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プロローグ
灰色の空に一つの影が浮かび上がった。いや、正確には浮かび上がったと言うよりも、出現した。という方が妥当だろう。
黒い影は数秒、ピタリと動きを止め、鳥のように細く尖った嘴(くちばし)を下に向けていた。
鳥のようだ、とは言っても、明らかにその類とは異なる大きさで、誰に聞いてもそれは鳥ではない。と、答えるだろう。
黒い影は、大きな羽を羽ばたかせた。それに応える様に、強い風が下へと運ばれていく。
『早く、捜し出さなければ---』
黒い影の身体が、歪み、空に吸い込まれていった。