シノービの里
――どこか遠く、薄暗い森の中の庵で
トロリとした舌触り…
そしてほのかな微発泡…
それらが相まって口の中で優雅な踊りと化すような無上の膨らみ
それを感じさせる乳色の混じりあい
何よりも甘さと舌全体の心地よさ・・・
「「「「これぞアンバサよ」」」」
そこにはアンバサで酒盛り、敦盛ならぬ、そうアン盛をしている忍者たちがいた
櫓の屋根の上には階下の喧騒をよそに所在なげに見張りをしているくノ一が一人。――ふと、上を見上げると、そこには白く光を放ちながらゆっくりと空から落ちてくる少年の姿が!受け止めるは名無しの忍者
「御頭!空から男の子が!」
気を失っているアキラを、仲間のいる庵へとアキラを運んでいく名無し。そして、運ばれてきたアキラの姿に驚く、くノ一たち
「男子禁制のこの里に!」 頭
「よもや男が!」 上
「この僥倖…」 中
「逃すわけにはいかん!」 下
「ふふふ…」 名無し
庵の奥に運び入れ、横たわるアキラを取り囲むくノ一たち
「さてどうやって」 頭
「籠絡し」 上
「しゃぶり物にし」 中
「食べ尽くすか」 下
「まずは追い詰めるところから」 名無し
ちょっと重く匂う感じのせんべい布団で目を覚ましてあたりを見まわしたアキラ。なにか性的な意味でギラギラとした目に囲まれている――!
「なんだかよくわからんけど猛烈に悪い予感がしてきたなあ・・・」
飛び起きて外の灯りの方へと逃げ出すアキラ、だが、相手は忍者、雑に投げられた手裏剣で行き先をコントロールされ、すぐに壁際に追い詰められる。立ち上がって拳を握りしめ、ジリっと待ち構えて、怪しんで相手をにらむアキラ
「ほお、」
「ふうん、」
「へえ、」
「あは、」
「ふ、」
「いい目をしているな、それに度胸もいい…ますます気に入ったよ」 頭
「えっ?いや・・・今はなんとか逃げないと」
半開きの戸口に向かって駆け込むアキラ。周囲を囲い込まれたアキラだったが、思わず名無しを突き飛ばしてしまう
「ぁ・・・いたぁ~っ!」
なまめかしいくノ一の肢体が屋内の間接照明に照らされ妖しい魅力を解き放つ!上目遣いで蠱惑的につぶやく名無しのくノ一
「ひどぉぃ・・・」
「いや・・・ゴメン!」
逃げ出すアキラ
だが、突き飛ばされたフリをして、わざと逃がしたことには誰も気づかない。アキラの背中を目で追う名無し
「何をしている!追うぞ!我らの自身の名にかけて!」
「覚えておけ、狙った獲物は必ず奪う神出鬼没の大忍者、それがこの我らオビ・ワン・シノービ!!」
「落っこちたと思ったらアキラがおらんではないか、アキラが!いきなりはぐれる案内人があるか!(どや)まったくなっとらんぞまったく(きゅん)」
白い円膜――アンバサゲートを通りぬけた先、そこは怪しい雰囲気の薄暗い森の中であった、山か里かはたまた闇の中なのか
「おい、これは」
「これは・・・ちょっと」
「思ってたのと、違―う」
「・・・魔界村」
「皆さん失礼ですよ、初めてお邪魔させていただいたお宅に対して、こうもう少し、丁寧な表現をなさってくださいな、辛気くさいとか陰気くさいとかかび臭いとかケモノ臭いとか。
「・・・ジャミラ」
「いくらなんでも」
「ひどーい」
「・・・源平討魔伝もかくや」
「なっ、ワタクシは決してそのような・・・」
「とにかく闇雲に進むぞ!ついてこい!お~いアキラー、道がわからんではないかー、早く出てこーい」
「さもないと、メッタメタのギッタンギッタンにするぞー」 チャンドラ
「あいさつの魔法とかかけちゃうよー」 アントラ
「迷宮組曲・・・」 テレス
「出て来ないとおやつ抜き……ハッツ、これは!叡智!!」
ジャミラの髪の毛が激しく鋭く針のように突き立つ!
くノ一の放つ叡智なエナジーを察知して逆立つ叡智アンテナ。叡智アンテナとは、叡智の波動を敏感に察知し、その方向や距離、叡智度の高さまで図ることができるすぐれものなのだ!
「そう遠くではありません、こちらですわ」
「・・・あ、いた!」
何やら走っているアキラの後ろ姿を目ざとく見つけるリリー
「おい待て!何をしている、逃げるな!」
広場で出会う5人と一人
「あッ、リリー、逃げて!」
「何?!」
サブロウの口笛だ!
「ヒュイユーヒユィユー↓」
「な、なんだ!?」
サブロウの口笛だ!
「ヒュイユーヒューイヒヒュヒュヒュー→」
木々の間を小気味よく駆け巡る、影、そしてリズムよく飛び交う手裏剣!
一つ二つ・・・五つ!見えたぞ!そこだ!
手裏剣が飛んできた方向と逆の左手に向かって腰のナイフを投げるリリー
見事怪しい影に突き刺さったかと思ったその瞬間!
「ふ、残像だ・・・」
目の前にぬっと現れる謎の人影
そして瞬く間にバク転、反転、月面宙返りで距離をとって居並ぶ5人
忍者の左目には共通の、逆への字型の索敵端末があった。イヤーカフから伸びるそれは、アクセサリー的にも用いられ、戦闘時には左耳の上に収納できる優れものだ
アキラを一瞥して吐き捨てるシノービのお頭
「アンバサ力…たったの5か…ゴミめ…」
「女に恥をかかせたなあ…少年!」
病んでいる、病んでいる、逆恨みもいいところである
「我らこの里を守る隠形の忍び衆、オビ・ワン・シノービ!」
「シノービ?!」
「その頭領オリュウ」
「上忍オヒデ」
「中忍オユウ」
「下忍オマサ」
「・・・・・・」 名無し
残りの方は???
「ふ、ただの名無しよ」
「我らの力の源、白き泉を荒しにやってきた輩か」
「白き泉?」
「そうだ貴様らの目論見」 頭
「腹積もり」 上
「目的などは重々承知」 中
「百も承知」 下
「承知千万つかまつったぁ!!!!!」 名無し
「どうしましょう、かなり盛り上がっておいでですが、お話が通じない感じでしてよ?」
「シノービの掟、思い知れ!」
「アンバサの泉を荒らすもの!」
「何人たりとも容赦はしない!」
「いざ尋常にお命ちょうだい!」
「・・・参る!」
「かかれ!」
「「「「ハァッ!!!!」」」」
周囲を高速で旋回、まさに旋回しながら、なおも口上が続く
「我ら孤影にうつろいて、死して屍拾うものなし!」(お頭)
「死して屍拾うものなし !!!!!」(全員)
アキラを背にかばい囲んで、ドラン対シノービ、5対5の戦闘が始まる
「貴様ら、私がドラン王家の王女と知っての狼藉か!」
小さくもキラキラ輝くティアラを目ざとく見つけるシノービ
「確かに、小ぎれいな姿よの」
「見受け金の支払いもよさそうだ」
ジャミラとチャンドラの様子を見て
「小汚いのも混じっているが」
アントラとテレスの方を見て
「仕込めばものになりそうな」
「「「「「いざ、お命頂戴!」」」」」
頭とリリ―が一対一で対峙する
「ふむ、その腰の物、さては洋刀、レイピアというやつか?」
「ふ・・・いや、ただのビニール傘だ!」
「な・・・我らを馬鹿にしおって!ゆるさん!・・・と、その前に一つ聞いておこう」
「なんだ、臆したかぁ?」
「その傘は一体どうしたのだ!?」
親指でアキラを刺しながら自慢げにこう言い放つリリー
「こんなこともあろうかと、アキラのところのコンビニで借りてきたのだ!」
「キサマ!民草から盗みを働くとはそれでも王族か?!」
「盗んだのではない!ちょっと借りているだけだ!!(きゅん)それにしても・・・どうだ?すごい透明感だろう?!」
周りの者にビニールの傘布をチラ見せするリリー
「すごーい、透けてるー」
「スケスケじゃないか」
「エッチスケッチワンタッチ」
「皆さん、盛り上がり方が叡智ですよ叡智!」
ハッツ!テレサが傘に向かって天から降りてきた呪文を唱える
「ロボマグネ…ロボマグネ…ロボマグネ…ガ・キーン!」
これは・・・マグネットコーティングだ!
「これで万事OKだわ・・・」
借りているなどと、妙に拗ねてだだをこねて言い訳をするリリーに激怒するお頭
「ゆるせん…こういう輩が!一番許せん!ああいつもそうだ!都合のいい時だけ他人を使い必要なくなったらゴミのように捨て去る。そんな連中を何人も見てきた!今こそ鳴け!爆連鎖!不逞不遜の不埒三昧、世迷言の輩に怨の一文字刻む時だ!」
傘先を伸ばした左手で受け、右手を柄を握りこみ、水平に構えるリリー
「いいだろう・・・鋼の牙、逆鱗牙!相手になってやる」
「私のためアキ・・・んんっつ!アンバサのため、敵の野望を打ち砕く、大胆リリー!!
この逆鱗のわななきを恐れぬのなら、あ、かかってこい!!!」
「爆連鎖、重連無量!」
爆発する車輪すなわち爆輪を十個同時に放つ、必殺の技がリリーに迫る!
だが、リリーは傘を開いてクルクルと器用に回し、十個すべての爆連鎖を受け止め巻き取って閉じて傘をたたむ。そして!
「ゆくぞ!爆槍、逆鱗牙!逆鱗の力を借りて!今、必殺の!バン!アターック!!」
バン!と相手に向けて全力で傘を突き出すリリー
するり後ろへとスライドステップしてかわす、お頭
「ふ…この程度のワザ、そして己が爆連鎖の借りを易々と受けると思うたか」
ニヤリ…リリーが不敵に笑う
バン!と突き出された傘が、バン!バンとワンタッチでと開く!同時にバンと起爆する!
何?!
爆発ッ!
爆風で吹っ飛ばされるお頭
「おのれちょこざいな!ならば!爆連鎖、百連無量!己のレアリティの低さを思い知るがいい!」
一進一退の攻防だが均衡はアキラを守るドランの不利
テレス対名無し
「これで白黒はっきりつけよう」
懐から折りたたみのオセロを取り出すテレス
おとなしく刃を収めて、同意する名無し
「ふ、いいだろう」
オセロで戦うテレスと名無し。早々と角を取られてしまうテレス
「ぬぬっそこは?!」テレス
「フフフ…、勝ったな」
勝利を確信する名無し、だが一瞬にして、序盤優勢からみごとにひっくり返されて驚く名無し
「バカな、あり得ない!」
ジャミラ対下忍
「お、お互い宮仕えする者同士・・・ここはひとつ穏便にいきませんこと?」
「やかましいわ、少しは打ってきたらどうだ?!」
攻撃という攻撃をすべて器用にかわすジャミラ
だが、ギリギリのところでかわし続けた伸び縮みする蛇連剣の攻撃が、ジャミラの衣服にダメージをあたえ、ビキニメイド要素が、マイクロビキニメイド要素に変わっていく!
突き立つ叡智アンテナ!
「キサマ何者だ!」
「フフッ、ただのメイドですわぁん」
アントラ対中忍
飛び交う三本の爪が針となり、また三本と重なり、アントラに襲いかかる!
「いた!今チクっとした!」
「飛来針…参る……」
腕を振り上腕から手の甲の発射位置へと次弾を装填する中忍!
「ひらいしん?あ~あのお城のてっぺんにあるー」
「それじゃあ…」
ここ一番の悪い笑顔!をみせるアントラ!
どこかの凄腕敏腕腕利き女社長のような凄味と隠しきれない愛嬌のあるそれでいてハードボイルドな笑み!
「電撃魔法はお好きかしらぁ↑?」
「ピリピリ感じるこの空気、ビリビリしびれるそのお肌、バリバリ引き裂くどの身体!!!!」
バリドリーン!
!!!???
ふ・・・やれやれといった仕草を見せながら平然としている、中忍
「なななな、なっ、なんですってーーーーーー!!!???」
全く効かない
「耐電スーツ・・・忍者の常識だ」
袖を軽く引っ張って伸ばして見せる中忍
「そんなー↓わりと必殺だったのにー、でもあなたいい人ね!」
「なっ///馬鹿にして・・・!!!」
チャンドラ対旋風刃
「打っても打っても、全部ガードされる、クソッ、ディフェンスが固い!」
「最強の盾と最強の矛、その2つを重ねて合わす、それがこの旋風刃よ!」
「ただのでかい板ではないか、せいぜい鈍重に立ち回れ!」
「ふ…旋風刃!吹けよ嵐、呼べよ嵐、嵐よ叫べ、疾風忍者嵐!」
人よりも一回り大きい巨大手裏剣に刃が生え、回転させて投げつける!
「おおっと危ない!」
ひらりとかわすチャンドラ
上忍の方向へ返っていく巨大手裏剣
「そのまま真っ二つになりな!」
二つの影が交差した瞬間!スケートボードのように旋風刃に飛び乗る上忍、そして一人と一機が四方八方から、ベーゴマが相手を追い詰めるかのように、チャンドラに襲い掛かる!
「クソッ!手数が多い、さばききれるか!」
一方、リリーはどうなった!
うわぁぁーーーーーーーーーーーーーっ!
どどどどどどんんんんんん!!!!!
ぐわあっっっっ!!!!!
重練を傘で巻き取って相手に返すも、百錬の物量に押し負けてしまうリリー
「まさか逆鱗牙が敗れるとは・・・!」
「ビニール傘でよくやったほうだよ」
破れ、溶け落ち、骨が曲がり、ボロボロになった逆鱗牙
「かわいそうに逆鱗牙…」
アキラに閉じて膨らんだボロ傘を押し付けながらつぶやくリリー
「これはアキラがお店に返してきてくれ」
「…えぇ…う、うん…わ、わかった、家にあるのと交換しとくね」
「それから、今度私に…」
ん?
「私にちゃんとした傘をプレゼントしてくれ」
「鋼鉄製のやつ?うーん、そういうのはちょっと…どこに売ってるんだろ?」
「違う!もっと可愛いやつのことだ!バーカバーカ!」
次々と敗退するリリー達、逃げ惑うアキラ、アキラを連れて逃げる逃げるリリー達
乱戦の中、そんなアキラを目で追い続ける名無し
シノービの四人の俊足がリリー達に迫る!だがさらにその前を行く名無しが、前後の距離を見て取った瞬間、突然、後ろに弾き飛ばされる、否!自分で地面を蹴って後ろへと跳ねたのだ!四人の足元に倒れ伏す名無し
「申し訳、ございません・・・」
「何をしている!追え!」
吐き捨てる頭
「・・・使えぬ草よ」
名無しのトリックプレーのお陰でなんとかシノービから逃げ出す事には、成功したリリー達
「はやく、行きますわよリリー様!」
「雨が降ってきたぞ、足音が隠れる内に急げ!白い泉と言っていたが・・・あった、あったぞ、あそこだ、やはりあの白い粘膜だ!」
「お仕置きはあとにしますわ、リリー様」
「飛び込め!」
「飛び込むのか?」
「なんかちょっとやだー」
「フェードイン!」
キュピーン!キュピーン!キュピーン!キュピーン!次々と泉に消えていく一行
殿を務めるジャミラが最期に飛び込む、ドボォン!
「ちょっと!私だけ何か対応が違うのですけれども!そんなに、そんなにそこまで重たくはないつもりですわ!心外!心外ですわ!あっ!がぼぼぼぼ」
足を引っ張られ泉に沈んでいくジャミラ、無念
「馬鹿め、侵入者用に仕掛けておいた、偽の底なし泉に飛び込みおったわ――いつもと様子が違うが気のせいか?――あの世で己の愚かさを、迷妄愚昧を悔いるがいい、ふふふふふふふ・・・!!誰だ!今クククと笑ったやつは!」
「ハッ、も、申し訳ありません」
「バカ者が!あれほど笑い声は合わせろといったはずだ」
「すみません、あの・・・」
「なんだ」
「シフトがわかりにくくて、今日がどの笑い方の日だったかわからなくなっちゃうんです」
「わ、私もです、もう少しシンプルなシフトになりませんか?」
「なんだと?我ら忍びの一大事、勝ち鬨の笑いをそうやすやすと相手に気取られるようにしてなるものか!たるんどる!たるんどるぞ貴様ら!」
「せ、せめて曜日別、曜日別に分けるとか!」
「くどい!ならば、これからはこうしてやろう。一ヶ月毎日違う笑い方をすることにな!」
「えぇ、そんな!」
「ご無体な!」
「ムチャです、ムリクリです!」
「おい、おまえもなんとか言ってくれ!」
「覚える必要はないのでは・・・?」
「なに、なにをいってるんだ!」
「後でどんなお仕置きが待っているかわからないんだぞ!」
「シフトはちゃんと覚えてくれ!」
「いや・・・」
「いや?」
「ワンテンポ遅らせればよいだけでは?さすれば、今日はひひひの日だな、などとわかる次第・・・」
「て、天才かキサマ!?」
「・・・さすがに、ふははや、いひひや、うへへなどとフェイントが入ってるものには少し対応が遅れますが」