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堕天のナイフ  作者: ゴマちゃんなしでは生きられない (ゴマなし)
23/30

★★しあわせと出会う乙女2


「「キャアアアァァッッ!!」」


銀行内にいた客や係員が一斉に悲鳴を上げた。二人目の犠牲者は銀行員。無惨にも散弾の直撃を受けて頭が文字通り吹き飛んだ。皮膚の一部や眼球が爆発したかのように飛び散り、壁と床にべっとりと赤が付着する。

顔の原型は止めておらず、見る限りでは即死。


それを見てようやく現実味を帯びてきたのだ。今起きている事は夢でも茶番でもなく、ただの殺人である事を……。


「……ギャアギャアうっさいねんコロスぞぉォ!!!」


さらに天井にむけて発泡。威嚇射撃であろうこの轟音は、死の可能性を突きつけられ、恐怖に支配された人々にとってはこれ以上の脅しはない。時間が止まったかのように静寂が訪れる。悲鳴を必死に抑える嗚咽だけは微かに聞こえる。

誰一人として、その場から影を縫い付けられたかの様に動く事さえ出来なかった。


「そのまんま動くんちゃうぞ。動いたら撃つで」


男は見渡すようにその場にいた全員を見て告げた。一番近くにいる桐谷には逃げたい気持ちは山々あるが脚が震えて言うことを聞いてくれないのだ。


「……で、はよ金入れぇや、なぁ」


男が睨むようにして銀行員の一人を見ると、その銀行員は顔を真っ青にして後ずさった。


「え……えっと…ッ…あ…あ…」

「なんや、ちゃんと喋ってや。ワイな、耳悪いんや。毎日パチ屋行ってたせいかキンキンすんねん。……で、なんて??」

「…………ッッ……ッ!!」


睨まれる目に狂気を感じて怯えた銀行員は震える全身を懸命に動かして放り投げたバックを拾った。

その時に誰かに助けるように視線を泳がせたが、


「…………」


誰一人として目を合わせようとしなかった。まるで真実から目を背けるように。後ろめたい感情を恐怖という一つの感情で躊躇なく受け入れた瞬間と言えた。


「……ッ……うっ……」


あまりの恐怖で泣き出しながらも、そのカバンにありったけのお金を入れようとしたその時だった………




「…て……手をッ……手を上げろッ!! 動くなッッ」




入り口から咆哮に近い声がした。視線をそちらに向けると、一人の男性警察官が震えながらも拳銃を構えていた。恐らくたまたま近くのパトロールの最中に騒ぎを聞きつけて急いで駆けつけたのだろうか。

その姿を見た男は冷静に猟銃を担いで彼を睨むだけ。静寂を破壊したのはまるで救世主が来たと言わんばかりに、警察官を確認した人々は縋るように彼に叫ぶ。


「あぁアアアァッッ、助けてッ、早くアイツをコロシテエェぇッッ!!」

「そうたッッ、もう人殺してんだってっッ!! さっさと撃ってくれよおまわりさんッッ」


騒ぎ立てる状況に慌てたのは警察官だった。この状況で殺人鬼を刺激するような事は避けるべきなのだが、恐怖による心の乱れか、恐怖から逃れたいという気持ちが先行している。警察官はあくまでも姿勢は保ったまま、



「あ……お……落ち着いてくださいッ!! 大丈夫ですからッ、皆様は落ち着いてくだ、」




場を落ち着かせようとした、が、警察官から血飛沫ちしぶきが弾けた。

耳を塞ぎたくなる程の轟音。散弾は警察官の胸に直撃し、それだけでは止まらず、近くに陣取っていたかなり年配の老婆の肩にも弾が食い込んだ。


「あ……アッアァああッッ、ッッいひぃぃいいイイイッッッ!!??」


肩に食い込んだ弾の激痛が老婆を襲い、床に転げて悲鳴を上げる。

直撃を受けた警察官は悲鳴をあげる暇もなく、その場に前のめりに倒れこみ、目を見開いたまま絶命した。散弾が眼球を潰したのか、目から濁った白色と赤が混じった涙を流す。


そんな目と、桐谷は、目が、合ってしま、った、




「お…っ…オェェォォ…ッッ……ォ!!」




先ほどから無理やり我慢していた嘔吐がついに耐えきれなくなって、吐瀉物としゃぶつが吐き出された。

耐えきれる筈がない。もうすでに三人もの人が殺され、銀行内が異臭に包まれたこの状況で気持ち悪くならない筈がない。


嘔吐をする桐谷を特に気にすることなく、男は鼻で笑うように言葉を吐き捨てる。


「ほんま警察サツってアホばっかやな。なーんでこうすぐ説得しようとすんねやろうな。…従うわけないやん。こっちチャカ持ってんやで? 撃ち合った方が速いに決まってるやろけ」


つまらなそうな顔をしてすでに息をしていない警察官に近づいては、唾を吐き捨てた。

そのまま手に持っている拳銃を奪おうと考えたが、よほど強く握りしめていたのか、指が絡まって取れない。もどかしさに舌打ちを一度して、



「……貸せや、必要ないやろがもう」



腰に装備していた鋭利なナイフを手に取り、警察官の指を切り落とした。

グチャ、グチャ、という生々しく抉られている音が耳に響く。その音が頭に残る。頭がおかしくなりそうだ。


拳銃を剥ぎ取った男は満足そうに立ち上がり、血だらけの切り落とした指を手に取って近くにいた若い女性をチラリと見た。先ほど「早く殺して」と騒ぎ立てた一人である。女性は石化したかのように膠着した。殺される、女性はそう思っていただろう。しかし、男はたった一言、こう言っただけだった。




「ほれ、大好きなおまわりさんの指やで、大事にしぃや」




そして『それ』を無造作に投げつけた。。



「ヒィィィイイイッッ!?!?」


受け取った女性はあまりの狂気さに悲鳴を上げざるを得なかった。自分の目に切り離された指が映る。瞳孔が、それを、受け入れた。途端、座り込んでいた女性は、自分の膝に乗った指は、まるで持ち主を探しているかのように自分にしがみついてるような錯覚に陥って、必死にその指を振り払った。投げ捨てられ、もう膝には乗っていないのに奇声と奇行に走る彼女には、もはや自分の妄想による幻覚しか見えていなかった。

もはや誰一人として、冷静な判断はもちろん出来ず、助けを呼ぶ声なんてもっての他、悲鳴以外上げられる状況ではなかった……。。



……だが、狂気を払うかのように遠くからサイレンの音が聞こえた。それは徐々に、近づいてきている。男はその音を確認すると目に見えて不機嫌な顔を露わにした。



「…あー、チンタラやってる場合ちゃうかったわ。……おい」


男は猟銃を突きつけて近くの女性銀行員に近づく。その女性はかなり若く、涙で顔が崩れていなければ美人であっただろうという程顔つきが整っていた。恐怖で涙を流しながらも仕事を全うしようという気持ちがあるのか、情けない声だけはあげまいと堪えているようだった。

そんな姿勢が伝わったのか、男はニヤリと笑った。


「…あんさん度胸あるで。気に入った、あんさんは殺さへんからお願い聞いてや」


女性銀行員は恐怖で震えてうまく言葉が出ないのか、何度も首を縦に振ることで了承の意思を示す。そんな仕草に気分を良くしたのか、男はニコニコした。



「ええ子や。そんでな、頼みというのは……」



男は心底楽しそうに、女性銀行員に語った……。。


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