マージャ・アンの誘惑
――猛烈に照り付ける日差しが待ち受け、じりじりと肌を焦がし、あたりを熱気で包み込む。それほど湿度はないのでそこそこは快適に過ごせる模様だ
「今度はどこへ落っこちるのやら…とと?なんだか今度はずいぶん広い所へ出ましたわね」
「何もないな」
「見晴らしがいいですー」
「ついこう走り出したくなる風景だ」
「明るい…広い…怖い…」
一行は背後や周囲を警戒しながら、しばらく歩き続ける
「眩しい…、日差しがキツイ・・・なかなかに暑いなここは、ちょっと歩いただけで日焼けしてしまったぞ」
「私は別にいつも通りだ」
褐色キャラのチャンドラ
「日焼け対策バッチリです」
帽子とローブで完全防備のアントラ
「淑女のたしなみ」
日焼け対策グッズで両手があふれるテレス
「メイドに日焼けは無縁ですわ」
確かに日焼けしたメイドなど見たことがないな、ジャミラ
アキラからの明らかなこれまでと違う目線がリリーに刺さっては抜け刺さっては抜ける
「どうした?んんぅ?アキラはこういうのが好みなのか・・・?」
「いやそういうわけでは・・・すごく目新しいというか新しい発見があるというか目覚めたというか・・・」
「そうかそうかアキラは私のことが嫌いなのだナ(きゅん)」
「そんなこといってないよー」
「フン知らないぞ(きゅん)」
「おや崖っぷちの行き止まりですわ」
「どうやらぐるりと続いているようだが」
「どこかで降りられる場所を探そう」
だが歩けども歩けども切り立った崖が続き、そうそう下には降りられない
「疲れたー」
「のど乾いたー」
「ねーアンバサー」
「ハイハイ、今お出ししま…おや、こちらは水でしたわ」
「甘いの欲しー」
「これが最後のアンバサですわ。これをこうして…」
一本のアンバサを水で割り、5人、いや6人分に
「大事に飲むのですよ」
ただでさえ薄いアンバサを水で割るとか、もうそれ貧しいを通り越して、帰ってきた世紀末だろ……!ああボクは今、猛烈に救世主が欲しい!世紀末救世主が!
「「「「「ホワチャー、デヤァー、トォー、シャオー、ウワチャー」」」」」
「なんだ、どこからかなにか奇妙な声が聞こえてくる!」
「あそこ!崖の下に人影が!」
怪しげな集会を開く怪しげな5人の影、茶色いフードを被った人物が何か四角い台を囲んであやしげな呪文を唱えながら儀式のようなことをやっている
カリカリ、カリ、オヤ、ヒダリッパ、ウーピン、ドラドラ~×4、……チー、ポン、ロン・・・
「「「「「ホワチャー、デヤァー、トォー、シャオー、ウワチャー」」」」」
重なる奇声が度重なる
ガッシャー!ジャラジャラジャラジャラ
「いったいどこの蛮族の儀式なんだ」 リリー
「座ったまま全然動かないぞ」 チャンドラ
「なんかここ煙たくない?」 アントラ
じっと卓を見つめているのを見つけてジャミラがつぶやく
「一人余っているのはなんなんですの?」
「さだめだ・・・」 テレス
その影達に気づかれるアキラ
一斉に振り向く影
「誰っ!?」
リリーがかばって前に出る、そして崖の上に一人身をさらして一喝するリリー
「乾いた体が求める時、一口で身体を癒し心まで潤す、人、それを清涼という」
「な、何者だ!」
「貴様らに名乗る名前はないっ!とうっ!」
「え?今の何?どういうこと?」 アキラ、
「わからんのか姫の心意気を!私は感動した!タァッ!」 チャンドラ、
「姫様かっこいい!まくまく、もくもく、けーむけむ!」 アントラ、(煙幕魔法)
「名乗ったほうが失礼がないと思うのですが」 ジャミラ、
「これがクロノスの流儀!」 テレス、
着地と同時にあたりに煙が立ちこめる。相手に容易に姿をさらさない煙幕魔法、アントラのナイスプレーである
立ちこめるもやが晴れたとき、意外にもフレンドリーな声が飛ぶ
「なーんだ、同い年くらいじゃん!」
「変な事言うから、年上かと思っちゃったし」
「変ではない、かっこいい台詞なのだ(きゅん)」
「ねえ、なんでそんな恰好してるの?」 アキラ
「あ、これ?」
「ここあんまし日影がないんだよねー、だからフードかぶってんの」
「でも、さすがにあっつい!」
「脱ぐかー!」
「しゃーなし!」
ドバッと脱ぎ捨てると、下からは仙女のようなひらひらとした襟がついた華服の衣に際どいラインのチャイナドレスをまとった銀髪赤目の褐色少女たち、いや、ギャル!!!!!
何かを首にかけているぞ?!
「あ、これ?ブランブランの奴、チョーおすすめ」
「あたしもうーロークマンのファンウェアとかほしいレベル」
「うける、ゴリマッチョじゃん」
「うせー!」
「ししし」
「そっちがどっから来たのか知らんけど、ウチらはーサイバーボットってーの」
「そっちの二人はホントは別のサークルでデストロイド、なんだけど、二人はまあまあ仲悪い」
「なーんかあったらすーぐ、お許しください!とか、この愚か者め!とかやってんだけど、もうあきちゃったしー」
「なんだかんだあってもー?結局ウチら結構いっしょにワイワイやってんの、仲いーでしょ!」
「で、ここマジで暑すぎてやってられなくなって、チューゲンの覇者なんかやってられっか―ってことで一致」
「そんなこんなでずっとダラダラしてたんだけどー」
「チューゲン?」
「このだだっ広いなんもないとこの名前―」
「チョーダサい田舎―↓」
「でも、ここで一番になると、なんか天下とれるんだってー↑」
「一応、ウチらもちょっとそーゆーの興味あるしー?」
「じゃー、やっぱこれで決めようってことになったの」
「これって?」
「マージャ・アン。知らない?」
「マージャ・アン?」 アキラ
「え?知らないの?」
「デジマ?」
「人生損してるよ?」
「一晩中、徹アンやってるとねー、謎の力が湧いてくるんだしー」
「怪しいよ、それ絶対」 アキラ
「みんなで幸せになろうよ」 テレス
「ねー君―、男の子でしょー?!」
がばっとおぶさっていじくりにかかるギャルたち
「ガ・ン・バ・ッ・テ!お姉さんたちが全部、優しく教えてア・ゲ・ル」
「ホラ手を貸して、ここ、ここをつまんで、イやんじょうず」
「コ・コ。ココにソレを入れてェ・・・」
「鳴いてもいいんだよ?鳴いちゃう?鳴かないの?えらぁい!」
「ほらほら、だんだんアガってきた!」
「「「「「アッ!出た出た出た出た出たー―!!!!!」」」」」
「ほらぁ、気持ちーでしょぉ?!」
「ぇえ、ぁあ、ぅうん、まあぁね・・・」
「そっちのお嬢さんたちはどうぉ?」
「うちらソッチもいけるよぉ?」
絡めるような指使いでサインを送りながら挑発するギャルたち
「フン!そんな叡智にかまけているような悠長な暇はない!こっちはあちこち追い回されて大変なんだぞ、そんな一部始終をともにしながら、私の気持ちも知らないで会ったばかりの女と親しくして!アキラは!アキラが悪いんだぞ!(きゅん)」
「ご、誤解だよ」
「大体、半荘するだけで1時間はかかるだろうが!(どや)」
「なにそれくわしー」
「あやしー」
「しゅ、淑女の嗜みだ……!決してリー即全ツッパなどしない!(きゅん)」
「あ、カモじゃ〜ん!」
「カモがいるしー!」
「カーモカーモ、くぇくぇ」
千点棒を鼻下にはさんで煽りをいれるギャル
「なにー!勝負するか!!」
チャッキッ!4つの牌から東を積もる
「親だ!いくぞー!この半荘に、東2局は来ない!」
カチャカチャカチャカチャ、チャッチャッチャッ、ズラララララララッ!スチャ!
「ダ・ブ・ル・リー……!」
ガシッ!チャンドラに肩を掴んで止められる
「あンた、背中が煤けてるぜ……」
「なにっ、あっ後ろ?!あれは!!いつの間に?」
「あれはアンバサゲート!」
「ずいぶん遠いな・・・」
「私たちがやって来た方のアンバサゲートは・・・消えてしまいましたが」
「なんか今、黒いものが落ちてきましたー」
「アッ!」
「どうしたチャンドラ!」
「ブーツのひもが切れた…何か悪い予感がする」 チャンドラ
「もう、無視すんなしー」
「貴人、敬うべき〜!」
「ブーブー」