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堕天のナイフ  作者: ゴマちゃんなしでは生きられない (ゴマなし)
20/30

★猫探偵ホームズ3


「……見つけた。あの猫で間違いないね」


公園に着いてから数十分後、隣接する民家を片っ端に回り、猫が好みそうな狭い通路や空間を隈なく探した結果、民家と民家の間の薄暗い路地で発見した。

人が入るには十分な広さがなく、光を照らさなければ見えないほど太陽の光が入らない場所だった。

桐谷が持っていたペンライトで照らさなければ見つからなかったであろう。


「入れないとなると何とかしておびき寄せるしかないか」

「ここは私に任せてくれ。策がある」

「…任せよう」


俺はお手並みを拝見させてもらおうと考え、桐谷からほんの少し離れる。警戒心が強いのなら出来る限り人数はいない方がいい。

俺は桐谷が路地に座り込むのを確認し、桐谷が失敗した際にいつでも動けるように備える事にする。


「……ジー」


ジッとペンライトで照らした路地に居座る猫を見つめる桐谷。


「……。」


それを無言で見守る。


「ジー」

「……」

「ジーっ」

「……」

「ジーッ」

「……なぁ、」


遂に堪らなくなって後ろから声をかけようとした、が、


「…………ニャー♪」


鳴いた。猫が、ではない。桐谷が鳴いた。可愛らしい声で。


「ニャニャニャッ」

「……ニャー?」

「ニャフ、ニャフニャフ」

「ニャニャ!? ニーッ」

「……。」


何ともシュールな光景である。確かに普段から口癖のようにニャーニャー言ってる桐谷だが、まさか猫との対話を試みるとは…。

恐らく猫の気持ちになりきっているのかもしれないが、はたから見たらニャーニャー言ってるだけだ。対話など出来るはずもない。


「……黒崎」


急に素に戻った桐谷が俺に話しかけてきた。対話は無駄だったらしい。俺は少し考えて答える。


「……でてこないなら餌でおびき寄せるか? 数日迷子なら腹減ってるだろう」

「いや、そういうわけじゃないんだ。…えっとね、まぁなんにせよ、割と高級なキャットフードが必要になるみたいだ」

「そうなのか。」

「うん、そうでないとここから出てこないんだって」

「へぇ、なるほどな。…………ん?」


『ここから出てこないんだって』……だと?


「……桐谷、『そうでないとここから出ない』、と言ったのは誰だ?」

「私だけど?」

「それは今お前が言っただけだろうが。じゃなくて、」

「ああ、そういうことか。察しの通り、猫が言ったんだ。」

「…なぬ?」

「山田さんが呼んでる、と伝えたんだがどうやら置き去りにされた事を拗ねてるみたいだ。だから高級なキャットフード買ってこい、だってさ」

「お前まさか、本当に猫と対話してたのか!?」

「私、ニャーニャー言ってたでしょ?」

「いや、普通ニャーニャー言うだけで対話できるわけないだろッ、ギャグと思ってたわっッ!」


驚いた。まさか本当に対話出来ていたとは。俺から見れば猫とイタタな事をしているようにしか見えなかったのに。そうなるとさっきのニャーニャー言ってたやり取りが気になる…。


「桐谷、さっきの猫語のやり取りを日本語に翻訳して再現してくれ」

「…必要かい、それ?」

「俺が気になるんだ、頼む」


「……。


『君は山田さん家の猫かい?』

『ああん!? どこの島の奴だテメェ』

『山田さんが心配してる、私と一緒に帰ろう』

『うるせぇ、そんな日本人で一番多そうな苗字のモブキャラのご主人なんざ知るかっ、美味いキャットフード買ってこいやぁああ!!』


……って感じだ」


「…この猫想像以上のチンピラだな」


その後、近くのペットショップで買ってきた高級キャットフードを食わせた結果、満足したチンピラ猫は大人しくキャリーバッグに収まるのだった。

僕はいつか、猫語や犬語が出来ると信じている。

動物が何言ってるか気になる人は結構いるはず。そのための研究や実験が日々行われている。人間はいつか実現するだろう。必ず。


だから僕らは準備しておかなければならない。自分が愛情を注いできた動物に罵倒を浴びせられても平気なメンタル力を。

だって絶対、不満あるもの。僕が猫なら不満めっちゃある。例えば、


「なんで牧場の朝ヨーグルト食えないんだよっ、カルピス飲ませてよっ、カルピスソーダは邪道だって言ってるだろっ!!」


みたいな。。

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