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みんなの力

二人がエントランスの自販機コーナーから飛び出す――だが

――さっきまでは普通だったのに!!

アキラと共に異様な速度で前に進んでいくガルビスの一行、恐ろしいまでの高速の動く歩道のごとく!その背中をギリギリのところで追いかけるチャンドラ

「何だ、アキラが一緒なのにこの移動速度・・・クッ、速い、このままでは追いつけない!コイツに頼むしか・・・・・・まて大丈夫か、コイツに何か頼んでも・・・?後からアキラの身柄でも要求してくるんじゃないか?そうなったら、リリー様が大変だぞ。泣くくらいですめばいいんだが・・・今でもちょっとおかしいのに、これ以上おかしくなられては困る!何より、こっちにおとがめが来て何をされるかわからんではないか!」

「――バターになるまで木の周りをぐるぐる走るのだ!」

「ええい、だがこの場はコイツに任せるしかない! ――悪いが頼みがある!」

「ム?!」

「あいつらの後をつけて欲しい、どこに向かったかだけでもかまわん!」

正体を突き止めろ、とまでは言わないチャンドラであった

「ああ任せろ!」

――アキラ……

アキラに名前を呼ばれたことを思い出してふにゃけちるオギン!風呂の底で野獣のごとく猛り昂り、アキラに襲いかかったことを今さら恥じらい、そしてアキラの、予想よりもけっこう立派だった御立派様の姿を脳裏にIMAX 3Dシアターのごとく展開しながら、やはりいま再びふにゃけちるオギン!

こ、こんなことでふにゃけていてはいかん、ふにゃけちるなオギン!お前は忍者、あの恐れられたシノービの頭領ではないか!あのようなドウェイ~ン・ジョンソ~ンから程遠い軟弱極まる男子の一体何がお前をときめかせるというのか?はっ…ときめき?私は今ときめいているのか?そんな、里に捨てられたときに、この世のすべてを捨てたはずの私が、私にまだ、まだこんな感情が残っていたなんて!ああンンッ!

思わず絶頂の予感が体を駆け巡る。酔ってない、酔ってないよ〜大丈夫だよ〜というわかりやすい酔っぱらいのあの痴態のそれとほぼ同じだ!

これでは、これではまるで、私が特殊性癖の持ち主のようではないか!いかん、いかんぞオギン!!オギン!!部下たちに示しがつかん!そうだ、あ奴らどものことを思い出せ、あ奴ら、あの影の薄いあ奴らの名前…名前何だったっけ?頭と上中下がいるはわかるのだが、はて名前…?ん……?名前…いるか?忍者だぞ?使命を果たせばそれでよし、名前などなくてもそれなりの褒美さえ渡しておけばよいではないか。あんな連中のそんなことよりもアキラだ、アキラ…ああなんて眩しい名前、明らかに私を意識している態度、私の名を呼ぶ甘い声…アキラだけは守りたい!守り抜いて、そして添い遂げたい、たとえすべてのアンバサを失っても…………アンバサは必要だな(キリッ)

この間、約3秒

「・・・…裸で出てきたんだぞ、大丈夫なのか?!」

思わず相手の身体を心配して叫ぶチャンドラ

「常に身に纏っているバニーの鎖の跡が、私の身を守ってくれる。だから着ているも同然だ!」

――これは!特殊性癖!まさか、まさか・・・重要な取引を依頼しようとしている相手が、このような特殊性癖の持ち主だったとは・・・。アキラ相手に信じられん!ウチなら断然巨体の男。映画俳優で言うと、ドウェイ~ン・ジョンソ~ンがいいのに。しかし、この女以外にこの取引を頼める相手がいないのも確かだ。使命達成のためウチはあえて、あえて社会道徳をかなぐり捨てて、見て見ぬふりをしなければ。そうなのだ、これは『超アンバサ的態度』!ウチは皆の安心と安全のため、ひとりの不幸な少年の人生をあえてあえて見て見ぬふりをするのだ。あーっ!最低だ最低だ。ウチはなんて最低なグラディエーターだ。故郷の両親よ、別れた(ピー音)よ、すれ違ったマッチョ達よ。このチャンドラの魂の選択を、笑わば笑え! ――見なかったことにしよう!

「頼んだぞ!」

「ああ!」

たちまちの内に気配もろとも消え失せるくノ一、さすがはシノービの御館、裸でも忍者

「速いな・・・」

チャンドラに驚嘆されたのもつかの間だった、向かった先の公園のグランドでやにわに立ち止まり、辺り一帯の気配を探るオギン

「見失った?バカな?先の闘いにはいなかった怪しげな輩ではあったが、そこまでとは思えんぞ?」

世界を覆った洗脳毒霧ガルビスミストがシノービの認知能力をも阻害していることに一体、誰が気づくというのか――

「おかしい、四方八方を通し見ても、気配がない、だがこの妙な感覚…まるで見られているような…ハッ、上か?!」

この世界を塞ぐ蓋のように覆い被さる天井ができていた!その天井の中心に円形の口が開き、そして閉じた一瞬を見逃すオギンではなかった!それこそは大ガルビス皇国連合艦隊、旗艦ガルビス、その第三艦橋の姿であったーー!

「よもや、あのようなところに!?先日までは何もなかったはず、いったいいつから…主殿との逢瀬にふけっていた時か?!不覚、もっと早く主殿を籠絡していれば!失態だ!だが今はこの知らせを伝えに戻るが先決、急げ!」

鎖の跡を赤く火照らせ身にまとい、くノ一忍者オギンが闇を駆ける

「今しばらくお待ち下さい、主殿!」

一本、二本、三本アンテナがリレーのようにピョコピョコ立ち上がる。だんだん反応が強くなる叡智アンテナ

「あ、戻ってこられるみたいですわ、ズズー、はーアンバサおいし」

――連れ去られた?!

「お前がいながら何ということだ!」 リリー

――ようやく鎖帷子を着たと思ったら、ガン詰めされてこれだ、やれやれ

「気が付いたときには空の上だ、どうしようもなかった」 オギン

「空の上?どうやってそんなところまで行くのだ?!ジャンプしても天井にも届かないのに!」

「私でも雲に手をかけるくらいならできるが、さっき見たのははるかその上、屋根のようなものが見えた」

「屋根?空の向こうに?」

「ああ、ここは今、鍋の蓋をされたような様子だ」

「結局、アキラを連れ戻すには、その天井までいかないといけないのだな?」

「戻ってくるかもしれないが、早めに迎えに行ったほうがいいだろう」

「どうやって?」

「みんなの力を合わせて――とか?」 オギン

ざわつく一同

「・・・名案だな!」 リリー 

「では、失礼いたします」

「ええ?ちょっと、今、みんなの力と言ったが?」

「ええ、ですから、元々私たちはアンバサ補給に来ただけですので、採取が住めば自分たちのところに戻るのが筋というもの」 プルト

「それに、みんなとは言ったけど全員とは言ってないわ!」 アッコ

「それは・・・言葉の綾ではないか!力を貸してはくれないのか?」

「ええ、おあいにく様」 ジョーヌ

「皆さん、みんなでどうぞ」 メグ

「それでは、発進する!エコドライブで行く、全機編隊、水平軸をとれ!」 ブラオ

「じゃあね、練習中の、テレポート!」 モモ

「そんな、みんなの力が・・・!」

「ウチらの力だけでもいけるっしょ!」

「大丈夫大丈夫、あんな冷たいのほっとけばいいし!」

「シノービの力、ずいぶんと過小評価されている気もするな」

「みんなを悪く言うつもりはないが、ここは全員でやりたいのだ。そうしないとアキラが帰ってこない気がするのだ」

「では私、ジャミラが説得に参りますわ、まだそれほど遠くではないでしょう。テレスさん、その様子を皆さんにお伝えしてください、頼みましたよ」

ジャミラが2つの背中を追う・・・・・・しばらくして

ジャミラの念波を受信したテレスが、皆の前でまるで小さな双子の美人姉妹が二人同時にしゃべっているかのような不思議な口調で語りだす

「ジャミラは『争いをやめて、みんなで力をあわせてアキラを誘拐犯の暴力から守ろう』と言っています」

「メトロもマジエルも、『私たちの知ったことか、勝手にしやがれ』と言っています」

「メトロはこう言っています。『我々がアキラを助ける理由はなにもない。シノービはいつも我々をいじめているではないか』」

「マジエルも『そうだそうだ』と言っています」

「ジャミラは『アキラを護るため、今までの行き掛かりはさっぱり捨てようではないか』と言っています」

「メトロもマジエルも互いに『お前が謝れ』と言っています」

「ちきしょう…分からず屋はリリー様だけじゃないんだな…」 チャンドラ

「私がどうかしたか?」

「アキラは自分だけの物じゃない。みんなの物だ。そのアキラを守るために戦うのは当たり前ではないか ! ということで話はまとまりかけています。・・・・・・やっぱりダメです・・・・・・」

「ダメですって、ダメではダメではないか!説得できておらん!ジャミラめ、アキラがかわいそうではないのか?!」

「姫様―!いくらなんでもあんまりですー!ここで私たちまでバラバラになったら誰がアキラさんを助けるんですかー!もういいですー!私一人で行きますー!」

「おい、アントラお前、ちょっと!一人でどうするというのだ、魔法使いといってもできることとできないこととがだな!?」

「違うわ・・・・私を呼ぶなら・・・・大魔道士とでも呼んでっ!――確かにあの天井まで行くのは私の力でも無理かもしれない、でもそこに着くことができたなら・・・たとえそこがどんな所でも私の魔法で入ることはできる!」

「一体どんな魔法なんだ・・・?」

「禁足地に入る魔法です」

「禁足地とは、あの100年以上誰も入ったことがないという禁断の地に足を踏み入れたと言うことか、いかん、聞かなかったことにするぞ今のは!怒られてしまう」

「でも、今必要でしょ?」

「・・・・・・わかった、見なかったことにするから頼む、やってくれ・・・」

「それで?」

「だから、みんなの力を貸して欲しい、お願い・・・お願いします!アキラを助けてください!」

「みなさん聞きましたか?」

「ええ、よく聞こえました」

「そこまで言うならいいだろ」

「よく言った」

「よろしくてよ」

「別に私たちも意地悪をしたいわけではないし?」

「そうそう、雨降って地固まるってね!」

「それにしてもよく聞こえるね、このSNSって魔法、今度教えて?」

「いいですよ、タグ付けするのにちょっとコツがいりますけど?」

「いつの間にそんなことを」

「大魔道士ですから」

――その糸目は開いていた

オギンが最後にアキラを見上げた公園に集まる全員

「では、それぞれのグループごとに別れましょう、その方が力も出るでしょうし。世界ごとにまとまってから、多段ロケット方式で一気に行きます」 アントラ

「途中で止まっちゃったら?」

「次のチームがまたそこからロケットスタートです。どこまで行けるかわかりませんが、どう見てもつるつるの天井、何か手がかりを探さないと難しいでしょう」

みんなが目指す空の中央、第三艦橋は必要に応じて擬態が施され、現在は格納されているのだった 

「じゃあ、こっちに集まって?最初が肝心よね!魔法の力なら私たちにおまかせ!いきなりギリギリまで近づけるわ、きっと!魔方陣は5枚でいいわね?」 サリー

「力の強さならその次が私たちですね、ムゲン、アンバサエンジンをフルドライブさせておきなさい」 プルト

「そんじゃー、そこからはウチらがノリノリで打ち上げるし!」

「では、我らが最後にお前たちを支援しよう、万が一にも落ちるなよ」 オギン

「我々は、決死の突入部隊!アキラ探検隊だ!」

「「「「おおー!!!!」」」」

「「ピンキー!!イヤンイヤンイヤン!!!」」 マジエル

ドドンンンッ!!!!!急発進、急加速、急速上昇。その衝撃も早々に、乗員の安全を魔法でカバーしながらに垂直上昇する五重の魔方陣!

「半分は余裕だったわね」

「じゃ、あとがんばって!」

はらりと落下していくマジエルの魔方陣

次に控えるのはメトロ、機械仕掛けの完全生命体の力はやはりあの程度のものではなかった!

「ムゲン、このアンプルを」 

「承知しました」

オーバーブースト用の弾丸Xアンプルを受け取り、腹に格納するムゲン

「ユナイトロボの三人も力を貸してくれ、私が破裂しないように」

「押さえるだけでいいのか?」

「潤滑用にドリルの飛沫でもどうだ」

「アタクシが花火で彩ってあげますわ」

「いくぞ、トランスアーム!」

四重の魔方陣を両腕に抱え上げ、瞬時にフルドライブした九つのアンバサエンジンが全身を真っ赤に変色させ、あらわれた九つの分身たちが魔方陣を一気に押し上げてはるか彼方に消えていく――あたりは花火で彩られていた

頭のヘリトンボで滞空し、見上げるメトロの機械生命体

「ご無事で・・・・・・」

はるか来た上空でもギャル達のテンションはいつも通りだ

「もう、ほとんど着いたんじゃね?」

「えー、じゃーサボろっかなー?」

「いやいやー、リリーちゃん泣いちゃうしー」

「みんな集まるし!」

「せーの!」

「「「「「無頼シンクロン・マキシマスーーーーー!!!!!」」」」」

いきなり巨大化するギャルたち自身の体、巨大化の勢いで魔方陣を高く高く目指す空の真ん中へと放り上げる!

「「「「「どんだけー!!!!!」」」」」

たちまち、元の大きさに戻りながら地面に落下していくギャル、だがその目はキラキラと輝いていた

「やったぜ!」

いざ、シノービの出番!

「見えたぞ、近い、すぐそこだ、目の前だ、なんだ・・・あれは、空に亀裂が!」

至近距離でなければ目にすることもかなわない、超文明ガルビスの高度な技術レベルが結集された精密な工作精度を誇る旗艦ガルビスの船底の第三艦橋がうっすらとスジ彫りのように空の真ん中に円を描いていた、だがーー

手がかりがどこにもない!

円形の縁取りがスッポリと空の天井の真ん中に収まり、取り付く島がないとはまさにこのこと!

「御館様!轟雷怨を!」 頭

「天井から下剋城を生やしたらその瞬間、こっちが弾き飛ばされてここまでの努力がパーだ・・・ここは久しぶりに力仕事か・・・おぉぅうりゃああああ!」

クナイスカートの蛇九ナイフを天井の円に向かって投げて突き刺し、格納状態の第三艦橋を力ずくで引っこ抜くオギン

ガボッ、ガボボッ!

奇妙な摩擦音を立てて、少しずつ引き出される第三艦橋

「うぬぅ!」

だが、あとわずか、足りない、届かない!

「「「「我らはここまでです!!!!」」」」

ギリギリまで滞空していたシノービの4人が魔方陣と共に脱落する

「「「「御館様ー!!!!」」」」

シノービの御館が意地を見せ、リリー達の魔方陣に飛び乗ってなおも一人で格闘、奮戦する

ビーッツビーッツビーッツ!警告音の後、空に赤い円が光り、再び格納されていく第三艦橋

「後詰めは任せろ!行け!」

ギリギリのタイミングで引きずり出された第三艦橋の隙間に飛び乗る5人

アントラが唱える、禁足を破る魔法を――チャンネルはそのままで!

マゴマゴしているそのうちに

ゴマゴマすれてすりきれて

セサミセサミの大通り

開けよ開け!ポンキッキ!

真っ青な水鏡のような膜が現れ、それが透けてなにやら向こうが見える

「やった!いけるぞ、さすが大魔法使い!」 リリー

「急げ!」 チャンドラ

「急ぎましょう!」 ジャミラ

「・・・キミは、賢者なのか?」 テレス

「大魔道士ですー」

――あーあ・・・・・・

ここ一番の自分の見せ場を終え、ガルビスゲートの通り際、アントラは白泡美人の方をふと振り返って、こうつぶやくのだった

男湯と女湯に別れてたらよかったのになー

・・・・・・何かの音が響く。カッカッカッカ・・・そこには振り落とされたかと思われたオギンの姿が。助け船ならぬ、助け旋風刃に助けられ、かろうじてクナイを両手に第三艦橋の縁にすがりついていた。リリーたちが禁足を破った後、這い上がってくるオギン

「・・・・・・ええい、ままよ!主殿!」

オギンは、残っていた消えかけのガルビスゲートに飛び込む!

ガルビス艦橋のモニター前の青い人影が、一瞬の小さなエラー表示を見落としたのは、リリー達にとって幸運だった




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