させる。失敗しても、北部のリットラントやハイラントはマーシアとの戦争に備える必要があり、内戦はできんはずだ。譲歩させることが出来るのではないか?」


「危険ではないか?もし、内戦になったら国が滅びかねん。」


「いや、どちらにせよ。このままじゃ没落だ。そうなれば、押さえつけてきた連中がここぞとばかりに攻撃してくるのは目に見えてる。」


「確かに、それに南部と中部が反旗を翻せば、こちらが多数派になる…中立が大半だろうが、数的にはこちらが有利だ。内戦になったとしても、小競り合いで終わる。そのうちに、マーシアが攻めてきて、南部から援助を申し出れば和解できるだろう。」


「そうだな。リスクはほとんどないように思う。むしろ、プロセリアと南部貴族の関係を取り持って独立すると脅せば…譲歩を引き出せるのでは?」


ここで3人の老人は自分たちの誤りに気づくことが出来なかった。


リットラントは軍事力で成り立ってきた騎士の家だ。それが、商人の真似事をして国の富を独占しはじめた。そんなことが上手くいくはずはないと、南部の貴族が結託すれば力の天秤は戻るはずだと、そう考えたのだ。


ただ、この時代のオースティンの産業規模は農業を含む一次産業が最大であるし、農業地帯であるリットラントは人口でいっても王都を除けば、国内最大の人口を誇る。ハイラントも国内第3位の人口を抱えている。


オースティンを北部と南部に分けると、人口比は2:1で、全産業の域内総生産に至っては4:1の差が付いている。王都を含めればさらに広がるのだ。


そもそもバランスが取れていただけで、明確な力の差があることを失念し、貴族の数だけを勘定した商会の長達は商人というよりも、汚職にまみれ、視野が狭くなった政治家と言った方が良いくらいだろう。


いずれにせよ。国の形が大きく変わりつつある。

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