表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
玉砕大尉の異世界英雄伝  作者: ペコちゃん
第3章 英雄の凱旋
33/77

不死の軍勢

ーー朝、目を覚ますと、セロアが僕の腕の中で寝息をたてていた。セロアを起こさないように布団から出ると猛烈な頭痛に襲われる。前世以来の二日酔いだ。


できれば、二度寝をしたいところだが今日は陛下から預かった三千の兵の様子を見なければならない。作戦について打ち合わせもしたい。


軽く顔を洗い、準備を整えると三千の兵が駐屯している広場へ足を運んだ。まずは、訓練の風景を見る。なるほど、よく訓練されている。ただ、上級貴族の三男坊などの志願兵たちだからか、良くも悪くも上品すぎる。


こうして、訓練を一通り見ていると、副官のデームス グロテリアが下士官を伴って駆け寄ってきた。


「ラース将軍…総員三千名!異常なく到着しました。」


臨時とはいえ、将軍と呼ばれて少し照れ臭い気持ちになった。僕に指揮権を与えるために作られた官職らしい。


「遠路、ご苦労様でした。訓練の様子を見せてもらいました。なかなか良い出来ですね。」


「…なかなか?」

下士官の一人がやや不満そうに述べる。まぁ、いきなり僕のような若造が指揮官になれば不満を持つ者もいるだろう。学校ならばほっておいても良いことだが、ここは軍隊だ上官に舐めた口は聞かせない。


「そこの君…何か不満があるのなら聞こう。前に出たまえ。」


「…あ、はいはい、気に障りましたか。すいませんね。思ったことが口に出ちゃうもんでね。」見れば髭面の30代くらいの、大男が前に出てきた。


「謝罪など求めていない。不満の理由を聞いているのだ!」


「…へいへい、実戦も知らん坊ちゃんになかなか良いなんて言われたくないってことですよ。言わんでもわかるでしょう?」


その男が理由を言い終わった瞬間、僕は剣を抜き、男の首スレスレで剣を止める。

「…いいか!実戦も知らないような坊ちゃんに、不意打ちを食らって反応も出来ない程度の士官が指揮など取っているから、なかなかなどと言われるのだ。」


男から剣を引くと同時に、男の腹を死なない程度に思い切り蹴飛ばした。男は吹き飛ばされ嘔吐しながら転げ回る。


「いいか士官諸君!私は意見や要望ならば喜んで聞こう!しかし、軍の規律を乱すような態度を取るならば容赦はしない。心するように!」

静まり返る士官たち


「わかったのならば、副官を残し訓練に戻れ!」

士官たちは走って訓練に戻って行った。うん、素直でよろしい。


「デームス殿…部下の教育が出来ていないようですね。軍規を乱すような行動に出ないように再教育をお願いします。」


「はっ…申し訳ありません…今後はこの様なことがないようにいたします。」


「まぁ、良いでしょう。あと、これは僕からです。隊の皆さんに美味い食事と酒をたらふく食べさせてあげてください。もちろん、そこの男にもね。」

そう言うと僕は、副官に大金貨を20枚ほど渡した。三千人がたらふく飲み食いしてもお釣りが来る額だ。


「こんなにいただけません。…隊員には十分な食事を与えています。」


「近日中には戦争が始まります。その前に英気を養わせてあげて下さい。それと明日からの訓練には僕も参加させてもらいます。」


僕は最前線で戦うつもりだ、僕が率いる彼らも最前線で戦うことになる。被害を最小限にする努力はするが、彼らには過酷な戦場を這い回ってもらうことになる。その罪悪感を少しでも振り払うために、僕は押し付けるようにお金を渡すとその場を後にした。


次の日、士官たちを集めて作戦を伝える。まず一つ目は、狭い道幅を利用して少数でも大人数と戦えるようにすることだ。


すでに、エトグリークに調査してもらい、何カ所か待ち伏せに適した場所を確保している。その場所を地図を見せながら説明する。


二つ目は回復魔法と防御魔法についてである。帝政軍やリットラント守備隊に比べて、王都周辺の軍属は回復や防御魔術を軽視する傾向がある。


それは、王都周辺の軍属の任務が盗賊や一揆の制圧が主であり、圧倒的に有利な戦いであるため、その様な魔術が必要ないからである。


しかし、今度の相手は20倍近い相手でこちらが圧倒的に不利な状況だ。防御や回復に関しては僕が担当するつもりだが、その重要性を知ってもらう必要がある。


「それでは、まず、防御魔法の重要性を知ってもらうため1部隊ずつ私の相手をしてもらいます。」


「…へっ?一部隊は100人ですよ。一人で相手をされるつもりですか?」


「はい、すぐに準備してください。もちろん実戦で使用する武器で、本気で攻撃してくれて構いません。」


「正気ですか…」


「もちろんです。それじゃ、私に不満気だった昨日の士官の人の部隊からお願いします。君もその方がいいだろ?」敵意を隠そうともしない士官に声をかける。


「…いいんですかい?殺してしまうかもしれませんぜ。」


「そうだな、殺すつもりで来い。」


「ククク…すぐに準備をして来ます。待っていて下さい。」


訓練場の真ん中で木剣だけを持ち平服で、待っていると武装し、騎乗した100人の部隊が現れる。なるほど、なかなか壮観だ。部隊が事前に決めた開始位置につくと、模擬戦開始の合図がなされた。


合図と共に騎馬が僕に向かって殺到する。思ったより統率が取れている。いい部隊だ…しかし、遠距離魔法を放てばこの時点で終わりだ。


しかし、それでは殺してしまう可能性がある。今日は一人一人を殴ろう…そう考えていると、最初の騎馬が槍で攻撃して来た。僕はそれを最小限度の防御魔法で避けると木刀で一人目の腹部を突いた。後は同じ要領を100回繰り替えした。


20分後には戦闘不能になった100名とそれを見て唖然としている2900名がいた。


「さて、それじゃあ次に行きますか。」ーー


夕暮れに差し掛かる頃…最後の一人を倒し終わった。とりあえず重傷者にのみ回復魔法をかけてから話しはじめる。軽傷者を治さないのは痛みを覚えさせるためだ。


「…明日からは、各部隊同士で模擬戦の訓練をしてもらいます。僕が防御魔法と回復魔法を担当しますので、互いに全力で攻撃してもらって構いません。ああ、ただ武器は練習用の武器にしてください。死ぬと流石に生き返らすことはできないので…」


「今日の痛みを忘れないでしっかり訓練してください。明日からは負けた部隊に僕ともう一戦してもらいます。あー、あと逃げ出したりしないでくださいね…今は戦時ですから敵前逃亡と見なして懲罰します。それでは、今日はこれでおわります。」


そう言うと、僕はその場を後にした。次の日から、模擬戦が始まった。模擬戦自体は僕が防御魔法を使用しているため、ほとんど危険はない。この模擬戦の目的は、防御魔法の隙間を見つけることと、攻撃に特化させることだ。


模擬戦に負けた部隊には地獄の思いをさせた。わざと苦痛を与えて、僕と二度と戦いたくないと思わせた。ただ、次の日の訓練に支障が出ないように回復魔法を使われるので…勝つ以外は逃れる術はない。


そうすることで次は絶対勝たなければと工夫することになる。血と泥に塗れて初めて軍人として完成するのだ。


こうして、帝政軍の侵攻が始まった1カ月後には、この世界で最も精強かつ命知らずな部隊が完成した。後にこの軍団は帝政軍にこう呼ばれることになる。不死王と不死者の軍勢とーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ