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第七話 恋のからまわり

ちーん。

こんな効果音が、少し前のアニメとか漫画によく使われていた記憶がある。

今まさに、この聞こえない効果音があゆの部屋に響き渡った。

「春ちゃん・・・・」

あゆは、真っ赤な顔をして僕の顔を見ている。

僕も、動揺してしまって不意にあゆから目をそらす。

なんなんだ。

このシチュエーションは?

あゆは、動揺を隠せない顔をしながら、無理に冷静さを装い僕に聞く。

「どした?」

それは、こっちが聞きたい。

「なんか、あった?」

それも、こっちが聞きたい。

何も答えない僕をあゆは、苦笑いをしながら、

「なぁ〜にぃ〜、どうしたぁ?」

と言った。

だから、それはこっちが聞きたい!!

その苦笑いをみることに耐えかねて僕は部屋の扉を閉めて、あゆの目の前に正座をし、あゆの目を見て話した。

「あゆ、あの・・・・」

そこまで言ったくせに、僕の心は突然ブレーキを踏んだ。

思春期特有の恥じらいという名のブレーキ。

それを、心の中の小悪魔な僕が急に踏んだ。

テレビアニメのトムとジェリーで、悪魔のジェリーと天使のジェリーが出てくるだろう?この表現はすばらしいと思う。心というものをよく理解していると思う。実際、僕は僕の中にも、悪魔な僕と天使な僕がいて、何かあるたびにこの二人が話し合いをしたり喧嘩したりして結論を出しているんだと結構思っていたりするんだ。

今の状況で、天使の僕を蹴飛ばして悪魔の僕がささやく。

大体、今の電話誰?なんて聞くのか?

僕らはただの幼馴染だし、そんなことを聞いたら僕の気持ちがばれるのではないか?

ばれたら、僕らはこのままではいられないだろう。

それに、あゆが、誰とどうなろうと僕がとやかく言う権利はない。

僕は、あゆの親父ではないんだ。

でしゃばるな。

その悪魔のささやきに、簡単に支配されてしまった僕は、聞きたいことをごっくんと飲み込んでしまった。

「やっぱ、いいわ。また、明日来る」

そういって僕は、部屋を出ようと立ち上がりドアノブを持った。

あゆの返事が聞こえない。

「うん、わかったぁ」

というよく理解していないような返事が返ってこない。

これは、おかしい。

異変に気がつき振り向くと、大きな目に涙をためて口をへの字にして僕を見つめているあゆがいた。

緊急事態だった。

あの電話の相手となにか、トラブルが生じているのだ。

あゆを見ればそれが一目瞭然だ。

どつぼにはまってしまっているのだ。

昔から、そうだ。

そういうのは、沢山見てきたからよくわかる。

あゆが、瞬きをする。

大粒の涙が、あゆの頬を伝う。

小学校低学年の子供のような顔だ。

美人には、程遠い。

こうなると、僕は帰れない。

ため息をついて正座していた位置に座りあゆの頭をぽんぽんとなでる。

「ごめん、タイミングが悪すぎた」

僕がなでたところに涙のスイッチがあったのだろうか?

あゆの目からは、大粒の涙がぼろぼろとこぼれた。

こうなったら、15分は泣き続けることが僕には見えている。

「ごめん、しらんぷりしようとして」

「春ちゃん・・・・えっぐ、ひっく、ひゅっく」

どんなに制服が変わろうと、あゆはあゆのままなのだ。

あゆは、昔からそうしていたように自分が泣き止むまでずっと僕の手を握っていた。

少し小さなあゆの手を僕も優しく握り返しあゆが泣き止むのを待った。


15分が経過して、あゆの涙はようやく一通りできった。

正確に言うと18分間泣き続けた。

一通り泣いたのを確認した僕は、ゆっくりとあゆに言った。

「で、何がそんなに悲しかったわけ?学校でなんかあった?」

あゆは、ずずっと鼻水をすすり僕の質問に答えた。

「この前、高校の友達と遊びに行った時、その子の男友達にあったの」

「うん。(男・・・・)で?」

「そのときは、全然普通に話ししたりして楽しく過ごしたんだけど、それから毎日、その人から、メールとか電話とか来るようになったの」

「ほぉ。(要するに、あゆがわかってなかっただけで、紹介されたってわけか)」

「別に、私、彼氏が欲しいわけでもなかったんだよ?ただ、この人友達だよ〜って言われただけ」

「うん。(なんだ?この補足)」

「でね、なぜかわかんないけど、すごく頻繁にその人から連絡が来て遊ぼうって言われるの」

「積極的じゃん!!(マジかよ)」

「その人のことあんまり知らなかったけど、すごく誘われるから行ってみたの」

「え?行ったの?」

僕は、驚いて少し大きなリアクションを取ってしまった。

あゆは、結構保守的なタイプだからそういうのにはひょいひょいと出て行かないはずなのに・・・・。

その謎を解決する言葉をあゆはしょんぼりしながら口にした。

「だって・・・・家の玄関まで来るんよ・・・・。断れないよ」

「(押しの強いタイプかよ!!)」

あゆは、典型的な日本人だ。

そりゃもう、教科書に書いたような。

NOが言えない日本人。

電話やメールでも相当パニックに陥りながらも一生懸命何かしら断っていたのだろう。容易に想像が付く。

「遊びに行った先で、なんだか、恋人みたいに振舞われるから困っちゃって。でね、帰りになんか・・・・えっと・・・」

「(はぁ?何それ)何?」

あゆは、ちょっとどもり気味の声でそれを言った。

「君と両思いになれて良かった!! って言われて・・・・」

「はぁ??(なんだそりゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!!)」

僕はあいた口がふさがらなかった。

「付き合ってるの?」

「付き合ってないよ!!だって、第一知り合って間もないし、先輩のことそんな風に思ったこと一瞬もないし、そんなこと一言も言ってないと思ってたの」

「思ってたって?」

僕の眉が、ハチの字になったのを見て、あゆの目はまたもやうるうるっとなってきた。

「泣かなくて良いから、で、言ったの?」

「恐くなって、その友達に話ししたら、私、記憶にないんだけど一回だけ好きですよって言っちゃたみたいなの」

「言ったの??何で??」

「初めて会ったときに、部活の話になってそれに一生懸命な先輩の話し聞いてたら、何かに頑張る人私、好きだから好きですよ〜って」

ようするに、LikeとLoveのはきちがえだ。

あゆは、そういった人が好きだといっただけなのに、その先輩は自分とはき違えた上に、メールや電話に応対してくれているあゆの行為の中にも何かしらの確信を持ってしまって、ついには両思いと考えてしまったのだろう。

恋に落ちた人がよくおちいる症状だ。

その誤解を知ったあゆは、その男に電話をかけ誤解を解こうとして、彼の猛烈なアタックに合ってしまった、そして勇気を振り絞って自分の気持ちを打ち明けたときに、僕が部屋に入ってきたという経緯なのだ。

恋のからさわぎならぬ、恋のからまわり。

その男にも否はあるものの、あゆにも原因はある。

「どうしよう。私、私・・・・・」

どつぼな、あゆ。

といっても、正直に感じたことを言葉にする彼女に悪気はない。

かといって、その男にも同情できる。だって、僕もあゆが好きだから。

「わかった、あゆ、俺が手伝ってやる!!」

恋のからまわり、吉と出るか、凶と出るか?

俺の明日は、どっちだ!!


花粉症なこの時期にいかがお過ごしですか??

鼻水たれてくしゃみ連発で、倦怠感を感じる読者の皆さん、春とあゆの7話を処方しますよ☆


ってなわけで、今回も読んでいただいて本当にありがとうございました!!

とても、嬉しいです。

毎回同じ事書いているけれど、本当に嬉しいんだから仕方ないじゃないですか!!

感謝、感謝、感謝です。


7話目です。

この話を見て、賛否両論だと思います。

あゆとのコトを勘違いしてしまった男の子。

あゆ。

考え方は様々ですし、どちらの気持ちもわかるというところが私の見解です。

だって、好きだな、可愛いなって思えた子が自分のこと好きですよ〜っていって、連絡とって、遊びにまで行ったら、そりゃも〜舞い上がって勘違いしちゃいますよ!!

あゆの気持ちだって、わかりますよ。

上手に断れない。

人を考える。

こんな人は世の中に沢山いると思います。

さて、これからどうなるんでしょう??


がんばれ、春!!!(笑)


読んで感じた賛否両論、感想、心待ちにしております。総合掲示板、もしくはsiroyagi_post@yahoo.co.jpまでメールくださいね。


では、8話でお会いできることを祈ってます。

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