ムゲンの力
――時は夕方から夜に
カラスに乗って大空からやってくるシノービたち
罠だったはずの泉の様子を不審に思い調べた結果、別の世界に通じていることを知り、リリー達が逃げおおせたことを知って追いかけてきたのだ
「大ガラスの術、覚えといてよかったー」
「見つけといてよかった秘伝の絵巻」
「ぶっつけ本番にしては上々じゃない?いやまさか空の上に落っことされるとはねー」
「クーッ、アンバサはいつ飲んでもいい!お前もどうだ駆け付け一杯」
「いえ滅相もない」
「遠慮するな、くいっといけ、くいっと」
「は、では恐れながら少しだけ」
声をトーンを頭が変える
「貴様ら、見たかあの力」
「ええ、この目で」
「はっきりと」
「くっきりと」
「しかと」
「あの力さえあれば、もはや里を守るだけに終始し、平日も週末もない日々を過ごす必要もない、こちらから外へ打って出て、我らこそが天下を取るのだ!!」
「おお」
「天下を」
「我々が」
「殺る」
ニヤリ!!と笑う名無し
「行くぞ者ども!」
「応!!!!」
泡と消え去るカラスから、ムササビの術でひらりと飛び降り、爆煙の中に降り立つシノービたち
聞けい!
あたりに響き渡る大音声、発声の圧力で一瞬に吹き飛ぶ硝煙、土煙、一瞬の静寂が訪れたその刹那であった!一節の名乗りが辺り一面を揺るがす!
「夜空に星がわななく影で(無)」
「百鬼夜行の去来する!(下)」
「里から里へ鳴く声の(中)」
「哀を叫んで苦渋の始末!(上)」
「忍者隠形、シノービが!(頭)」
「「「「「押しかけ参って、今、推参!!!!!(全員)」」」」」
「この地のすべてをいただく!すべてを!カカカカカカカ!」
「「「「・・・カカカカカカカ!!!!」」」」
(今日はカの日だったか!!!!)
「かかれ!弱ったものから順に仕留めろ!」
「なっ卑怯な!騎士道の風上にもおけん無法の輩め!」
「お前らは後回しよ!」
リリー達の横をすり抜けて無視して進み、一直線に機械生命体を始末せんと向かうシノービ達
「くたばれカラクリ人形!
「ガラクタ風情が!」
「傀儡にもならんわ!」
「奇怪な姿もこれでおしまいよ!」
「今鉄くずにしてやる!」
エネルギー切れで動けないところを、まさに必殺の忍術殺法でとどめを刺される三色ロボ
「わが生涯に一片の悔いなし!!」 レッダー
「だからドリルはやめろと言ったんだ・・・」 ブラオ
「あたくしはだめでした。あたくしこそは…孤独だわ!!」 ジョーヌ
死亡確認!
「これで貴様らの力は我らのものよ!」
「なんという非道!なんという卑劣!――チャンス、これはチャンスですよ!――敵とはいえこの無念を晴らすためにも、今は逃げるのです!この隙に、ビルの谷間の暗闇に!」 ジャミラ
「スパイダマ!」 テレス
「クゥッ・・・行くぞ!」
迷路のようなメトロポリスの中を必死に逃げ惑うアキラ一行(VS複製人間の演出)
奥の小部屋に逃げ込んで隠れたと思ったらそこはエレベーターで最上階の展望室へ
遠く街の中央に青白く光るひときわ高いタワーが見える
「見ろ、あそこだけ光っているぞ」
「誰かいるかもしれない」
「誰かいたほうが危ないのでは?」
「話くらいはできるだろう・・・いくぞ、こっちだ!」
ガラスチューブのような通路を歩き走りとちゅうで滑ってすべり降りて、転げ落ちた先からこっそりこっそり物陰からのぞきながら、光の方に向かっていくアキラ達
あそこだ
あれは・・・謎の光の元にふらふらと吸い寄せられる一同
そこには大小二本の角のようなものが生えた小さな女の子が一人。まるでそれが二本あることを見せつけているかのように角はクルクルと回っている。向けられる視線に対して常に二本見えるような角度で止まるのだ
知っていたかのように、リリー達の方へとごく自然に視線を向けたその小さな人影は穏やかな声で声をかける
「ようこそみなさん・・・私はプルト、ここ完全機械化都市、メトロの大使を務めています」
「大使?」
「リリー様と同じくらいえらい方のことですよ、リリー様」
「あなたがたのことはすべて知っています。市民たちの非礼、お詫びいたします」
「ああ、本当に無礼だった」
「リリー様ぁっ!!!」
「私は大丈夫だが・・・アキラが死ぬところだったんだぞ!」
「いや、別に死ぬほどでは・・・」
「これが駆け引きというものだ(どやぁ)、少し黙っておけ(きゅん)んんっ、だが、そちらの三人もあの様子では無事ではすまないようだが?」
「構いません、彼女たちなら大丈夫でしょう」
「そうかなあ?」
「アンバサを求めてここに来たのでしょう?」
「その後ろの光っている滝のような結晶が…」
「そうアンバサ、無限に増殖する結晶、この世界のすべての命の源、永遠のエネルギー」
――トロンとした肌触りに、かすかに弾ける微炭酸。それが混ざり合い体の中で華麗なダンスがはねるような極上のエナジーを感じさせる乳白色の結晶、何よりも甘く体全体に伝わる滑らかさ、これこそアンバサ・・・
「あぁッンンっ」
尻から大きなアンプル型の結晶を容器として使い、刺し入れて恍惚の表情を浮かべるプルト
「そうやって飲むの?!」
「生身のあなた方とは少し違うのです」
「少しか?」
「リリーざまぁっ!」
「どうなさいますか、これから・・・黒装束の輩と戦うもよし、元の世界へ帰るもよし・・・」
「プルト!客との戯言はやめろ。話をすることなどない、このわたしに任せおけ」
「お前は!!??」
「00∞(ゼロゼロムゲン)、メトロの平和、その最後の砦だ」
「やはり黙って通してはもらえないようだな」
「その通り、生身のお前たちさえいなくなれば、このメトロは再び平穏に包まれる」
「まるで私たちがすべて悪いかのような言い草だな」
「その通りだ」
「何っ!?」
「生の生き物など不快千万腐乱腐臭、腐敗痛快怪物燻製!」
「言葉の意味はわからんが、とにかくすごい罵倒だ!」
「ついに実現したこの理想郷に現れたおぞましき生霊たちよ、天に召されることなく、地の底、地獄の淵に沈むがいい!!私の全身に備わった9つのアンバサエンジンが今、お前たちに向かい火を吹き、炎を上げ、紅蓮の刃と化す!!!ゼロゼロムゲン、征くぞ!!」
「アンバサワン!」
その超能力は全員をたちまちのうちに金縛りにする
「ぐあああぁぁあぁあっ!動けないっ!」
「アンバサツー!」
ジェット飛行能力で周囲を高速で飛び回るゼロゼロムゲン
「フフフ、生身の目には捉えられまいっ!」
「アンバサスリー!」
さて奴らの弱点は・・・アキラをかばうリリーの様子が瞬時に把握される。なるほど弱点はそこか、ならば!
「アンバサフォー!」
全身のハッチが開きあらゆる武装武器の数々が過剰なまでに現れ牙をむく、フルオープンアタック!両腕のダブルガトリングガンの質量はもはや出所不明だ!
「耐えるか?!ならば!」
「アンバサファイブ!」
「この柱で!」
打って変わって百万人力のパワーが、ムゲンの身体に満ち満ちる!タワー内部の大聖堂の柱を引き剥がしてリリー達に叩きつけ、叩きのめし、なぎ払う!
「アンバサシックス!」
生身であればひとたまりもあるまい!口から放射される火炎放射の温度は10万℃
「アンバサセブン!」
「痛めつけたあとの搦め手で緩急つけてやろう・・・変身!」
「ほらアキラ、私のパンツを見たくないか?ふふふ」 偽物リリー
「え?そんな…急に言われても」
フラフラと足を迷わせるアキラ
「アキラ!今日の私のパンツの色は!」 本物リリー
「今日は見てないって!はっ、じゃあこっちのリリーは?」
「昨日は見せたのですか!」 ジャミラ
「コゲコゲで痛いです姫様―」
「ひとまずそこのアクアリウムに飛び込め、水中呼吸の魔法は頼んだぞアントラ!」
「はいですー、ブボゴボボボボボ」
「そんな所に逃げても無駄よ!」
「アンバサエイト!水中殺法!」
サメの背びれのようなカッターが水中で四方八方から襲いかかる
「ダメだ!飛び出せ!逃げろ!逃げるのだ!」
「逃げられるものか!」
「アンバサナイン!」
加速装置!ムゲンが奥歯をかみしめる!カチッ
瞬時に追い詰められるリリー達
「さて、それではお前たちの能力は…?まさか逃げの一手だけというんじゃないだろうな。あとはどんな力をもってるんだ?」
「あ、あとは・・・アンバサだけだ!」
腰の水筒のアンバサを一気に飲み干す5人とひとり
その結果、たちまち謎のやる気に満ちあふれる5人とひとり
「なんだかわからんがとにかくやるぞ!」
「ああ!逃げの一手だ!」
とにかく逃げる5人と一人、キーン!!!!!アラレちゃん走りだ
追いかけるムゲン
「加速装置!・・・おかしい、追いつけん加速装置の故障か?ならば!超能力で足止めを・・・おうっぷ。」
アンバサが活性化し過ぎて炭酸が体中ではじけ、吐いてしまうムゲン
「空を飛べば・・・!」プスンプスン
アンバサの炭酸を圧縮利用した飛行能力は極端に燃費が悪く、飛び上がったものの落下してしまう
「見失ったか、だがこちらのレーダーからは逃れられまいっ・・・何っ!アンバサの炭酸が弾ける音も捉えられるこのレーダーがホワイトアウトしている!相手のアンバサ量が多すぎるということか!何も見えん、何も聞こえん!こうなったらミサイルで辺り一面を灰にしてくれる!何ッ、弾丸切れだとっ!では怪力でビルごとなぎ倒して・・・いかん、アンバサスチームの力をこれ以上使うわけには!このままでは基本動作にまで負担がかかってしまうぞ!クッ、火炎も無理か!高熱で体内のアンバサが沸騰して・・・、いかんアンバサが蒸発する!変身能力も、アンバサを頭から被らなければと変身できないっ!こうもアンバサが少なくてはそんな余裕はない!水中能力は!配水管を破壊して辺り一面をアンバサで満たせば・・・いや、すでにさっきの攻撃の余波で地下のパイプに穴が開いてしまった、この手は使えない…やはり頼みの綱は、加速装置か!ああ、アンバサの炭酸が抜けてパワーが足りない!いやそもそもアンバサの炭酸の絶対量が足りない!圧縮力がなければ加速もできんとは・・・!」
――鬼ごっこの果てについに倒れるムゲン
「や、やったぞ」
「結局、戻ってきてしまったが」
「まだ、こちらは話の分かる相手のはず」
「お願いだ!元の世界に戻るほうほ・・・」
ガシャン!
そこへ、ボロボロになったパーカーと荒ぶったマフラー姿で現れるレッダーロボ、ブラオロボ、ジョーヌロボ
「生身の人間を迎え入れるだと!どういうことだ!説明しろ!ババア!」
「いいでしょう、教えましょう。この世界は滅びます」
「何ぃ?」
「そんな馬鹿な!」
「この理想郷が?!」
「アンバサさえあれば無限に続くはずのこの世界がなぜ?ま、まさか大使!アンバサが、アンバサがこの世から失われるというのですか!」 ムゲン
「いいえ、我々だけの問題ではないのです。アンバサに関わるものそのすべ――」
「―――殺ったぞ・・・!」
伸びる影から影が伸び放たれる、うがつは伸びる蛇九ナイフ。鎖付きのくないが両手で8本!止め!片足で1本!合計9本!背中から体を、そして後頭部から額を貫く!!
「おしゃべり上手な人形だったが、それが仇となったなあ (名無し)」
「「「「プルト様!!」」」」
「お前にしてはよくやったぞ、落第忍者。さあ、こやつがこの世界の中心だと言うことは調べがついている」
「どういうことだ!」 リリー
「もはや、こやつらの力は、すべて我らのものということよ!」
凍った泡のように砕け散っていくロボたち
「我ら完全生命体が」
「生ものどもに」
「よもやよもやですわ」
「馬鹿な、ありえない・・・」
「これが定め・・・あなた方も……いず、れ」
グシャア・・・!!!!!
踏みつぶされるプルトの頭
「クックックックックックック」(名無し)
一斉に崩落、崩壊が始まるメトロの世界
崩れ落ちるアンバサ結晶の内部に白い膜 アンバサゲート が現れる
「出たぞ、白いネバネバだ」
「そろそろお仕置きが溜まっていますね♡リリー様」
「いうほどネバネバしてないよな」
「むしろトロっとして水っぽい?」
「そういう日もある…らしい」
慌てて駆け込みながらも、口々になんやかんや言いながら、アンバサゲートに飛び込んでいく一行