表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕天のナイフ  作者: ゴマちゃんなしでは生きられない (ゴマなし)
2/30

10円の行方

「今朝10円を拾ったんだけど……これ、どうすればいいんだろうね」


 ギザ10と呼ばれるようなシロモノのようにも見えない、普通の10円玉を手にした桐谷勇気は小首を傾げて頭に?マークを浮かべていた。それを見た誠二は心底下らなそうに鼻で笑った。


「10円? 何だよ、お前財布持ってないのかよ? 小銭入れぐらい女子学生の持ち物だろ?」

「小銭入れは女子学生関係ない男女共通の持ち物だよ? それにさすがの僕でも小銭入れくらいは持っているさ」

「なんだよ持ってんのかよ。つまりあれか、『10円拾ったぜ、羨ましいだろぉ?』……っていう俺らへのアピールって事かよ?」

「……そうじゃなくてね、これは拾ったお金なんだよ。こういう時は交番に届けるのが正解って言われるじゃない? でもさ、10円だよ? ローカルルールだと、届けられると手続きとか面倒だから、お巡りさんに『その場合はねこばばしてもいい』って暗黙のルールがあるみたいじゃないか。だからどうしようか困っているのさ」


 確かに些細な額であるならばそのまま懐に入れても黙認されるという話は存在する。現に俺が行った事のある交番では、『札でなければ問題ない』という大雑把なルールがあったものだった。


「んじゃあ懐にそっと入れとけよ、日頃不幸のお前への神様からの些細なお返しとしてさ」

「青木、何気に酷いこと言ったよね、僕に」

「お返し云々はさておき、いいんじゃないか、10円程度なら」

「黒崎もそう思うかい? なら――――」

「募金!!!!!」


 さっきまで購買でコーヒーとパンを買いに行っていた白雪は、両手を万歳させて我こそはと言わんばかりに声をあげた。


「勃起?」

「誠二、アウトー。――――そぉいッ!!!」


 ズガンッ!!!っという鈍い音が響き渡る。


「いってええええええ!!! 何でタイキックやねん!? 可笑しいなううううう!?」

「落ち着けよ誠二、語尾が変だ。あと耳もな」

「募金しよ、募金♪」


 幸い女子連中には聞こえなかったようだ。愛花が笑顔で話を続ける。


「塵も積もればマウンテン、10円でも募金すれば、恵まれない子達を救うことが出来るんだよ?」


 後半の部分はともかく、白雪の純粋無垢な笑顔の渾身のボケに、男子二人は固まった。


(…………おい誠二、珍しく白雪がボケたぞ、笑ってやれよ)

(え¨、あれがボケなのかよ……!? マウンテンがかわいそうだろ……!! しかも面白くねぇ、すんごく面白くねぇ!! むしろこんなボケに誰が笑うんだって疑うレべ)


「にゃははは、マウンテンって!! 愛花は面白いボケをするにゃー、にゃはは!!」


 そんなことはなかった。マウンテン、恐るべし。


「ふふふ、ありがとう勇気ちゃん。これからは私、芸人として生きるよっ!!」


 どこに行く気だ白雪。その道は無理だ。諦めてくれ。


「……ところで、募金の話はどこに行った?」

「あ、そうだね。……というわけで、その拾った十円は世界中の人を救うために、募金をするべきだと思うの!!」


 全国で行われているボランティア活動の一環であるこの募金活動。確かに世界中の人々から少しずつお金を集めて、その集めたお金でワクチンや生活必需品を得る、というのは合理的かつ間接的に世界にお金を分配する手段であると言える。


「でも募金ってどうやってするんだい? ほら、学校とか駅前とかによくその集団は見かけるし、店の中でとかでも見かけるけど、いざ探すってなると手間じゃない?」

「言えてるよな。財布ん中に50円しか入ってなくてマジで金欠!!って時ほどよく見かけるんだよな俺」

「じゃあ青木が金欠になれば簡単に見つかるんじゃない? 青木、50万よこせ」

「ナチュラルにとんでもねぇ額カツアゲしてんじゃねぇよ!!」

「ネットとかで応募するのはどうかな? 結構調べればあると思うんだけど…」

「……ああいうのは割と大きな額を支援する人用だ。振り込み方法がクレジットカードやコンビニ振り込みになるから、それこそ札を出す人用だろう」

「いるよなぁ、ポンッと札で入れる人。俺も前に駅前で募金してた奴らの箱に、諭吉を入れてる人がいて、そんな諭吉余ってるなら俺にくれって心底思ったな……」

「でもさ……あんまりこういう事は疑っちゃいけないと思うんだけど、本当にその募金で集めたお金は世界中の人々の役に立ってるのかな? ほら、集めた額をそのまま私情に、とか……。募金詐欺っていうのも事実としてはあるんだし」

「うーん、ちゃんとした団体がやっている募金活動なら、皆からのお金はちゃんと世界中に届けられましたよー的な報告はあるんだけどなぁ……」

「でも愛花、それって情報操作かもよ? 僕達が実際見たわけではないから、その事はいくらでもねつ造できるわけだし……」

「皆に気づかれてねぇだけで、意外と詐欺の手口だったりするんじゃねぇか?」

「そうなのかなぁ……。だとしたら、良心でお金を分けてあげてる人達が可愛そうだよ……」

「……ふむ」


 活動と言えば聞こえはいいが、いわばお金を集めるための物乞い行為とも言える。ゆえにそこに詐欺が絡むというのは必然であるとはいえ、やはり全ての団体が世界のために、というわけにはいかないし、私情で行っている組織や団体が多数いるだろう。

 現に自分が知っている『組織』でも、募金活動と言う名目上、世界からとあるデータを買収するための資金集めを行っていた。信頼できる組織であるなら募金したい、だけどほとんどは実体が見えない組織。ならば――――


「……なら、学園に募金しよう」

「は? 学園? 学園にそんな募金活動とかあったっけ?」

「知らん。直接学園長にでも渡せばいい」

「でも黒崎、それ、本当に募金したことになるのかい?」

「見知らぬ団体に募金する事に悩むくらいなら、知っている学園に渡したほうがまだいい。それに、学園が募金活動をしていないなら、私情に使おうが何に使おうが『たかが十円』になる。精々、うにゃい棒を買う程度で済む」

「……なるほど。一理ある」

「そうだね、それが良いよ!! もしかしたらその十円が、私達の学園生活をもっといいものにしてくれるかもしれないもんね!!」

「ま、ねこばばされて気分悪くするよかはマシだよな」

「……決まりだな。じゃあ勇気、それを学園長に届けてやってくれ」

「イエッサー!!」


 この時全員、至極当たり前と言うか、至極単純な事に気づいていなかった。募金活動をする組織にとっては、10円と言うのは『されど十円』である。しかし、募金活動をしておらず、特にお金に困っていようがいまいが、普通の人にとっては『たかが十円』である。

 『たかが十円』であるという事は、つまり、



「10円? 募金? それギザ十なの? 違うなら要らないわよ。うにゃい棒でも買いなさいな」



 と、学園長に言われてしまった。『たかが十円』では世渡りは厳しそうだ、その時の俺達は10円の苦労を身に染みて分かち合ったのだった……――――。




いざお金を拾うと困ります。特に財布とか。

ちなみに10円拾った時の僕はそっと懐に入れます。

財布はさすがに届けるか見て見ぬふりをして別の人に命運を託します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ