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堕天のナイフ  作者: ゴマちゃんなしでは生きられない (ゴマなし)
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★しあわせと出会う乙女4


「…以上が現状報告の全てになります、柱間警部」


作戦会議室、というのはいかがなものかと思うほど一台のパトカーの中という質素な場所で、遅れてきた俺のために現状確認が行われてきた。おおよそは白鳥巡査の報告通りだ。


「…とりあえずまずは向こうの言い分を聞くしかあるまい。接触を開始するぞ。通信の準備と録音を頼む」

「はっ」


テキパキとした動作で通信を取るための準備を開始する。そうして渡されたのは、一台のスマートフォンだ。録音するための特殊な工作をされており、また今回は必要はないが電波ジャックや音源漏れを防ぐための工作もされている。


「…始めるぞ」


スマートフォンを操作してメモの記されている番号を入力し、通信開始。

3回ほどの通知音の後、すぐに電話の主が耳に響く。


『あーい、もしもしぃ』


気の抜けた男性の声だった。報告の通りなら、関西人の訛りの効いた男のはず。


「私は柱間、という者だ。電話番号をもらって今電話している」

『おー、つーことはジブン、警察サツのアタマかいな??』

「一応、そうだが」


聞いてる限りは意外と落ち着いている感じがする。もっと狂気に満ちて興奮していると思っていたので、まともに話が出来ることに少しだけ安心する。


『頭のよくできたアタマのあんさんなら、ワイが番号を渡したワケ、わかるやろ?』

「要求を聞け、ということだろうか? 内容によるが一応聞こうか」

『話の分かるサツは好きやで』


向こうを出来る限り刺激してはならない。だからなるべくこちらが立場的に下になって気分を害さないようにする。


『とりあえず飲み物、食料やな。なんでもいいで、大量に持ってきいや。後、カネや。300万程用意してや。そんでもって、ヘリが欲しいかな』

「食料、飲料水はすぐに用意しよう。ただ、お金とヘリに関しては少々時間を貰わなければいけない」

『具体的な時間は?』

「最低でも3時間は」

『それまでに、3人は死ぬで』

「……。」


この男はすでに3人殺している。もはや人を殺す事に躊躇はしないだろう。確実に被害が出る。


『一時間や、それ以上は待てん。食料は45分で準備しぃや。一時間過ぎたら、10分毎に人が死ぬで』

「…分かった、善処しよう。まずは食料と飲料水だが、どこに届ければいい?」

『銀行の建物の右側面に、今は鍵をかけてるけどちょっと広めの事務室に入る裏口がある。ジブンらから見て右や。左ちゃうで。左は電子機器ばっかの部屋やからな』

「…場所は理解したが、鍵がかかっているなら入れないのでは?」

『ワイが開けるわ。45分経ったら開ける。開けた後、中央に食料とかを置いて出て行け。でないと人質を撃つで。後、食料とかに余計な小細工しやがったら…』

「そんな無粋な真似はしない。心配なら他に毒味させるなりすれば良いだろう。…分かった」

『ヘリとカネについては…また連絡するわ。準備だけしぃや』

「分かった。」

『…遅れんなよ』


ブチッ、と更新が切れた音と、ツー、ツー、という通知音だけが残る。


「……。」


参ったな、と内心思った。食料や飲料水は特に苦もないが、ヘリやお金を一時間で集めるには骨が折れる。


(…だが、)


時間がない。それが一番の問題だ。悩んでる時間も、考えている時間もない。つまり、今あるピースで解決に導かなければならない。それが、責任を背負うという事なのだから。


(コレで…行くか…)


高速で回転した頭がある結論を見出す。一時間で、ケリをつけるしかない。


「いかがなさいますか、警部」


部下が俺の指示を待っている。俺は自分の判断を信じる事にした。


「…多少強引だが策はある。ついてきてくれるか?」

「なんなりと」

「私たちは警部の判断を信じます」

「ありがとう」


部下達の言葉に勇気付けられる。なら、もう悩む事はない。


「…現状把握は聞いてた通りだ。時間がない。なので、人数を分散する。まずは食料と飲料水を手配する者。そして、ヘリと出来る限りのお金を手配するもの、そして、」


俺は言うべきなのか悩んだが、これしかないと思う。



「突撃準備を行う者だ」



俺の言葉に一瞬息を呑むのが見えた。余程強引な策だと思ったのだろう。自分でもそう思う。


「一応、策はある。先ほどの話だと、接触場所は右側面の事務室になっている。そこに裏口があるのだが、先ほど奴はこうも言っていた。『左側面は電子機器ばっかの部屋』だと」


心当たりがあったのだろう、部下も頷いている。


「事務室からその部屋までは反対方向にある。その分我々の進入には気が付きにくいはずだ。そこから銀行に進入する。」


銀行の見取り図を開いて指でなぞっていく。


「幸い彼は一人だ。私が犯人と接触している間は、こちらに意識が向いているはずだ。上手くいけば、油断して食料を持って戻ってきたところを無力化出来るかもしれない」

「ですが、鍵はどうしますか? 恐らく鍵がかけられていると考えますが…」

「誰かそれを今確認してきてくれ」

「自分が行きます!」


部下の一人は機敏な動きで確認しに行く。それを見送り、


「高確率で鍵がかかっているだろう。そこはピッキングで外す。奴は中央広場に常時いるはずだ。ピッキングしているとは流石に気づくまい」


なるほど、と納得の表情で数人は頷く。けれど、はたしてそれで大丈夫なのかと心配する人もいた。それでも否定的意見はしない。何故なら時間がない。これ以上命を失わないようにするためには、多少強引にでも決行しなければならないのだから。


「突撃班は2班に分ける。始めは少人数で突撃。残りは人質の確保を優先に突撃する。いいな?」


自分の言葉に神妙に頷く。覚悟は出来たようだ。


「……時間がない」


もう何度呟いたかどうか分からない。けれど、止まっている時間もない。そこへ、


「鍵、空いてます!!」


先ほど確認しに行った部下が戻ってきて開口一番にそう言った。


「左の部屋か?」

「間違いありません。念のため右側も確認しましたが、こちらは鍵がかかっていました」

「…好都合だ」


本当は右側もピッキングで開けておいて、あらかじめ部下を進入させておいて奇襲する手段も考えていた。が、両側を開けるのは気付かれる可能性を考慮してもリスキーなので最低限片方だけ、だったのだが、そのリスクを犯さないで良いのはこれ以上ない展開だ。


「よし、各自、やるべき事をしろっ!! 決行は40分後、急げっ!!」

「「はっ!!」」


この作戦に、失敗は許されない。

クズキャラになりきっている時、凄く楽しいんです。ほら、やっぱり人間の本性が出るというか、腹黒さが出るというか…


あ、違いますよ。僕は腹黒くないですよ!? お腹周りちょっと出てきましたけど黒くないですからね!?!?

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