第5話 制服
昨日まで天気は晴れでもなければ雨でもない、いわゆる曇りという天気だった。
どんよりとした雲が待ちの上空に滞在していたけれど、その雲はまる2日この町に滞在してようやくあることに気がついて他の町に動こうと決心したのだろうとおもう。
それって言うのは簡単。
「この町、本当に何にもないね。」
田舎だもの。
仕方ないさ。
そんな、どんよりした雲が決心して他の空へ動いてくれたおかげで、今日というめでたい日にぴったりの天気になった。
今日は、朝から快晴。
程よい気温と、澄み渡った空が今日人生の階段をまた一歩踏みあがる僕らに祝福をしてくれているのだろう。
まぁ、もっといえば僕の日ごろの行いがいいから・・・・。
今日は、高校の入学式だ。
我が家の家族はおのおの精一杯に僕を祝福してくれた。
姉と弟は、二人でお金を出し合って、入学祝をくれたし、
父はめでたいと何度も言いながら僕の背中を叩き、目に涙を浮かべながら、朝から酒を飲んでいた。
母は、そんな父の横で豪快に笑いながら僕の制服のカッターシャツにアイロンをかけてくれていた。
いまどき珍しい、家族愛だ。
しかし、全員が心の中でこう思っているのは確かだ。
「さぁ、3年間の甘酸っぱい男子校生活の始まりだ!! 」
自分で進路は決めたものの、少々切ない事実。
大体、なぜ、この高校を選んだか?というと理由はひとつ。
僕の街から一番近くて、公立高校だったから。
共学の高校もあることは、あるのだけれど、我が家から通うと片道2時間かかってしまい交通費が馬鹿にならない。
しかも、どの高校にもダンス部なんてものはないから、踊るためにはやっぱり家に帰るしか見当たる方法はなかったんだ。
僕の高校生活。
どんなものになるのだろうか?
どんな出会いがあり、僕は何をみるのだろうか?
遠足の前の子供じゃないけれど、少しわくわくしていた。
こんなこと、口にも表情にも、ましては行動にも出さない僕だけど。
式は、10時からで、新入生である僕らは指定された教室に9時15分までに入らなくてはならなかった。
僕は、同じ高校に通うことになっている幼馴染の真と一緒にいく約束をしていた。
あゆの高校も、同じくらいの時間帯だったけれど、あゆも一緒の学校の女の子達と行く約束をしているらしいから、今日僕らは始めて別々に学校に行くことになっていた。
学校に通い始めて10年目の春。
初めて僕は、家を出て、細いわき道を下ると海岸線の二車線の道路に出た堤防のところであゆがいない朝を経験した。
と、言ってもそれほど大げさな話しではないのだけど。
駅まで徒歩五分。
真は、改札口の前で待っていた。
「よぉ、おはよう、春!! 」
真は、小学校の頃からの友達で、僕の親友だ。
ビーチバレー部だったから、色が黒い。
そして、歯が白い。
真いわく、男は白い歯が命らしい。
バレー枝親手いるけれど、真は身長がそれほど高くない。
僕と同じ、173cmくらいだ。
性格は、温厚、しかしスポーツマンだから心は熱い。
人情味のある、良いやつだ。
ここまで言うと、わかるだろう。
真は、もてる。
もてるのに、男子校。
切ない。
駅のホームには、真新しい制服を着込んだ新一年生達があふれていた。
「いっぱいやなぁ」
僕らは、人が少なめな電車の最後尾が止まるところに立って電車を待った。
おもむろに、周りを見渡す。
「A高校の制服はやっぱ、かわいいよな」
真は、少しはなれたところにいるA高校の制服を着た女の子を見ていった。
制服だって、中学と高校は違う。
男は、だいたいどこも詰襟だからかわりばえは、ない。
(中学の頃も詰襟だったから)
問題は、女の子だ。
たぶん、駅にいた男達はみんな目を疑ったと思う。
一ヶ月前までは、彼女達は地味なで、長いスカート丈のセーラー服を着ていた。
しかし、今日の彼女達は違った。
特にA高校の制服は本当にかわいい。
緑色のジャケットに、緑と黄色を基調としたチェックのミニスカート。
眩しい・・・・。
駅にいた男達は、みんなそれに見とれていた。
A高校は、あゆの通う女子高のだ。
あゆも、きっとあれを着ているのだと思うとすごく見たくなった。
そんなことを考えていたら、電車が来た。
電車の中もまた、ホームのようににぎやかで、他の地区から来た生徒達も乗っていたからもっとにぎやかになった。
電車には、さんさんと光が差し込み、暖かいというより少し暑かった。
「こういうところで、出会いとかを見つけなくちゃなんねぇんだろ?」
真は、僕に真剣にぼっそとつぶやいた。
「男子校だしな」
僕も、真に真剣につぶやいた。
「どれがいい?」
「やっぱ、彼女にするなら制服も可愛いし、女の子も可愛いA高校かな?」
僕は、そういってA高校の女の子たちを眺めた。
きゃっきゃとはしゃぐ彼女達は、知っている人も知らない人のように見えた。
制服がひとつ変わるだけで、これだけ見違えるのだ。
制服パワー恐るべし。
それを見て、生暖かい気分になる自分も恐るべし。
二駅目に電車が止まる。
A高校の女の子達がぞろぞろと電車を降りていく。
その中に、僕はあゆを見つけた。
最初、似ているなと思っていたけれど、それがあゆだとは気がつかなかった。
もちろん、あゆもあの制服を着ている。
すごく似合っていた。
ガーっと電車のドアが閉まり、電車が動く。
あゆは、すぐに女の子の群れの中に混ざってしまってわからなくなった。
とにかく、何が言いたいかって言うと、
可愛い!!!
制服最高!!!
ってこと。
すみません、僕いっぱしの15歳のガキなんで。
そして、すぐに3駅目に着き、僕らは電車を降りた。
学校までは、少し距離があるといわれていたけど、それほど遠くには感じなかった。
校門の前で、僕も真も、当たり前のことを当たり前のように感じた。
きっと、新入生みんながここで同じコトを感じただろう。
「男ばっかぁ〜」
それから、クラスわけの張り紙を見て、指定された教室に入って、入学式を迎えた。
嬉しいことに、真と僕は一緒のクラスだった。
この高校で三年間生活することになる。
どんな三年間になるのだろう。
素直に、楽しみだ。
時間は、駆け足で進み、それなりに友達も出来て楽しい一日だった。
昼には学校自体は終わったけれど、放課後、部活見学をしていたら、家に着いたのは夕方になってしまっていた。
家の前の海岸線沿いの二車線の道路に沿ってある堤防に座って、あゆは座って新しく入学祝で買ってもらったと話していたMDウォークマンを聞きながら僕を待っていた。
「あゆ」
僕が、あゆを呼ぶ。
ウォークマンを聞いていたから聞こえないかと思ったけれど、あゆは僕の声にすぐに反応し、僕を認識した。
ウォークマンのヘッドホンをはずし、あゆはにっと笑い僕に、
「お帰り」
と言った。
あゆは、あの件の制服を着ていた。
「似合ってる。女子高生みたい」
「女子高生だし」
あゆは、僕の頭を軽く叩き軽く笑った。
「学校どうだった?」
僕がそういうと、あゆは簡潔に答えた。
「女の子ばっかだった」
「そりゃそうだろ」
僕は笑い、それから僕らは少し堤防に腰掛、今日あったことを話した。
新しい一日だけど、変わらない一日。
制服が変わったって、僕らは実際何も変わらないのだ。
夕日が沈み、夜が来る。
そして、また新しい一日が始まる。
明日は、どんなことがあるだろう。
これから一ヶ月は、そんな風に思えそうだ。
「春とあゆ」 written by etsu
第5話 制服
少し、UPが遅れてしまいました。
楽しみにしてくださっている方がいらっしゃいましたら、すみません。
ってなわけで、早くも「春とあゆ」も5話目となり、二人はめでたく高校生になりました。
おめでとう!!
高校生。
良い響きですね。
青春がぷんぷんにおいます(笑)
自分が高校生だったとき何してたかと思うと、恥ずかしくなりますが・・・。(笑)
今回、描きたかったのはそんな彼らの初々しさと、高校に入っても春とあゆの関係はそのままなんだよってコトです。
そして、いつかそのままでいられなくなる日が来ることも含んでます。
さて、二人はどうなるんでしょうか?
今後を、書くのが楽しみです。
読者の皆様には、ほんとに今回も最大級の感謝を送りたいと思います!!
ありがとね!!
よろしかったら、総合掲示板、または私宛にご感想お聞かせください。よろしくお願いします。
ではでは、また6話目でお会いできるのを楽しみにしております!!!