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玉砕大尉の異世界英雄伝  作者: ペコちゃん
第3章 英雄の凱旋
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開戦

帝政軍の再侵攻の知らせを受けて、僕は自分の部隊に向かった。野営場に着くと、すでに装備を身に付け、整列する隊が見えた。


僕が姿を見せた瞬間に副官が号令をかける。

「気をつけぇーー」


一糸乱れぬ動作を見ながら隊の真ん中ぐらいで歩みを止め、隊と正対する。この一ヶ月間、前世の礼式も徹底的に叩きこんだ。


「ラース将軍にぃー敬礼ぇー!」


三千の敬礼に応えながら、ここまで仕上げた自分を褒めてやりたい気持ちになった。


その気持ちを抑えながら、高揚感はそのままに口を開く。


「諸君…ついにこの日が来た。帝政軍との戦争がついに始まるのだ!一ヶ月前…諸君らは少なくとも強者ではなかった。ただ、今この場にいる諸君らは間違いなくオースティン最強の強兵だ!誇るがいい!」


ここで少し間を置き…全体を見渡す…もう、ラースに不満を持つ者はここにはいない。ここにいる全員がラースの強さを知っているからだ。


「我らが相手は侵略者30万…相手にとって不足はない。いいか!諸君…我が物顔で我らが祖国に足を踏み入れた愚か者どもを蹂躙し!ただ殺せ!ひたすら殺せ!」


「殺せ!殺せ!殺せ!」呼応するように、隊員から殺せコールがおこる。少しやり過ぎたかもしれないが…今は気にしない。


「それでは諸君!出撃だ各自の全力を尽くせ!」そう言うと、隊は進軍を開始したーーー



ーーー予定通り、隊は少し傾斜のある、道幅の狭い場所に隊列を組んだ。周辺の高台にはリットラント守備隊の弓隊が陣取っている。


帝政軍が姿を見せた瞬間、僕は準備していた魔法を展開した。ぎゃぎゃぎゃぎゃ!と金属と金属がぶつかり合うような音の後に帝政軍の防御魔法が霧散した。それと同時に、こちら側の弓矢が雨のように降り注ぐ、僕も正面から攻撃魔法を連続で放つ!


先日の戦いで、相手の防御魔術が邪魔で攻撃が通りにくく、手間取ったので防御魔術自体を無効にする方法を考えたのである。


結果を言えば、帝政軍の第一陣はほぼ全滅だ…しかし、次から次へと前へ出てくる帝政軍…防御魔法が無理と悟るや、大盾をを前にして突っ込んで来た。少なくない犠牲を出しながらも徐々に間合いを詰めてくる。


そして、ついに我が隊の数十mまで迫ったころ…、こちらも動いた。防御魔法を全力で展開し、全員に突入を命じた。


「総員!突撃ィー!」


衝突の瞬間に、防御魔法で帝政軍の兵隊が吹き飛んで行く。まさに破竹の勢いだ…負傷者も出ているが、すぐに回復魔術で回復させる。

これは、歩兵と戦車の戦いだ。ただ、一つの疑問が思考をよぎる。あまりに容易に進みすぎているからだ。ーーー


ーーーオースティン軍と交戦に入った事を聞いた皇帝カーディナルは自分の判断が正しかったことに、半分の安堵と半分の苛立ちを感じていた。それは、嫌な予感が的中したことへの苛立ちと対応を誤らなかったことへの安堵であった。


すでに入った情報では、数千の兵に5万の兵が押し返されており、損害もおそろしい勢いで増えていた。


数的優位にあり、半日も経っていないにもかかわらず、当て馬の隷属兵5万はその数を半数以下に減らしていたのだ。


「…ふむ、急造の隷属兵とはいえ5万…少なくとも3日は持ち堪えると思ったが…想像以上だな。よい、小手調べは済んだ市民兵たちは下がらせよ。」


そう言うとカーディナルは、伝令に向かい指揮を出す。


「奴らが誘いに乗ったら全軍で魔術を放て…隷属兵ごとで構わない。そう全軍に伝えよ。」


近衛兵はその命令通りに準備に入った。ーーー


引き始めた帝政軍を前に、ラースは疑問を感じてはいたが…追撃すれば大きな打撃を与えることが出来ると考え、追撃を命じる。


追撃は驚く程の効果を出した。何せ狭い街道を数万の敗残兵が逃げようとするのだ。こちらが何もしなくても、帝政軍同士で将棋倒しに合い。帝政軍の損害が次々に増えていく。帝政軍が容易であれば、あるほどラースの疑問は大きくなっていく。


そして…少し開けた場所に差し掛かった時にそれは起きた。


「しまった…!」ラースが敵の作戦に気が付いた時には、帝政軍の遠距離魔法がラースの隊を襲ったーーー。


ーーー皇帝カーディナルは自軍の攻撃魔法が連続して着弾する音を聞き…作戦が成功したことを喜んだ。


「フハハハハ…罠に嵌ったようだな。遠距離魔法が尽きるまで放ち続けろ!そして、近衛魔術師団に突撃の準備をさせておけ!」


遠距離魔法が終れば…帝政軍最強の近衛魔術師団がオースティン軍の残党に襲いかかる。魔術師団は第1から第100までの魔術兵団からなる総員1万の師団だ。


近衛魔術師団は皇帝のみが指揮権を持ち、皇帝の剣と呼ばれている。その歴史は帝政マーシアがマーシア公国と呼ばれるオースティンの属国であった300年前に遡る。


300年前…帝政マーシアの初代皇帝は魔術を発展させ、第1から第3までの魔術兵団を作りだした。その後、周辺の小国を合併し国土を広げ、マーシア王国と名乗りオースティンとの間で独立戦争となった。


魔術兵団が参加したこの戦争の結果はオースティン王国の惨敗であり、オースティンはミットラント山脈の北側の属国を全て失った。


その後、マーシア王国は中央大陸の諸国の半分を属州とし、帝政マーシアと名を変えて中央大陸各地で戦争を繰り広げ、領土を拡大させて行った。


そして、約20年前にオースティンに2度目の戦争を仕掛けた。その時、オースティンはミットラントの北側のへーデル平野を決戦の地に選び、またしても惨敗する。


名高き将軍たちが次々と討ち取られる中で、ついに若きゼロフィスが指揮権を任せられ、ミットラント山脈の地形を利用してどうにか帝政軍を山脈の向こう側へ撤退させた。


しかし…オースティン王国は軍の大半を失いミットラント山脈より北側の領地を全て譲渡するという不利な停戦条約を結ばざる得なかった…国内向けには、小さな勝利を大げさに流し、リットラントを英雄とすることでなんとか国民の目を逸らし、体面を保ったのである。


ただ、帝政マーシアとオースティン王国の国力差を考えればこの時にオースティンが滅んでいてもおかしくなかった。


そうならなかったのは3つの幸運が重なったからだ。一つは帝政マーシアがオースティン王国を軽んじていたため、初戦では攻め込まず交渉を優先したため、敗走する兵を追撃しなかったこと。結果、リットラントで再編成されたオースティン軍に苦戦し撤退せざる得なくなった。


二つ目はミットラント山脈が天然の要塞として非常に優秀であったこと。


三つ目は帝政マーシアの東方にあった大国が帝政マーシアに対し宣戦布告したため、帝政マーシアが東方の戦争に集中するためオースティンに停戦を持ちかけてきたことである。


この三つが一つでも欠けていたら、また、魔術兵団があと一つでもオースティンとの戦争に加わっていればオースティンは滅んでいたと言われている。


今の帝政マーシアは中央大陸の占領をほぼ終え、その全ての魔術兵団をオースティンに向かわせることが可能となったのだ。100人で国家間の戦争に影響を与える…そんな魔術兵団が一万である。


カーディナルはオースティンの奮闘を評価しながらも、帝政マーシアの勝利を疑うことは決してなかった。

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