ロストメモリー「3」
名前:桜木玲奈
誕生日:8月1日
年齢:17歳
武器:細剣
趣味:甘いものを食べること
告白回数:28回(死後の世界にきて)
記憶収集率:51%
◇
「お前は……バカなのか?」
最斗は最後の一口になった焼きそば食べ、幸哉に話しかける。
「バカじゃない。俺は美少女を討伐するのは嫌なだけだ」
天使と言っても、形、姿はまるで人間と同じ。
感情をもち、天使も完全な者になるために戦う。
天使を討伐、倒すことは、自分たちと同じ姿の生き物を殺すことになる。
気持ちのいい話ではない。
その事を考え、天使との戦いを避ける人間もいる。
「でも、こっちが戦わなきゃ殺られるのは俺たちなんだぜ?」
戦わなければ、こちらがやられる。
天使は、《死後の世界》に来た人間を消し去る存在。
それがロストプレイヤーの考え方であり、天使の存在する意味だと思っている。
ただ、幸哉の場合は違う。
この世界に来たとき、リアは確かに天使は本物になるために行動している。
攻撃されない場合、反撃はしない。
これが、リアから教えられたことだった。
だからこそ、初めは何かの間違いだと思った。
ロストプレイヤーの勘違い。
そう思った。
しかし、現在まで幸哉は2度、天使と抗戦したことがある。
一度目は、《死後の世界》に来てすぐ。
二度目は、天使が無作為にロストプレイヤーを排除する行動にでたとき。
後者は、リアの言っていたこととは、まるで違った。
天使が悪魔のように、容赦なくロストプレイヤーを完全消滅させていた。
リアの言っていたことは嘘だったのか。
ハッキリしない答えは未だに幸哉を悩ませていた。
しかし、ハッキリしていることもある。
天使には感情があること。
これは、ロストプレイヤーも知っている。
そして、リアの存在。
リアのように、色々なことを教えてくれた存在は、幸哉以外にはいないと言うことだ。
幸哉は椅子に深く腰かけると、大きな溜め息をつく。
最斗はコップに入った水を飲むと、席を立ち上がった。
「まぁ、何考えてるかは知らんが、討伐に協力するか、しないかは、お前が決めろ。俺はお前に任せる」
そう言って最斗が立ち去ろうとしたところで幸哉は口を開いた。
「どこ行くんだ?」
「デートだよ!デート」
「えっ?」
「それじゃ!!!!」
満面の笑顔で最斗は敬礼と同時に食堂から姿を消した。
◇
目が覚めると幸哉は学校の屋上にいた。
リアと別れ、《死後の世界》ロストワールドと言うところに来た。
瞬時に幸哉はそう思った。
日が沈み。辺りは暗く、電気もついていないことから時刻は深夜くらいと推測できる。
「まるで現実世界だな……」
記憶を失っているとは言え、言葉や感覚を失ったわけではない。
記憶喪失と同じで、過去に自分がしていた行動や思い出などが消えてしまっただけであり、喋られなくなるわけでも、住んでいた世界の常識を忘れることはない。
自分がいた世界の雰囲気は何となく覚えている。
視界に入る風景は暗闇で、はっきりとは見えないが家々が並び、幸哉の知っている雰囲気があった。
やはり、死んだ実感がない。
今まで見ていたことは、夢ではないか。
記憶を失っているのは自分の妄想なのでは。
疑問に思いながら幸哉は屋上の下を覗き込む。
高さは普通の学校と同じくらいある。
死んだことの実感の無さ
死んだことの確認
好奇心
飛び降りるには十分だった。
「……死んだんだよな?これ以上死なないよな?」
幸哉は屋上にある鉄格子を飛び越え、勢いよく飛び上がる。
そして、幸哉はあることを思い出した。
死んだ人間はこれ以上死ぬことはない。しかし、死なないと言うことと痛みがないのは別なのだ。
実際、リアに身体を貫かれた時には酷い痛みが生じた。
つまり、死ななくとも、痛覚はある。
幸哉は顔が真っ青に染まった。
このまま落下すれば骨が折れるのは間違いない。
後悔しながら、幸哉は地面に落下していく。
「まずい…」そう思った矢先、幸哉は反射的に地面に着地する姿勢を取った。
そのまま地面に着地し、真っ赤な花が咲くことは無かった。
「えっ?」
幸哉は自分で取った行動にもよらず、疑問符を浮かべた。
着地した。
あの高さを。
ありえない状況に苦笑いしながら幸哉は確信した。
現実のようで違う。
ここは《死後の世界》なのだと理解した。
◇
桜木学園から約30分離れた位置に深い森がある。
静寂の森。
ロストプレイヤーからはそう言われてる。
討伐が困難なクリーチャーが森の最深部に潜むだけであり、他のクリーチャーは存在しないことからそんな名前が告げられた。
今だ嘗て討伐に成功した例はない。
高難易度の討伐には、高い確率で記憶を取り戻せるという、メリットがある。
しかし、それ相応のデメリットも存在する。
ロストプレイヤーは基本死なない。
心臓を刺されようが、腕を切断されようが、下半身消し飛ぼうが、時間が経過することで生き返る。
しかし、再生する身体が無ければ再生不能とりなり完全消滅となる。
二分の一の確率で完全消滅したロストプレイヤーはどこかで復活するが、記憶はリセットされ、《死後の世界》にきたときに過ごした記憶すらなくなりゼロからのスタートとなる。
実際に消滅した人間を幸哉は何度か見たことがあった。
その中には幸哉の知り合いも含まれていたこともある。
完全消滅の危険性があるのは、討伐に高難易度とされるクリーチャー、そして天使とされている。
天使との戦いは完全消滅の危険性が特に高い。高難易度のクリーチャーでは、天使と比べると低い方だが完全消滅の危険もある。
静寂の森に潜むクリーチャーは、高難易度の討伐、さらに完全消滅の危険性もあることから、挑戦するものは少ない。
また、クリーチャーからは討伐後、記憶の他に《死後の世界》では武器をドロップすることもある。
ゲームと同じように、ドロップしたアイテムは一つの場合が多い。
レアなアイテムの場合、誰が手にするかで揉めることが起きるためチームと言った多くの人で組んだ集団は挑戦することを避けている。
そのため、静寂の森は未だに攻略されていない。
幸哉は一人、森の最深部を目指し奥へ奥へと進んでいった。太陽の光が木の葉と葉の間から差し込み神秘的な雰囲気を醸し出す。
何時間か経過し幸哉は、最深部と思われる大きな大樹の下にたどり着いた。
「……ん?」
微かに聞こえた声に反応し幸哉は辺りを見回す。
辺りには誰もいない。
聞き違い、そう思った瞬間。
近づいてくる気配に幸哉の体が反射的に動いた。
後方に下がり、幸哉がいた位置に三本の光の矢が突き刺さる。
「透きやりーーーーー!!!!」
「おいっ!?」
黒い影が幸哉に目掛けて飛んでくる。
白い髪を二つに結び、コバルトブルーの瞳、小柄な体格、発育途中の小さな膨らみ、綺麗な肌。一人の少女がニヤリと不適な笑みを見せ、幸哉に抱きつきそのまま少女と共に倒れた。
倒れた拍子に頭を地面に打ちつけた幸哉は頭を押さえながら起き上がる。
「何でお前がここにいるんだよ?ルナ」
「邪悪な竜によって捕らえられていました。あなたは私を助けに来た勇者様ですね!!!!」
「違います。なので、もう少し捕らえれていてください!!」
「あなたは私を助けに来た勇者様ですね!?」
「リピート!?」
「やはり、勇者様ですか!城に帰って婚約の儀を!!!!」
「何にも言ってないだろ!ってか、離れろよ」
まとわりついた少女を引き離そうとするが、予想以上に確りとくっつき離せない。
「誓いの言葉を!」
「お前は何してるんだ!!」
「この人を夫に迎えますか?はい!!!!」
「だから、一人でなにしてんだ!?」
「君こそ何をしてるんですか?」
少し離れた位置、大樹の枝に本を読んでいる少年の姿が見えた。
クリーム色の艶やかな髪質、穏やか雰囲気、輪郭が整い、歳は幸哉と同じくらいの少年。
「美少女に抱きつかれて鼻を伸ばして喜んでるようじゃ、ぼくには勝てないよ?」
「どこが鼻を伸ばして喜んでるように見えるんだよ?」
「特にルナに抱きつかれた拍子に触ってしまった小柄な―」
「それ以上喋るな!!!!」
幸哉の反応を見て、クスリと笑った少年は読んでいた本を閉じ、木の枝から飛び降りた。
「今日はどのような用が合って来たんだい?」
少年の名前はシュウ。
この森の主であり、人間の姿をしているが本来感情を持たないはずのクリーチャー。
本当の姿は、伝説の生き物でよく知られているドラゴン。
なぜ、感情を持つのかはシュウ自信にもよくわからないらしい。
特殊な力を持つドラゴンは、知能が高い。そのため、イレギュラーが生じ、感情を持った。
これは、最斗の推測ではあるがシュウの存在を知っている全員がその推測で無理矢理納得した。
感情をもつクリーチャーは現在シュウしか幸哉は知らない。現段階、シュウは天使と同じように、無闇にロストプレイヤーを攻撃はしない。
しかし、天使と同じと言うことは結局、シュウもロストプレイヤーから狙われる。
記憶を取り戻すために。
それでも、幸哉がシュウと戦わないのは人間と同じ感情を持つからだ。
感情を共有すること、わかり合える。
姿が変わろうが変わらないが、感情をもつ生き物を幸哉は殺すのはあまりいい気はしない。
ただのお人好しなのかもしれない。
幸哉は何度もそう思い。何度も言われてきた。
「幸哉くん?」
幸哉は我に返るとシュウが顔を覗き込んでいた。
「わ、悪いな。ボーとしちゃって」
「別にぼくは構わないけど、そっちは不機嫌そうな顔をしているよ?」
シュウが指差す方を見ると、先ほど抱きついてきたルナと言う少女が顔を膨らませ不機嫌な顔をしていた。
琴崎ルナ。
彼女もこの辺りでは、玲奈に匹敵するほどの有名人だ。
玲奈ほどの戦闘技術はないが、二本の短剣を得意の武器とし自由自在に操る剣捌きは、誰もが認める。
そして、一番の強みは彼女に仕えるドラゴンの存在。
それは、紛れもないシュウのことだ。
森の主が、縄張りをほっといてルナと共に行動することは良いのか悪いのかはわからない。
最近では静寂の森に、クリーチャーなんて存在しないという噂もある。
シュウに仕えている理由を聞けば、「ルナは可愛いから」だ、そうだ。
ルナに仕えているため、町でシュウに出会うことも多々ある。
実際、仕えてると言うよりは兄が妹の面倒をみているようにしか見えないのだが。
幸哉は溜め息をつくとルナの頭を撫で立ち上がった。
「とりあえず、今日は聞きたいことがあってきた」
幸哉がシュウにそう言うと、ルナは張り付いて離さなかった幸哉の体から手を離し、シュウのもとに駆け寄った。
「何となくはわかってると思うけど、天使のことについて知っていることはないか?」
シュウは顎に手を当て、考え込む。何か知っていることは、察しがついた。
「今回は君が戦いたくない天使と、君の嫌いなタイプの天使が二人、桜木学園に来てる」
その言葉に幸哉は眉を歪ませた。
「二人?」
「一人は絶世の美少女。ぼくも何度か見たことがあるが天使とは彼女のことを言うんだろうね」
「……そんなに?」
「あぁ、彼女の腰から上の括れ、スタイル抜群で―」
刹那、三本の矢がシュウの頭に刺さり仰向けになって倒れた。
そのすぐ近く、ルナが見慣れない武器を持ち幸哉に向けて構えている。
幸哉はだらだらと汗が流れ、これ以上その天使の話をすると殺されると察した。
「弓矢なんて、いつから使うようになったんだ?」
「フフフ、邪悪なる魔物との戦いの最中、運命的出会いをしたのだ」
「……拾ったんだな?交番に届けなさい」
「ちがうわい!!!!」
「二人ともそこまでだよ」
グサッ
起き上がったシュウは突き刺さる矢の音と共に再び倒れた。
「……」
「シュウが話せないみたいだから代わりにルナが説明しよう」
(誰のせいだ、誰の)
「邪悪なる天使は―」
「頼む。普通に話してくれ」
「天使は2人来ているのは確か。一人はシュウの言っていた天使で、攻撃的ではないね。もう一人はその逆、攻撃的で危険性が特に高い」
「……後者の天使の名前は?」
「残念だけど、幸哉が探してる天使じゃないよ?名前は―」
「《タイラント》―ギリシャ語で『暴君』って意味だったかな?」
起き上がったシュウはルナの話が終わる前にそう言った。
ルナは口を膨らませて、弓矢の矛先をシュウに向けて放つ。
しかし、今度は軽く矢をかわす。
その行動にルナは口を尖らせた。
「今回、戦力を上げて討伐しようとしている天使は《タイラント》の方だね」
「もう一人の天使の存在に他の人は気づいてないのか?」
「たぶんね。天使の目撃者は紅い剣、紅い瞳が印象的と証言してるから前者の美少女天使のことではないのがわかる」
「一応聞くが、天使が協力し合うことはないのか?」
「今回の場合だと、絶対にない」
「かなりの自信だな?」
「逆に、対立し合うことはあるかもね」
幸哉はそこで会話を止めた。
天使が対立し合うとはどういう意味なのか理解できなかった。
クリーチャーが同じ種で協力し合うことはある。
つまり、天使同士で協力することもあり得る
しかし、対立することはない。
勝手にそう思い込んでいた。
「どの生き物もお互いに対立することは良くあることさ。人間だって喧嘩するんだから。天使だって対立する可能性はゼロではないと思うけど?」
シュウの言ったことに幸哉は納得した。
現実でも《死後の世界》でも、同じことはある。
それでも、不自然な感じだった。
天使が対立し合うことは今まで事例がない。
否、まだ実際に戦ったわけではない。
あくまでも推測なのだ。
「で?幸哉くんはどうするんだい?今回の討伐作戦。戦う相手が《タイラント》なら協力するのかい?」
「……相手による。そいつを倒さないといけないなら倒す」
「おかしなこと言うね?記憶を取り戻すためなら、倒さないといけないんじゃない?」
「そうじゃない。その天使が無抵抗な人間を殺すなら、俺も戦う」
「結果を待っていたら、また、あの子のようにこの世界から消える人間がでてくるよ?今度は玲奈さんかも」
そこで、黙って聞いていたルナがシュウの横腹に肘うちした。
それ以上言うなと言うことだろう。
シュウはため息をつき、話をやめる。
「幸哉は、自分のやりたいようにするといいよ」
明るく、気の使えることもルナが人気のある理由だ。
「あぁ、ありがとな」
シュウの言いたいことはわかっている。
過去に起きたこと。
戦わなかった。天使には、感情がある。わかり合える。
それが大事な仲間を殺すことになった。
『君は天使を倒せるかな?』
リアが言っていた言葉の意味が何となくわかったのはその時だった。
しかし、未だにその言葉は引っかかっている。
リアはそれだけの意味でそう言ったのか?まだ、他にも意味がある。
幸哉はそう思っていた。
「とりあえず、明日までに返事はすればいいから今日は1日考えるよ」
整理が付かない幸哉は仕方なくそうすることにした。
時間はまだある。
ところが―
「考える暇があるとでも?」
シュウのその言葉に幸哉は嫌な予感がした。
シュウに関わってから、幸哉の嫌な予感は外れたことはない。
「まさか、情報だけ聞いて帰れると思ってるのかい?」
「今度お礼するよ……焼きそばとか」
苦笑いでそう答えると、幸哉はその場から立ち去ろうとする。
「別にお礼なんかいいよ……ここで、戦ってくれれば」
シュウは不適な笑みせた刹那、辺りの気温は一気に低下した。《死後の世界》にも季節はある。
現在の季節は夏。
暑いはずの辺りの気温が変化し、夏と言う季節を忘れさせ、冬を幻想させるほど気温は低下する。
この現象は、シュウが本来の姿を現す合図だ。
幸哉は、渋々右手首についた白いアクセサリーを外し、それを左手で強く握った。
「死んでも後悔するなよ?」
「君に、ルナはわたさないよ」
「お前はルナの父さんか!!」
それを会話の最後に吹き荒れる風がシュウの姿を隠し、徐々に風が治まっていく。
白く美しい巨大。天まで届きそうな翼。
鋭い牙と爪。
白く輝く鱗には傷一つない。
《死後の世界》に来て何度も見たことはあった。
しかし、未だに白く輝くドラゴンの姿に幸哉は見惚れてしまっていた。
幸哉は息を吐くと、左手に握ったアクセサリーを前につきだし口を開く。
「顕現せよ―白竜!!」
光と共にアクセサリーは一本の片手剣へと形作られる。
白く輝く一本の剣を右手に握るとシュウに向けて構える。
「さぁ、始めようか!!」
「グオオオーーーーー!」
ドラゴンの咆哮と同時に幸哉は地面を強く蹴った。
◇謝罪
この物語は、過去と現在を同時に進行するため内容がわからなくなるかもしれません。
まだ、初心者なのでご了承ください。
また、同じ言葉を何度も使いますがこれから良くしていきたいと思います。