呪いの代価
「な、何故お前がここにいるっ!?」
静寂の夜に男の声だけが響き渡る。
何故って言われてもな…
「お前を追いかけてきただけだけど」
「違うっ!そういう事ではないっ」
じゃあどういう事だよ
「俺はお前を殺すための呪いを付与したはずだ。何故動く事が出来るっ!?」
あ、そっちか
「何故も何も俺に呪いは効かねーぞ」
「そんなわけがないっ!あの呪いは神にも効くように改良したもの。死にはせずとも弱体化して動けなくなるはずなのに…」
なるほど、神に効く呪いか……
「はぁぁ、お前は何も分かってねーんだな」
「俺の何が分かってないと言うのだっ!」
「神っつう存在は呪いっていう概念が効かないんだよ」
さっきまで騒がしかった男は絶句してる。それもそのはず今の一言で今までの頑張り全否定だからな。
「呪いみたいな状態異常は魔か人にしか効かねーんだよ。神は体から造りが違うからな。だからどんな強力な呪いも無効にされる」
「そ、そんな馬鹿な事があるか!それなら我等は…」
「……大体、今この世界にいる神は俺だけなんだぞ。俺の協力なしで神殺しの呪いは作れんだろう。何を根拠に神殺しなんてもんを作れたと錯覚してたんだ?」
男は相当にショックだったらしい。だが余程俺が憎いのか、生気がなくなった顔で睨んでる。
………俺ここ最近は恨まれる事してないんだけど、むしろ俺の方が恨んでいるんだけど。
「………まぁいい、それでお前はどうされたい?」
「………どうされたいとは」
「決まってるだろ。どう殺されたい?」
男は警戒して距離をとる。俺は一瞬で空いた距離を詰めて男の胸ぐらを掴む。
「おいおい逃げんなよ。ただ殺し方を選ばせただけだろ」
男は右手で懐から二枚の札をだす。
「急急如律令っ!」
そう唱えると一枚の札からは大量のカラス、二枚目の札からは紫電を纏った白い虎が出てきた。
………なるほどねえ呪いに札に式神か
「お前陰陽師だったのか」
「そいつを殺せぇぇ!」
カラスは口から闇魔法を、虎は全身に纏う紫電を俺めがけて放ってきた。
うーんこのままじゃご主人様も巻き込むけど……と思っていたら男が人型の札に変わってるんだけど
チッ逃げたな
とりあえずまずは式神をなんとかしないとな
「消えろ」
そう呟くと式神も闇魔法も紫電も綺麗さっぱり消え去った。
全くこんな式神程度で俺を殺せると思っているんかねぇ
「さて、アイツはどこにいったのかなっと」
ふんふん、本体はここから数キロ先にある山の頂上にいるのか。…また逃げられてもめんどくさいしここでやるか。
「殺すとは言ったけど一回目は片手と片足で許してやるよ陰陽師」
ーーーー男こと陰陽師は恐怖に顔を歪めていた。
ありえない。こんなことはありえない。まさか呪いが効かないなんて……
あの呪いはあの方にも効いたはずなのに。
それに八咫烏と白虎も瞬殺されるとは……
どうするどうするどうするどうするどうするっ!
このまま式神を送り続けるか?いやアイツにはかすり傷も与えられない。なら一度撤退してこの事を報告した方がいい。
「戻ってあの方に伝えないと……て、あれ?」
気づいたら地面とキスをしていた。……なんが起きた?俺はさっきまで立っていたはずだ。何故倒れてる?
「早く行かないと」
だけど立とうとしても上手く立てない。その時やっと気づいた。自分の左足が太ももから先が無くなっていた。
何をされた?俺は攻撃をうけたのか?どこから?隠密の結界を張っているのに?
不気味なことに痛みはない。まるで最初から左足がなかったような感じだ。
再び立とうとしても上手く立てない。右手も肘から先が無くなっていた。
この時初めて自分がした事を理解した。
「神に手を出した事自体が間違っていたか……」




