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堕天のナイフ  作者: ゴマちゃんなしでは生きられない (ゴマなし)
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この世に回復魔法はないのか


「…あー、いてぇ」


図書館という静かな場所でなければ聞き取れなかったであろうこれ以上なく静かに、天を仰いで誠二は苦痛を訴えた。


「蚊にでも噛まれたか?」

「それだと痛いじゃなくて痒いだろ。ちげぇよ、切り傷だよ切り傷」


誠二は突然、右手をパーにして俺に差し出してきた。


「……。」


俺は右手でチョキを差し出すと、誠二は鼻で笑われる。


「ばっかちげぇよ。誰がジャンケンしようなんて言ったよ」


それならば、と思い、差し出された右手に握手してやる。


「握手でもねぇっ。ほら、傷だよ。ここ、見えるか? 人差し指と中指の付け根の間に切り傷あんだろ?」


誠二に見せてもらうと、なるほど、確かに傷が見える。血は出ていないが薄皮が剥がれて肉が見えている。


「…えらく治りづらいとこに傷ができたな」

「だっろ? これがさ、割と不便なんだよ。以外と当たるところでさ、さっきみたいにパーにすると傷が開いて痛えぇ。指の付け根だから指を動かすと痛えぇ。風呂に入って頭洗うときも髪に当たって沁みるしな」

「絆創膏は?」

「微妙な位置過ぎて貼れない、剥がれちまう」

「……ふむ」

「あー、この世界にはホイミ的な回復魔法はないのか…」

「僕直伝のホイミならあるよっ!」


対面の席で白雪と勉強会をしていた桐谷が自信満々に言ってくる。ちなみにノートに書かれた数式の山から察するに、数学を勉強していたようだ。


「MPいくつ消費するんだよ?」

「僕は消費しないけど誠二のMPを100円消費しないと使えないよ」

「金とんのかいっ!」


随分と現金なホイミだった。


「冗談冗談。ホイミ、お安くしとくよ?」

「…で、その直伝のホイミってなんだよ?」

「ああ、かけてあげようか?」

「頼む」

「オッケー」


軽い調子でやり取りをする誠二と桐谷の二人。誠二よ、ホイミの詳細を詳しく聞かなくていいのか。取り返しのつかないことになるかもしれないぞ。


「……ちなみに白雪、桐谷式のホイミの仕方とやらを知ってるか?」


俺は対面に座っていた白雪の隣に移動して小声で尋ねる。恐らく桐谷の咄嗟の悪ノリだろうから特に期待はしていなかったが、


「知ってるよ♪」


思わぬ所に情報が転がっていた。


「…本当か白雪? 何なんだ、桐谷式ホイミとやらは」

「うーん、見た方が早いかも」

「見るのは構わんが、これはちゃんと誠二の命は保障されるのか?」

「10%の確率でお陀仏だと思うよ」

「誠二の両親へ遺書を書いておくか…」


俺は幸先不安になってきたので誠二の代わりに簡易の遺書を書く事にした。


「……準備はいいかい青木?」

「あん? なんの準備だよ」

「ホイミをかけていいか、って事にゃー」

「当たり前だ、早くしてくれ。ところでホイミって、」


具体的に何をするんだ?と、誠二が聞こうとした時だった、


「てい。」


可愛らしい声とは裏腹に、桐谷は問答無用で誠二の右手の切り傷によって中途半端にくっ付いていた薄皮を剥がした。


「ぐっッ!!??あああああああああ!?!!?」


誠二、痛みにより発狂。腕が千切れたと言わんばかりに苦痛を叫ぶ。


「いてええええ血が、ひりひり出てるうううううッ!?!?」

「青木、いまだっ! 叫んで、ホイミって!」

「俺が叫ぶんかあああああああいいぃぃぃぃぃぃッ!!??」

「早くっ!! もっと熱くなれよぉぉ青木ぃぃ!!」

「ホイミホイミホイミホイミベホイミベホマベホマズンんんんん!!!」

「いいぞ青木、君ならやれるよ、まだやれるっ、頑張れ!!」

「出たっ、勇気ちゃん直伝のホイミ&熱血テニスプレイヤーのモノマネが炸裂っ!!」



「えー…、お母さんへ。お身体は元気ですか? 俺は、ダメです。切り傷と、ホイミが、痛いです、っと。」



この後、俺が簡易の遺書を書き終えたと同時に、一通りの発狂を終えた誠二が出した結論は、自然治癒が一番、との事だった。


誠二君と同じ所に傷を負いました。痛いです。どれくらい痛いかって言うと、とある友人Aに傷を見せた際に、とある友人Bに、「友人Aとゴマなしは並ぶと薔薇が咲くぐらい絵になるな」って言われたぐらい心が痛いです。今日も絆創膏を張っときます

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