ガルビス来訪
青い人影がエントランスに立ち、この白き温泉場に踏み入ろうとしている
向こうの手順を踏んでおいた方が、かえって無駄な手間も省けるというもの
受付を済まし、コース通りに脱衣所に入る青い影。赤・白・黄・青・緑の宇宙服のようなボディスーツを脱ぐと、その人影は全身、青い肌となっていた。次の瞬間、そろいの青い首輪から身体の上下に光が発して、アキラたちと同じ肌色に変化する!
「ほほほ・・・アンバサガードスキン、我々が汚らわしいアンバサに触れるなどあってよいものか」
「ふふふ」
「行きましょうか」
その者達はアンバサの宿敵にして強敵。ついに、この許されしアンバサの楽園にまでやってきた異端、異分子、いやこの世界の支配者――自らが支配する圏内に、異常なアンバサ反応を確認し、調査のために手ずからこの地を訪れたのだ
「ちょっと身体冷やしてくるね!」
「アキラー逃げんのかー!」
「アキラ!」
「主殿!」
脱衣マージャ・アン会場から逃げ出して脱衣所のマッサージ機に逃げ込もうとするアキラだったが――
ガララララッ
入れ違いに5人の裸体に埋もれてしまう
「わぷっつ!」
ラッキー叡智だ!
「いけませんわアキラさま、そんな出会って5秒で即叡智だなどと・・・」
「なら、いつになったら良いというのだ」
最近のアキラの叡智について、ちょっと不機嫌なリリーであった
「それは…その…もっと男女の営みをたしなんで慣れていただいてからというか…そのぉ…」
「ではそれに慣れる前はどうすればいいのだ、慣れてからだけだというのでは、何もできないではないか!」
「おっしゃるとおりでございます…ああ、今まさに叡智の花が開こうとしているのですね…ああリリー様…!」
「まあ、この方は一体?」 クイーン
「お湯を上がられたのですね、どうぞお通りください、失礼いたしました」 エーテル
「私たちもいただきましょう」 メラルダ
「ええ、そうしましょう」 ターシャ
「失礼いたします」 ミーナ
縦横無尽に一網打尽の勢いで次々に白泡美人のホットスポットを攻めていくギャル達
「次はこっちだ、行くぞー!」
「「「「おー!!!!」」」」
いいお客さんだ
「まあ、わざわざ熱いだけのお湯につかるのもねー」
「適温にして1680万色で光らせて正解だったわね」
「水とお湯を分離して行ったり来たりさせるのはどう?」
ぜんぶ魔法でお系だ
全裸のまま大股開きでマッサージ機にかかるオギンと恥じらうシノービの一行
御館様、せめてタオルを・・・
なんだ?かまわんではないか
ちょっと迷惑系だ
扇風機という古典的機械の前で特段の叡智の余韻に浸るメトロの一行
「・・・・・・ぁあっっぁ」
「・・・・・・ふっ、ふっ」
ダメなやつだ
ふと見れば湯船の前で立ちすくむ新参の5人、何に動じているというのか
「アンバサガードスキン・・・これさえあれば」
「でも……いえ、この体がけして汚れることがない完璧なものだとしたら…」
「しばしの間の戯れも許されようというもの」
「我らに不可能なし、我らに恐れるものなし」
「……ゆきましょうか…」
カポーーーーーーーン!!!!!
「――お湯、いただきました」
「まあ、もう上がられたのですか、今入られたばかりですのに」
「ええ、ちょっと私たちには温度が高かったもので」
「別のものを試させていただきますわ」
目線が当施設自慢のフルコースのラインナップを泳ぐ
「「「「「どちらから試しましょうか・・・キャー!!!!!」」」」」
アンバサミストやシャワーリングインフェルノアンバサやバックトゥザアンバサで、次々に悲鳴を上げる、あとからやって来た5人
こ、こんなはずでは・・・・・・
「えー?シャワーリングインフェルノ、よくなくない?」
「いやいや~バックトゥザアンバサこそが本命だし!3部作だよ3部作!」
「てゆーか、アンバサミストはほとんどアンバサみたいなもんだしー」
「ま、まさかここまでの地獄が待ち受けていようとは・・・」
「ここはひとまず撤退しましょう・・・」
営業時間も押し迫り、一同は帰り支度を始める
カァカァカァ――これはエントランスにある自販機のスピーカー音声だ!
「っはー、いいお湯だったーー!」
ジャミラがアントラにこそっと切実な問いかけをする
「ところであの外道照身霊波光線とやら、魔法で習得できたりしませんでしたか?!」
「あれはちょっと自然現象みたいなところもあるので、魔法ではなんともー」
「とほほ」
「あ、その殿方は・・・先ほどは恥ずかしい所をお見せしました」 クイーン
「え?ボク?いえ、こちらこそぶつかってごめんなさい」
「お詫びにウチでおいしいジュースをご用意しますわ」
「え?アンバサかなぁ」
「ふふふ、アンバサなんかよりももっとおいしい素敵な素晴らしいジュースですわ」
「え?そんなに?!」
「そうですわ、まちがいありませんわ!」
「マーケットのシェアがそれを証明していますわ!」
「市場規模や売り上げ金額でも!」
「それどころか皆さんの記憶の中の位置づけでさえも!」
「さあ、早く『ガルビス』をご賞味あれ!!!!!」
「アキラさま、そんな遠足帰りに寄り道はいけませんわ」
「むぐぅ、どこへでも行けばいいのだ、さっきからあちらこちらで叡智、叡智の数々を繰り広げおって!ジャミラもどうした!私の叡智はとがめても、アキラの叡智はお咎め無しではないか!ずるいんだぞ!」
「それは・・・ワタクシはリリー様の教育係だからこそであって」
「うるさいうるさいうるさーい!」
怒りで髪が灼熱の色になるリリー、なぜか思わずクンカクンカ!スーハースーハー!したくもなるその後頭部がよく見える
「もうこうなったら、風呂上がりのヤケアンバサだ!ミルクアンバサ!よし、いつもよりうまい!コーヒーアンバサ!これが伝説の!んん~甘い!フルーツアンバサ!すっとするようなとろっとするような・・・だが、それがいい!」
「ごめんよリリー!」
「ふん、しらないのだ、こうなったらアキラのベッドの下を念入りに調べさせてもらうのだ
ボクはクローゼット派なんだよリリー・・・」
「・・・アキラさまもそろそろオープン叡智になってこられましたわね」
「アキラのどこが叡智なのかわからん、具体的かつ簡易簡略的に説明してくれ」
「年頃の少年が隠したくてたまらない秘密のお宝のありかを思い人に知られるというスリルを前にしてなお、あえて自分の弱点を堂々とさらすという行為がたまらなく叡智だと思うのであります(スラスラ)」
「長い、五文字で頼む」 リリー
「ムホホエッ」 ジャミラ
性的な興奮が隠しきれずに思わず口から漏れてしまった吐息のようなつぶやき!
ガルビス人がアキラを歌うように誘う
「さあ、行きましょう」
「アンバサよりももっと素晴らしい世界が待っていますよ」
「ささ、アキラさま」
「こちらへ」
「どうぞどうぞ」
リリーがチャンドラを手招いてささやく
「おいチャンドラ」 リリー
「なんだい?」 チャンドラ
「すぐ、ていさつに、ゆけ」 リリー
「OK」 チャンドラ
「いそげよ」 リリー
・・・・・・そのとき近づく影一つ!
「手伝おう・・・」 オギン