ロストメモリー「4」
名前:琴崎るな(コトザキルナ)
年齢:14歳
誕生日:2月9日
武器:短剣、弓矢
好きな人:朝霧幸哉
パートナー:シュウ
記憶収集率:47%
剣と剣がぶつかり合い火花が散る。
金属音と共に剣撃は一層激しくなっていた。
クリスタルで作られたような輝く細剣を操り連撃を繰り返す。
しかし、そのすべての攻撃は意図も容易く防がれる。
玲奈は焦りと痛みを押しこらえ、標的である少年と激闘を繰り広げていた。
玲奈以外の味方は深傷をおい、数名は完全消滅した。
一瞬にして起きた出来事を整理することもできず、現在の戦闘に集中する。
少年は力強い一撃を放ち、玲奈は瞬時に細剣で防ぐ。衝撃を最小限に押さえ、反撃に移った刹那、玲奈は膝から崩れ落ち手を地面につけた。
戦闘から約20分。
いつもなら、この程度で限界がくるはずはない。
確かに、今までの倍の集中力で戦闘を行っていた。しかし、それでも限界がくるのが早すぎる。
玲奈は、動かなくなった身体を必死に動かそうとするが、ピクリとも反応しない。
前方にたたずむ黒銀の髪の少年を睨み、細剣を精一杯強く握った。
「お前じゃ俺には勝てない」
少年はニヤリと笑みを玲奈に見せた。
その表情に怒りを覚え、動かないはずの手に少し力が入った。
渾身の一撃を細剣に込め、少年に突き刺す。
キンッ!!
虚しくも弾かれた細剣は金属音と共に少し離れた位置の地面に突き刺さる。
完全に負けた。
歯を食い縛り、玲奈はただ少年を睨むことしかできなかった。
「ゲームオーバーだ」
血に染まったように紅く輝く剣を振り上げ、玲奈は覚悟を決める。
剣は勢いよく降り下ろされ、玲奈の身体を切り裂いた。
◇―過去
町を徘徊していた。
《死後の世界》に来た幸哉はそれ以外にすることがなかった。
記憶を取り戻す。その目的は十分に理解した。
しかし、クリーチャーの存在について、理解不足だった。
まず、クリーチャーはどこにいるのか、倒すための武器はどこで手に入れるのか、まったくわからない。
このまま、クリーチャーや天使に会えば危ない。そう思いながらも幸哉は町を徘徊していた。
「お前何してんだ!?」
少し離れた位置。影で姿がよく見えないが男の声が聞こえた。
幸哉は目を細め、じっと見る。
男は影から月明かりが届く位置にくると幸哉は一歩後ろに下がった。
目が隠れそうな長い前髪、右耳についた綺麗なピアス。
重力に逆らってたつ髪の色は暗い青色。
肩からかけるライフルは、偽物には見えない。
幸哉と歳の同じくらいの少年が武器を持ち所々服に血がついている。
頬に流れた汗を感じ、幸哉はゆっくりと袖で汗をふく。
「お前―」
「話は後だ!ここから離れるぞ!!!!」
幸哉の腕をを掴み、少年は走り出した。
あまりにも急な行動に、幸哉は腕を払った。
「待てよ!お前誰だ!?それに何を急いで―」
「避けろ!!!!」
少年は幸哉を蹴り飛ばし、二人は互いに反発するように離れ倒れた。
幸哉は倒れた体を起こし、少年に向かって叫ぼうとした。
しかし、声を出す前に幸哉はもといた位置に視線を送り驚愕する。
地面が抉られたように切り裂かれ斬撃のあとが残っていた。
現実味のない現象に幸哉は言葉を失った。
「そこ、動くなよ!」
ライフルを投げ捨て、少年は腰につけていた短剣を取り出した。
そのまま、建物の壁を上るように駆け抜け幸哉はそこで初めて月に重なる人影に気づいた。
広げられた白い翼。
月明かりに照らされ、腰まである黒銀の髪が輝いて見える。
美少女。
天使。
幸哉の頭の中で勝手に繋がった。
彼女が天使。
何体もいるクリーチャーよりも先に天使に出会うとは思わなかった。
幸哉が考え事をしている内に短剣を持った少年が天使と激突した。
体を三回転させ、放った斬撃を天使は見えない壁で防ぎ、少年をそのまま吹き飛ばした。
勢いよく落下した少年は地面に打ち付けられ、必死に上体を起こそうとする。
幸哉は思わず足を動かし、少年のもとに駆け寄った。
「大丈夫か?」
見ただけで、大丈夫ではないとは感じながらも幸哉はそう言う。
少年は笑いながら、「ダメかも」と一言そう言った。
スタッ
背後で足が地面につく音がした。
幸哉はゆっくりと背後に顔を向けて息を呑む。
見た目をただの可愛い少女。
先ほど見えていた羽は消えている。
しかし、代わりに先ほど少年が持っていた短剣を掴み幸哉に向けて構えてる。
表情を変えず、じっと幸哉と目を合わせ天使は口を開く。
「そこを退いて」
一言そう言った。
「そんな物騒なもんもって、何する気だよ?」
自分でも何をしてるのかわからない。
逃げては行けない。
そう思いながら、幸哉は天使と会話を始めようとした。
「あなたには関係ないわ」
「関係あるさ。こいつは俺の友達だ」
「嘘」
「何でそう思う?」
「……何となく」
「カンかよ!?」
思わぬ返しに幸哉はついツッコミを入れてしまった。
それにビクリと肩を動かした天使も幸哉のツッコミには予想外だったらしい。
「と、とにかく退いて」
「……断る」
天使は幸哉を睨みつけ短剣の刃を幸哉の首もとへともっていく。
冷ややかな刃先が首もとにあたる。
「死にたいの?」
「……」
黙り込んだまま幸哉はこの状況を打破することができないかを考える。
武器はない。
天使を倒すことは不可能。
この場で選択できる行動はほとんどない。
唯一、可能なのは交渉しかない。
拳を強く握り、幸哉は口を開いた。
「お前に聞きたいことがある」
天使は首を傾げた。
「お前は天使なのか?」
「……あなたには私がどう見える?」
意味有りげに天使は質問に質問で返した。
「俺には、天使に見えた。羽が生えて普通じゃない力をもってる」
「あなたはこの世界に来たばかり?」
幸哉は頷いた。
「だったら一つ忠告して上げる。天使と馴れ合うのはやめたほうがいい」
「……なん―」
会話はここで終わった。
幸哉は胸に短剣を突き刺され、膝を落とした。
心臓を刺されるのはこれで二回目。
尋常じゃない痛みが幸哉を再び襲う。
たぶん、《死後の世界》では日常的なのかも知れない。
そう思うと幸哉は無意識に苦笑いした。
最後の力で幸哉がとった行動は顔を上げ、天使の顔を見ることだった。
一筋の光。
幸哉は目を大きく見開いていた。
涙。
泣いている。
なぜ……
意識が遠退きながら、幸哉はその事を考えた。
結局、理由はわからないまま意思を失った。
◇―現在
玲奈がやられたと聞いたのはシュウと戦った次の日だった。
幸哉は朝早く、学校の寮からでて病院に向かった。
桜木学園から10分歩いた場所に病院がある。
ロストプレイヤーは時間が経てば自然に傷は治るが、痛みは残る。
そのため、戦闘の後は大抵学校の寮で休む。
ちなみにロストプレイヤーはほぼ全員がこの世界に来たときに一番近い学校の寮を住む場所にしている。
幸哉は不可解な疑問をもちながら玲奈がいる病院に向かった。
三階の個室。
そこに玲奈はいた。
「あっ、幸哉……」
玲奈はベッドの上で普通に本を読んでた。
「全然無傷じゃん!!!!」
「うるさい!傷に響くでしょ?」
本をベッドに置くと、玲奈は着ている服の裾をめくり綺麗な肌が露になる。
しかし、幸哉はそこで言葉を失った。
綺麗な肌についた痛々しい傷跡。
残るはずのない傷跡が残っていた。
「……どうして」
「天使にやられたから……かな?」
「天使?」
「昨日、幸哉がいない間に桜木学園の食堂に紅い目をした少年が来たの。誰もが瞬時に天使だと理解した。特徴的な紅い剣も持っていたし」
「待てよ……桜木学園は絶対に安全な場所だったんじゃないのか?」
桜木学園は、クリーチャーや天使が今までに絶対に攻め込んでこなかった。
かなり前に天使と戦闘中だったプレイヤーが桜木学園に逃げ込んだところ天使は襲ってこなくなり、そのまま天使はどこかにいったと聞いた。
それを聞いた、ほとんどの人が天使やクリーチャーは桜木学園に近づけない理由があると認識した。
「でも、よくよく考えると天使が100%桜木学園に入れないなんて保証はなかった。今まではただ見逃してくれていただけかもしれない……私たちも油断していた」
玲奈がそう言うと幸哉は近くにあった椅子をとり、玲奈のちかくに座った。
「まぁ、玲奈が無事で良かったよ」
「……運が良かったのかもね」
「傷は治るのか?」
「少しずつだけど、治ってる。今回はイレギュラーが多すぎて困るわ」
「そうだな……」
玲奈の苦笑いに幸哉も苦笑いで返した。
「……聞かないの?」
少し沈黙したあと、玲奈はそう言った。
幸哉はその言葉で顔をうつ向かせた。
「お前だって、何人死んだかなんて聞かれたくないだろ」
天使の強襲。
確実に何人かは完全消滅をしたはず。
玲奈はその現場にいた。
死んだ人の顔も見たはずだ。
だからこそ、聞いてはいけない。自分と同じ人間が何人死んだかを玲奈には聞いてはいけない。
玲奈は人望もあつく信頼されている。頼りにする人も多くいる。
玲奈は頼ってくれる人たちを守るためにも《死後の世界》で力をつけていた。
しかし、結局守りきれなかった。
無理して笑う玲奈を見ながら幸哉は胸が少し痛かった。
気のいいことを言えない自分が情けなく感じた。
でも、一言でいい。
何かを言わなければいけない感じがした。
幸哉は玲奈の頭を撫で、口を開いた。
「玲奈は頑張ったよ……」
一言そう言うと、玲奈の瞳から大きな粒が頬に流れた。
少しの間、玲奈は泣いた。
涙を必死にこらえながら泣いた。
玲奈は落ち着きを取り戻すと咳払いをした。
「え~と、まぁ。今度はあの天使を倒す。だから、幸哉にも手伝ってもらうわ」
いつもの調子を取り戻したみたいで幸哉は一安心した。
「それより……幸哉って、黒銀色の髪の天使知ってる?」
「黒銀色の髪の天使?」
幸哉は知っていた。あのときの天使である確証はないが高確率で、《死後の世界》に来たときに出くわした天使だ。
「そう、黒銀色の髪の美少女。この町にもう一人、天使がいるの」
天使が二人この町に来ていることはシュウから聞いた。
幸哉が驚いたのはあのときの天使であったと言うことだ。
「あいつが……」
幸哉は玲奈に聞こえないくらいで呟いた。
「その天使が私を助けてくれた」
玲奈は苦笑いしながらそう言った。
幸哉はそこで疑問を持った。
「助けられた?」
「うん、私は《タイラント》に殺されかけた。完全消滅もあり得た。そんな時、彼女が助けてくれた」
天使が人間を助けた。
今まで、あり得そうであり得なかった話。
互いに対立し合う者。
天使は人の記憶を持つ。
だからこそ、対立してしまう。
自分がもとの世界に帰るために天使は倒す必要があるからだ。
「そんなことより彼女……幸哉を探してたわ」
幸哉は絶句した。
名前:シュウ
年齢:不明
誕生日:不明
好きなこと:戦い(とくに幸哉と)
ポジション:ルナのお兄ちゃん
クリーチャー種類:ホワイトドラゴン(白竜)
討伐難易度:S級