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玉砕大尉の異世界英雄伝  作者: ペコちゃん
第2章 貴族院学校に入学します。
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王都へ

ーー王都の街並みは素晴らしかった、建物はレンガ造りに統一され、路面は敷石でしっかりと整備されていた。


王宮へと続く大通りなどは、光魔法を使用した街灯が設置されており、夜だというのに明るかった。


王都の街並みに感心していると、目的地であるハイラント家の前に着いた。国の要職に就くような貴族は王都にも屋敷を持つものらしい。


広さなら、リットラント家の屋敷の方が広い。ただ、こちらの屋敷は細かい装飾が施されており、屋敷大半が大理石で作られるなどより豪奢な作りだった。王国の迎賓館と言っても信じてしまいそうだ。


馬車を降りると、到着の連絡を受けて待っていたのだろう。貴族風の男が興奮した様子で待ち構えていた。


「おおー可愛らしい私のミリィ!よくぞ戻って来てくれた。」


人目も憚らず、ミリィに抱きつく…男は、整えられた顎髭ときっちり整えられた頭髪をしており、片眼鏡を掛けたその姿は厳格な貴族そのものだったので、落差がすごい… 。


「ちょっと、お父様…は、恥ずかしいです。おやめください。」


頬ずりしそうな勢いだったが…ミリィの抗議を受けて、スッと離れる。


そこで、ようやく僕に気付いたように


「これはこれは、お恥ずかしい所をお見せしたかな?はじめまして、ザルフ ハインラントだ。よろしく頼む。」


「親子の抱擁を邪魔したようで申し訳ありません。はじめまして、ラース リットラントと申します。よろしくお願いします。」


「娘の手紙で君のことは、聞いているよ。なるほど、姉上にそっくりだ。…とても、あの厳ついゼロフィスの息子とは思えないよ。」


「父をご存知で?」


「ああ、貴族院学校で同期だった。」


「そうでしたか、父も貴族院学校に入校していたのですね」

実は、ザルフ公爵の話は父からも聞いた…「ザルフは頭でっかちで頑固で思い込みが激しいが、義理を通すやつだ信用できる。なんか失敗しても許してやれ、必ず見返りがある。」との評価だった。


継承争いの相手方であるザルフの兄ラルフールについてはこう言っていた。「自分が優秀だと思い込んでる大馬鹿ヤローだ…プライドばかり高くて馬鹿のくせに人の意見を聞かない。そればかりか、他人を常に見下して無いと気がすまない。間違っても信用出来ないタイプの人間だ。失敗したら徹底的に追い込め」


要するに、父は公爵家の争いに積極的に関与しないが、内心はザルフを応援しているのだ。


「まぁ、立ち話もなんだ、中に入ってくれ夕食の準備が出来ている。」



料理は趣向を凝らした料理が順番にでてきた。前菜から始まり、サラダ、スープ、パン、魚料理、口直しのソルベ、肉料理、フルーツと続き、焼き菓子と珈琲の様な飲み物までついた。


すべての料理が丁寧に作られており、非常に美味しかった。量は多かったが1(・・)以外は全て食べ切った。


特に、クリームの乗った焼き菓子はセロアが好きそうだ。つい、セロアの事を考えてしまっている自分に気づいて心の中で苦笑してしまう。


その時、ザルフから声がかかった。

「そう言えば、ラース君も貴族院学校に入るんだったね。」


「はい、とは言っても特別試験を合格すればですが…。」

とは言っても、特別試験の問題をミリィに見せてもらったが…学科も実技も楽勝だと自信を持って言える。


「ゼロフィスは剣術や馬術は得意だったが、勉強の方は平均以下だったから…少し心配だな。」


「ラースなら大丈夫です。ラースが受からないなら誰も受かりません。」

ミリィが横から言い切った。


「そうか、ずいぶん娘に信頼されているようだね。ラース君…」

やや眉をあげ、おもしろくなさそうに言うザルフ。


「はい、仲良くさせていただいております。ただ、僕を少し過大評価し過ぎている気がしますが…」

苦笑いしながらそう答える


ミリィは少し不服そうだが、それ以上は何も言わない。自分の父親が、僕を品定めしていることに気付いたからだ。


「いや、これでもミリィの事はわかっているつもりだ。好き嫌いで評価を変える様な娘ではない。ミリィがこう言うなら、君は間違いなく優秀なのだろう。」顔を笑顔に戻してザルフはそう言った。


「とは言っても、ミリィの手紙は信じ難いことばかりだ…魔術はすでに高級魔術師並みで、ゼロフィスと剣術で互角に渡り合い、あまつさえ盗賊50人をほとんど一人で倒したなどと聞いている。」


「もはや、御伽噺の世界だ。疑うのも許してほしい…そこでだ…私の部下の中で、剣の腕が立つものを何人か用意させてもらった。ゼロフィス程ではないがね」


「魔術に関しては信じていただけたようですね。」少しからかう様に言った。


「ああ、優れた魔術師は毒の入ったものを見分けるそうだね。」ザルフは僕の唯一残した肉料理を見て、やや申し訳なさそうに言った。魔術師の力量を見るために、貴族がよくやる手だ。


「お父様 !ラースに毒を盛ったのですか!」凄まじい勢いで立ち上がり、父親を睨むミリィ…その迫力は僕に向けられたものではないが、身体の一部が縮こまる程の迫力だ。


「ミ…ミリィの手紙のとおりなら問題なく処理できる事だ。毒にしても、摂取して数時間経てば回復する様な弱いものだった。ミリィに伝えてなくて申し訳ないが…」

毒に関しては、確かに弱いものだが摂取すれば数時間はのたうち回る様な悪質なものだった。


娘を誑かしやがってという気持ちが透けて見えるようだ。


「謝る相手が違うでしょう!ラースに謝ってください。」


「あぁ…ラース君試す様な真似をして悪かった。」


愛娘に、激昂されて完全に気落ちしているザルフをこれ以上責めても仕方ないし、話も進まない。


「別に構いませんよ。ところでーー剣術の方は試さなくて良いのですか?」満面の笑みでそう答えた。


「あぁ、いいのかい?日を改めてでもいいのだが…」


「いえ、長旅で鈍ってしまいましたし…よい腹ごなしになると思います。」


ザルフがムッとした顔になる。先ほどまでの謙虚な雰囲気は霧散し、自分(ザルフ)の用意した兵など腹ごなしにしかならないと言われたからだ。

(舐めるなよ小僧…これからお前の相手をするのは我が家中で最強の者達だぞ…それを腹ごなしだと)



ザルフに連れられて屋敷内を歩く、どうやら屋内に訓練所があるらしい。


訓練所に着くとそこには3人の男がいた。いずれも鍛えられた身体をしており、戦士であることが伺える。


「ここにいる3人は、近衛騎士団の末席であったこともある精鋭だ。遠慮なく攻撃してくれて構わない。」


きっと、さっきの毒のように、死なない程度に痛い目を見せてやれと命令されているのだろう。それでは、つまらないし、意味がない。


「それでは、最初の一人から前に出ろ。」


だから、本気になるように…こう言ってやることにした。

「3人まとめてで構いませんよ。」


みるみるうちに、男達の顔が赤くなる。侮られたと思ったのであろう。

ザルフの合図とともに、最初の一人が飛びかかるように切りかかって来た。


明らかに大振りの男の斬撃を避け、踏み出した男の足を思い切り足で払う。その瞬間、男はバランスを失い地面に叩きつけられた。


地面に叩きつけられた男が立ち上がろうとする所に、木剣を止めず(・・)に振り下ろす。大きな音とともに男が意識を失い動かなくなった。


「まだ、やりますか?」

男達が怯えた表情をする。おそらく最初の男が一番強かったのだろう。


元々、最初の男に僕を痛めつけさせて終わらせる算段だったのだろう。


「いや、もういい…君の…いやラース殿の実力はよくわかった。」ザルフはやや青ざめて言った。現実離れした手紙の内容から、夢見る娘に現実をわからしてやろうと思ったのだが…目論見は見事に外れた。


それどころか、絶対に敵に回してはいけない存在に喧嘩を売ったことに気付いたのだ…(御伽噺どころの騒ぎではない。娘の言う通り、この若者は将来、勇者や英雄と呼ばれる存在だ…。)


「ラース殿…非礼の数々、おわび申し上げる。どうぞお許し願いたい。」


ザルフが急に、自分を同格者の様に扱って来たことに驚いたが…取り敢えず謝罪を受け入れる。

「気にしておりません。ザルフ叔父様…愛娘のミリィ様を思っての行いでしょう…」


「おお、ラース殿!この愚かな叔父を許してくれるのか。ありがたい…このザルフに出来ることがあれば何でも言ってほしい。必ずやそれに応えて見せよう。」


「それは、またの機会にお願いしましょう。今は、暖かく眠れる場所をご準備願いただきたいのですが」そう言うと最上級の客間に通されたのだった。


その日以降、貴族院学校に入校するまで、国賓並みの扱いを受けることになった。


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