シルビアの英雄伝
週末の予定を書き込んだ羊皮紙を見る。思わず顔がニヤけるのを抑えられない。明日からの土日はラースを独り占め出来る数少ない週末だ。
ラースの週末は、余→ミリィ→セロアたん→全員で過ごすのローテーションで回っている。他にも細かいルールはあるが、とりあえず明日は私の番だ。
しかし、ラースはとんでもない…前々回は防御魔法なしのハンデ戦で模擬試合をやったが、防御魔法がないにも関わらず、10秒くらいでこちらの防御魔法が強制解除されて、ボコボコにされた。
前回はエトグリーク殿と二人掛りで模擬試合をやったが、普通にボコボコにされた。エトグリーク殿は、単純な戦闘力じゃ勇者様より強いんじゃないのか?
終わった後に、エトグリーク殿がすでに勇者を超えた強さだと漏らしていた。どんだけだよ。本当に14歳か?
あと、剣士と魔術師で分業して魔術兵を作る発想とかとんでもない。普通…思いついてもやらない。というか、ぶっつけ本番で3千人の兵の防御魔法と身体の強化、回復を並行してやるなんて無理だろ。10人がせいぜいだよ。
しかも、兵の話では1万の魔術兵団相手に自分が先陣をきって戦っていたという。本当によく生きてたな。普通だったら1万回は死んでる。
まさに英雄!勝利の知らせを聞いた時はどれほど興奮し、喜んだことか。ただ、それだけにセロア殿の件はショックだった。思い出すと腹が立つ。
英雄色を好むという。確かにお父様も側室や愛人が何人もいる。だから、妾もずっと我慢しなさいと言うほど狭量ではない。順序さえ守れば許してやるつもりだった。
でも、あのタイミングでセロア殿に手を出すのは最悪だ。普通…結婚を約束した美女が二人も帰りを待っているのに、いくら初恋の相手と言っても手を出すか?
普通に考えて喧嘩売っとるだろ。まぁ、頭に血がのぼって結婚を白紙に戻そうとしたのは、やり過ぎだったか?いや、やり過ぎじゃない。世の女性のほとんどは妾と同じ反応をするはずだ。
ただ、そもそも私に選択肢なんてなかったのだ。ラースと結婚できなければ、王族とはいえ混ざり物の私は領土持ちの上級貴族に嫁ぐか、プロセリアかフーリアの王族の側室になるかのどちらかだったろう。
白紙に戻せば、ラースが王にでもならない限りは結婚できる可能性はほとんどなかっただろう。そう考えるとゾっとする。
よかった白紙にしなくて…結局はラースのことが好きで、好きで仕方ないのだ。怒りで我を忘れることはあるかもしれない。ただ、それもラースが耳元で何かを囁けば全て霧散してしまう。
それに、よくよく考えればセロアたんは可愛いし、話も合う。異種族だからか、混血の私にも、王族の余にも過度に反応することがなく、自然体で接してくれている点もいい。
そう考えると、セロアたんとめぐり合わせてくれたラースに感謝しなければならないかな?いや、やっぱり…それはおかしい。腹が立つ。
ん?なんか考えが逸れてるな。とりあえず、明日、何を着ていくか考えよう。明日は思いっきり、ラースに相手にしてもらおう。




