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白い道 【迷子のAI】

AIさん盛大な迷子回です。

1・雪の駅


新幹線「やまびこ」が秋田駅のホームに滑り込むと、遠山ミツコは背伸びをして立ち上がった。三十二時間の長旅だった。東京から新潟、さらに在来線に乗り継いで、この北の端まで。車窓の外には、いつの間にか一面真っ白な世界が広がっていた。雪だ。本格的に積もっている。


「うわあ……」


思わず声が出てしまった。冷たい空気が鼻腔をくすぐる。ミツコはトレンチコートの襟を立てると、ホームに出ていった。


秋田駅は思ったより小さかった。東京の巨大なターミナルとは違い、人通りもまばらで、どこか懐かしい昭和の雰囲気が残っている。改札を出て、タクシーを拾おうとすると、運転手の老人が声をかけてきた。


「秋田に来たんや? 雪が降ってねえ?」


ミツコはうなずいた。


「実家か?」

「はい」

「いいところや。東京より全然マシで」


タクシーは細い路地を縫うように進んだ。街並みは低く、古い木造の家が連なっている。雪が降っているので、屋根には白い毛布がかぶさっているようだった。ミツコは車窓からその光景を見つめながら、いつ以来だろうかと考えた。最後に秋田に来たのは、母が亡くなったときだ。もう六年も前になる。


「ここや」


タクシーが止まった。目の前にあるのは、二階建ての古い木造の家だ。屋根には雪が厚く積もり、庭の梅の木も白く染まっている。ミツコは運転手に支払いを済ませると、家の方へ歩いた。


鍵を開けると、懐かしい匂いが鼻を突いてきた。古くなった木の匂い、湿った土の匂い、そして何より、母が使っていた石鹸の匂い。居間に足を踏み入れると、埃が日光に照らされて舞っていた。


「おかえり」


ミツコは呟いたが、返事は当然来なかった。


2・遺品の山


実家の片付けは、想像以上におっかなかった。母は生前、物を捨てるのが大嫌いだった。「いつか使うから」と言って、新聞を束ねて置き、段ボール箱をため込み、使わなくなった食器まで全部残していた。


ミツコは居間のテーブルに腰掛け、まず目の前の新聞の山から始めた。2018年の秋田魁新報……もう五年も前のものか。母が亡くなる少し前だった。毎日読んでいたんだなあと、ミツコは思った。


「はあ」


ため息が出た。冷たい空気が部屋中に漂っている。ストーブがないと、この家は凍ってしまうだろう。ミツコは立ち上がると、台所に行って電気ポットに水を入れた。紅茶のティーバッグを取り出し、熱湯を注ぐ。


その匂いがすると、また母が思い出された。母は紅茶が好きだった。毎朝、一階建ての居間で、猫と一緒に紅茶を飲んでいた。猫の名前は「しろ」で、白くて毛並みがきれいだった。でも、しろも三年前に死んでしまった。


「全部、死んじゃったな……」


ミツコは呟いたが、母のことではない。自分の青春のことだ。東京に出てきてから、この六年の間に、自分はどれほど変わっただろうか。出版社で校正担当として働き、彼氏と別れ、また付き合って、また別れて……。繰り返される日常に、いつの間にか疲れていた。


だから、帰ってきたのだ。何の目的もなく、ただ「ここに戻りたい」と思って。


3・母の手紙


二階へ上がって、母の部屋に入った。ドアを開けると、母の服の匂いがした。まだ残っているのかと感心しながら、ミツコは押入れを開けた。


布団と毛布の下に、古い革張りの日記帳があるのが見えた。これは、母が二十代の时候に使っていたものだった。ミツコが子供のときにも見たことがある。でも、中身を読んだことはなかった。


日記帳を開くと、青いインクで整った字が並んでいた。


「1976年3月12日(木)晴れ

今日、東京へ行った。叔母さんの家を訪問したの。秋田から新幹線で三時間もかかった。でも、本当にわくわくした。大きなビルがたくさんあって、人がたくさん歩いている。私はいつか、あの街で暮らしたいなと思った」


ミツコは息を呑んだ。母が東京へ行きたいと思っていたなんて、知らなかった。母はずっと秋田にいた。地元の小学校の教師をしていて、家と学校の間だけを往復していた。


「1978年5月3日(水)雨

結婚する決意をした。相手は村尾さん。秋田県立大学の同級生で、温和な人だ。東京に行く夢は諦めたが、それでいいと思う」


ミツコはページをめくった。母の人生が、この薄い紙に記録されていた。結婚し、子供を産み(それが自分)、毎日学校に通い、帰ってきて料理をして……。何の変哲もない日常が、丁寧に記されていた。


そして、最後のページ。2017年11月のことだ。


「遠山ミツコへ

私が死んだら、この家を手放していいわ。東京で頑張っているあなたに、実家のことで煩わされる必要はないから。でも、もし帰りたいと思ったら、いつでもここはあなたの場所よ。私はどこかに行ってしまうけど、この家は残るわ。白い道のように」


ミツコの手が震えた。「白い道」とは何だろう? 庭の雪道を指しているのだろうか。それとも……。


4・新しい旅


夕暮れ時、ミツコは庭に出た。雪はまだ降っている。梅の木の下に、白い道のようなものができていた。母がよく歩いていた道だ。


「おかえり」


ミツコはまた呟いた。今度は、自分が自分に言っているような気もした。


東京に戻ろうか? この実家を売って、自分の生活に戻ろうか? 迷いはあった。でも、母の手紙を読み終えた今、何か変わっていた。母もまた、「旅」をしていたのだ。秋田から東京へ、そしてまた秋田へ戻る旅を。その旅の中で、母は自分自身を見つけていた。


ミツコもそうしたいと思った。東京に戻って、同じ日常を繰り返すのではなく、ここで何か新しいことを始めたい。例えば、この実家を民宿にするとか。あるいは、母がしていたように教師に戻るのか。それとも、自分が本当にやりたいことは何かを考え直すのか。


「白い道……」


雪の道を踏みしめながら、ミツコは思った。旅とは、目的地があることではない。歩き出すこと自体が、旅なのだ。母はそれを教えてくれた。この手紙を通じて、六年の時を越えて。


ミツコは家に戻り、携帯電話を取り出した。東京の上司にメールを送る。「来週から一ヶ月ほど休暇を取らせてください。実家の用事があって」


送信ボタンを押すと、画面が暗くなった。ミツコはため息をつき、窓の外を見た。雪が降っている。白い世界が広がっている。


「新しい旅だな……」


ミツコは呟いた。今度は、秋田から始まる旅を。母が残してくれたこの白い道を、自分の足で歩いていくのだ。

新幹線「やまびこ」が盛岡に到着するし

新幹線で来たはずなのに何故新潟から回り込んで32時間もかかってるの

移動ルートが謎すぎて笑うしかないです。


【改修決定】少し手を加えて移動ルートをしっかり練り直させよう。。。。

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