少年よ大使を抱け
アンバサだーず〜ようこそ異世界御一行様〜
幻のジュース、アンバサをめぐる叡智な感じのラブコメです
アンバサしか勝たん
お話は完結しています
なろうの文化や作法について全く知らないため、80%くらいの完成度となります
ご笑読のほど、よろしくお願いいたします
――輝くような白い布地が眼前にくまなく広がり、その視界の全てを覆い尽くし包み尽くし隠し尽くす
「何だろうこれあったかい・・・すごい不思議な匂いがする、甘いような、すっぱいような・・・ちょっと汗ばんだ感じのような、まったりとしてそれでいてしつこくなくしゃっきりぽんとしたこの風味は一体・・・ペロッ、これは、アンバサ!」
それは少女が身に纏うパンツであった。カメラが引くと少年の頭が見える、さらに引くと少女の下半身に顔を埋めている少年の姿が見える
パンツを十二分にマジマジと眺めたあと少年は驚愕する
えっ?
顔を見上げ、そのパンツの主と目と目が合って二度驚愕する
えっ?!
さらにもう一度念のためパンツの詳細を確認して三度驚愕する
えっ?!?!
はるか彼方の銀河にちりばめられた星々を仰ぎ見上げて少年は叫ぶ
えーーーーーっ!!!!!
――近い未来、はるか彼方の銀河系で…
宇宙大戦争的な音楽とともに時間が逆行し、はるか銀河まで振り切られた目線から一気にカメラはクローズアップする。時は数刻前に遡る、場所は某国某県某市某町の一軒家、その五畳半銀河を構成する一室の片隅であった!中途半端な間取りで暮らす少年が一人。彼は今、家族と断絶し、自室に籠城していた。辺りに散乱するアンバサの空き缶の数々、これしかなかった、この地域周辺の自販機にはこれしかなかったのだ
私立中高一貫の中学3年生、アキラには、目の前に迫る大問題があった。進学である。しかもただ高校へ行くか行かないかではない、私立か公立かを迫る大選択の時なのであった
「中高一貫なのに何で公立受験しなきゃなんだよ、レベルアップ?いいじゃないか私学でも!公立なんて興味ないよ別に、今の何が悪いんだよ!」
通じ合わない親子の永遠のドラマである
「もうこうなったら、話が解決するまで籠城してやる・・・!あ、これが最後のアンバサだ・・・クッ!補給にいかないと!」
財布を手に夜半に窓から外に出るアキラ
「まとめ買いするなら自販機じゃなくてコンビニ行かないと・・・アウソンいく?国道越えだけど。アミマいく?登りが面倒なんだよな・・・」
歩いて20分かかるコンビニ・・・!田舎!圧倒的田舎!アキラの胸中には田舎に対する反感がムッシュムラムラと渦巻いていた。だがそう、彼は本当の田舎を知らない。コンビニが2軒選べるだけで十分恵まれた境遇にあることを決して知ることもなく、目の前の小さな不幸に溺れ、酔いしれていたのだ
「何だよ片道20分って、どこがコンビニエンスなんだ・・・」
通り過ぎるいくつもの自動販売機。アンバサの自動販売機。またアンバサの自動販売機。アンバサの自動販売機がある!つまり、田舎だ!
コンビニ前の信号待ちをするアキラ。そこに、まるで竜が顎を開けたかのような田舎名物!昭和を引きずったデコレーショントラック、ドラゴンを模したかのような姿をしたそのデコトラが!アクセルとブレーキを踏み間違えて飛び込んでくる!!!!!
・・・・・・瞬時にして気を失うアキラ。だがふと目を覚ますと顔には柔らかい感触と温かさ、そしてミルクの中に炭酸が弾けるような匂い…これは…
気がついた少年アキラの目の前にはしっとりと熱を帯びた暖かい女物のパンツが広がっていたのだった。白地に青文字で大きなAの柄の!
「ペロッ…これは、アンバサ!じゃなくて、わわっ!」
慌てて身を起こすアキラ。
目の前には驚きと恥じらいと一抹の満足感をコンクリートミキサーにかけてぶちまけたかのような複雑な表情を浮かべ、いたくむくれた金髪の美少女が
「何者だ、無礼者!私を誰だか知っての狼藉か?!」
「ご、ごめんなさい!」
謝るアキラだが当然、聞き入れられない。おもわず足が反転する。逃げよう。足が空回りする
「すする、するする、すするする~」
魔法使いがニコニコの笑顔で怪しげな呪文を唱えている。そしてたちまち二連の鉄球が飛んできて足に絡まり地べたに倒れ尽くす
「うーん、スペランカー」
「やりましたわリリー様!叡智の輩を捉えました!」
「よくやった!さあ、邪知暴虐のやからにどんな責め苦を与えてくれようか・・・ふふふ、腕が鳴る」
「ごめんなさい!その・・・パンツに飛び込んだことは謝ります、でもわざとじゃないんです、ほんとなんです!気がついたらあんなことになってて、その・・・コンビニに行こうとして、えーっと急になんか衝撃があって、気がついたら目の前にパンツが・・・パンツが・・・」
「妙な感じのするヤツ、何を言っているのかわからんが、ついうっかりと何でも言うことを信じてしまいそうになる不思議な目をしている・・・ふーむこやつは一体・・・」
「姫様、お気をつけ遊ばせ?その奇っ怪な衣装、妖術師の類いかもしれませんわ!」
「妖術師だと!ぜひ一度は会ってみたいと思っていたのだ!さて、ではどんな妖術をみせてくれるのだ?」
キラキラの好奇心のまなざしがアキラを突き刺して罪悪感と不安を掻き立てる
「い、いや妖術っていわれても・・・手品もできないし、マジックもできないし、変身もできないし、スーパーな感じのサイヤ人にもなれないし・・・あ、自販機で一本だけ買ったアンバサがポケットに・・・これ・・・」
「ほほう、ポケットから怪しげな筒を出して見せたか、面白い貸してみろ!なんだこれは・・・おい、これを見ろ、異国の文字だが読めるぞ」
「Ambasa・・・アンバサ?!」
●品名 炭酸飲料●原材料名 糖類(砂糖(国内製造)、果糖、ぶどう糖液糖)、脱脂粉乳/炭酸、香料、酸味料●内容量 350ml●賞味期限 缶底下段に記載●保存方法 高温・直射日光をさけてください●販売者 コカ・コーラ カスタマーマーケティング(株)東京都港区六本木6-2-31 国産
「もしや、このずっしりと重みのある筒の中にはアンバサが入っているのか?」
「そ、そうだよ」
「ここを引っ張るのか?ん?!ペロッ、これは!確かにアンバサではないか!」
「え?知ってるの?あんなのレアリティが低い上にマイナーな絶滅危惧種のもはや田舎にしか存在しないジュースだよ?!」
「ウチの城の井戸からくみ上げられたものよりも鮮度がよい、これはなんと言う妖術か!まさに妖術!ささ、次は帰り道を教えてくれ、妖術師よ!」
「え?帰り道?」
聞くと、外出先から帰ろうとしたらこのあたり一帯が四方八方どこも行き止まりになってしまい、城に帰れなくなっていたのだという。
「何か不思議な壁のようになっていてな、力押しでも、魔法でも向こうに行けないのだ」
そして、仕方なく足を休め、井戸からくみ上げて水筒で持ってきていたアンバサで喉の渇きを癒やしていたところ・・・
「そこに突然お前が現れたのだ、だから道くらい知っているのだろう?」
そうしれっと、うそぶきながらアンバサの350ml缶を一気飲みする少女
「くはーーーーっ!」
「トロッとした舌触りに、ほのかに存在を示す微炭酸!それらが相まって口の中で優雅な舞を舞うような得も言われぬ膨らみを感じさせるミルク色のハーモニー、何よりも甘く舌全体が心地いい・・・これぞアンバサ!」
これでもかといわんばかりにアンバサを持ち上げる至上の名文句!
「どうだ、お前もウチの井戸のアンバサを一杯、いや一口だ、それ以上はやらん」
「今なんて?井戸から?アンバサが?どういうこと?・・・コクッ、ホントにアンバサだ・・・」
アキラと話をするうちに徐々に打ち解けてくる一同であったが、アキラの胸中には不安しかなかった
「急に知らない所にやってきたと思ったら、妖術を見せろとかめちゃくちゃなこと言われてこれ、雰囲気的に失敗したら殺されたりしない?」
その不安げな様子を見て、少女が声をかける
「どうした、しょぼくれるな、少年!」
「少年って!対して変わらないだろ!大体そっちは何なんだ、僕はアキラ!さあ名乗ったぞ!今度はそっちの番だ!」
「フン、私の名はリリー、リリー・アン・バサダー、神竜聖ドラン王国の王族、バサダー王家の一人娘にして王位継承者だ」
「その従者、チャンドラ」
浅黒い肌に武闘派を思わせる意匠をちりばめた筋骨隆々の女闘士!
「お仕えしております、アントラでーす」
ニコニコ糸目の魔法使い!いかにもなローブと帽子を纏っている
「ワタクシはジャミラと申します」
真っ黒なタイトローブに身を包んだ怪しげな女が海中の昆布のようにウネウネと身をくねらせている
「こう見えてメイドですの、こうすればお分かりかしら」
タイトローブの上にメイドビキニをあてがうジャミラ。たちまち体のラインに吸着するビキニ、アッと漏れる声
「やめろ!それは叡智だぞ!」
「え?素肌に身に着けろと!?ええ、仕方がありません、そこまで言われては仕方がありませんわ!ワタクシの叡智、お目にかけましょう、さあごらんあれ」
ローブを裾からまくり上げ、脱ぎ捨てようとするジャミラ。つまんでたくし上げたローブの裾から現れたのは!可憐で小さな足に、溶けた氷柱のように滑らかで細い足首、そこから続く柔らかな新芽のようなカーブを描くふくらはぎ、そして魅惑の太ももサンドイッチを超えた先にあるのは神秘を包み隠す何色の!何色の!
「おやぁ?どうなさいましたぁ?」
何かしらの箇所が何かに敏感に反応し全身ごと硬直するアキラ
「…やめるのだジャミラ!自己紹介がしたければ後で、じっくりとしろ」
「じっくりとしてもよろしいのですか?!」
「言葉のあやとりはやめるのだ」
「そうそう、こちらはテレス。時に常識では分からない言葉をお話しになるので、知恵を司るもの、賢者として知られていますわ」
「ふんがー、ふんがー」
「賢者・・・!?あ、あの、人生相談とか、しても、いいですか?」
「あ、そういうのはちょっと…なにせ人知を超えていますので」
「…そ、そっか・・・・・・」