第一話 あゆ
朝が来ると、太陽が僕らの街を光で洗い流してくれる。
“朝が来たよ、昨日の嫌なこと、悲しいこと、つらいこと、苦しいことは全て光に流して今日一日、笑顔で過ごしてくれよ。”
そんな風に太陽は言いながら光を放っているような気がする。
歌にもある。
「新しい朝が来た 希望の朝だ!! 」
なんて歌を作った人は本当にすばらしいと思うし、できれば座布団を二三枚贈ってあげたい。(残念ながら、うちのあるタウンページにはのっていなかった。)
僕は、朝が来るのがものすごく好きだった。
朝起きて、顔を洗って着替えを済ませて、居間に行くと父が新聞を読み、姉と弟が朝ご飯を食べ、母がご飯を用意してくれる。
そんな普通の光景も好きだった。
けれど、朝にはもっとすてきなイベントがある。
家を出て、細いわき道を下ると海岸線の二車線の道路に出る。
その堤防によっかかって、彼女は僕を待っている。
「おはよう、あゆ」
僕がそう声をかけると、彼女は僕の声に反応してこちらを向いて屈託のない笑顔で笑い僕をみる。
今朝は寒かったから、彼女の頬はうっすら赤くほてっている。
そして、彼女も返事を返す。
「おはよう、春ちゃん」
僕が朝が好きな理由は、これだ。
すごく青くて、くさいけれど、僕はあゆの笑顔が好きだ。
しかも朝一番に、これを見るのが好きだ。
僕は、世の中の美人と呼ばれる綺麗な女性が好きだ。
あゆに聞かれると、むくれるだろうけれど、あゆはけして美人顔ではない。
どちらかといえば、いつまでも幼児期の顔を保ったまま成長している幼顔だ。
昔から髪の毛はショートカットなのに、猫っ毛だからすごく寝癖がつきやすく本人は髪は梳いたというけれど、毎日寝癖を何かしらつけたまま、あの場所で待っている。
こんなこと言っているけれど、僕らは恋人ではない。
世間一般的に言う、幼稚園からの腐れ縁というやつ。
ただ、家が近くて小学生のころから毎日一緒に学校に通っていたものだからそれか今も習慣化されていて続いている。
今年で九年目。
ただ、それだけ。
中学に上がったころは、付き合っているとか女と学校に行っているとか冷やかしを受けたけれど、別に気にしなかったし、あゆも気にしていなかった。
いくら、周りになにを言われようと、僕らの習慣は変わらず今でも続いているわけだ。
あゆは絶対に知らないだろうけれど、思春期になった僕は、あゆの事が好きだった。
でも、別に今すぐに、打ち明けようとも思わない。
このまま、何も変わらない生活がずっと続いていって僕らが大人になったころ、僕の気持ちがあゆのものだあるとしたら、そのとき打ち明けようと思っていたから。
ま、あゆに好きな人が出来たり、付き合うような人ができたりしたら別だろうけれど。
でも、今はこの気持ちを大事に持っておきたかった。
そして、どこからその確信が持てるかはわからないけれど、僕らはこれからもずっと一緒だとおもっていた。
この街で、何も変わらない日々が永遠に続くだろうと思っていた。
「おはよう、あゆ」
「おはよう、春ちゃん」
それが永遠だと思っていた。
15歳の冬。
僕ら永遠。
「春とあゆ」 written by etsuko
第一話 あゆ
初めての投稿です。
春とあゆのみずみずしい恋を描いていけたらいいなぁと思います。
よろしくお願いします。