表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝起きたら火星が全て解決していた  作者: らんた
Yesterday It Was Just a Dream
1/6

朝起きたら火星が全て解決していた

 朝起きたら火星が全て解決していた。人類の飢餓も戦争も失業問題も何もかも。実は火星の重力は3分1なので火星移住には勇気がいる……わけではなかった。人類居住エリアにはグラビティ―ゾーンと言って地球と同じ重力がかかっているのだ。


 火星に旅行に来る観光客たち。一見すると地上用の航空機と変わらない。しかしこれは宇宙船なのだ。巨大な旅客機だ。1000人乗りなのだ。逆もしかり。その数、実にボーイング747つまり通称「ジャンボジェット」とも「空の女王」とも言われる航空機の約倍もの乗客数である。もうこの規模ともなると空飛ぶ街である。エコノミーは2-3-2シートである。二階にあるファーストクラスは機内ラウンジ付である。機内前方にはビジネスクラスもあるが短距離便なのでビジネスは損である。自分は機内後方窓側エコノミー席に座った。全く地球上の航空機と変わらない。座席ポケットにあった安全のしおりは「B-1747」とある。もちろん1747とはかつての空の女王「ボーイング747」から派生した番号というわけだ。1000番台は宇宙航空旅客機という意味である。パン-アース宇宙航空機内安全ビデオが流れる。誰も見ちゃいない。事故率は0.22%。ほぼ安全だからだ。死亡事故に至っては約1200万回に1回という確率となる。「B-1747」は宇宙旅行を大衆化させたボーイングの傑作機である。「B-1747」には「宇宙の女王」という別名が付いた。他にもエアバスA-1380というものもあるが。

 「PAM EH」の名は宇宙をくまなく地球化するという意味だ。パン-アース航空は火星の象徴にしてパイロットのあこがれにして人類のあこがれとなった。

 もう石油とは無縁だ。火星の砂漠はコケが緑化していた。もう地球上の燃料はSAF燃料や水素なのだ。


 ――もう石油枯渇も資源争奪戦争も起きない


 そう、もう石油などで争う事が無くなった。労働はすべてロボットが行う。そして膨大な食糧生産。少子化になっても問題はなくなった。というか安心感からか地球の人口は90億人で止まり全世界の出生率も2.1で止まったのだ。


 「シートベルトをお締め下さい。地球・成田空港へ出発します」


 地球に行くのはもはや日本に例えるとグアムへ行くようなものだ。なんせたったの約3時間なのだ。火星は人類自治領としてどこの国にも属さない領土となった。かつて砂漠とドライアイスしか無かった火星とは思えない。電子シェードが作動して窓が真っ暗になった。人類が火星に作った大気圏に突入したのだ。

 通常の運行速度は超音速となりやがては超光速となる。本当は周辺に宇宙管制塔があるのだが光速じゃ勿論見えない。昔は「宇宙ステーション」と呼ばれていたものが今やただの宇宙管制塔だ。


 シートベルトサインが消えると一斉に小型格納庫からCAロボットが出て機内食を運ぶ。3時間なので軽食にジュースなのだが。もちろん機内食のゴミもCAロボットが回収する。人間のCAが担当するのはファーストクラスの客だけだ。ゆえに「PAM EH」と印字されたバックを持つCAは全世界のあこがれだ。このバッグを持つという事は世界中のCAの頂点に居る証なのだ。もちろん副操縦士もパイロットもだ。


 シートベルトサインが再び点灯した。超光速から超音速へ戻る。CAロボットは格納庫へ再び収納される。


 「機長です。大気圏に突入します」


 すこしカタカタとなるがいつもの事だ。地上の乱気流と変わらない。ただし外の光景はもう見えない。大気圏を超えると故郷だ。電子シェードが作動し窓の外が再び見えるようになった。超音速は通常の速度に戻っていく。


 火星の誕生は「地球」の概念を変えた。地球はEUのような「地球連邦」という1つの国になったのだ。ユナイテッド・ステイツ・オブ・アースとなったのである。もう戦争など起きようがなかった。地球は小さい。今までなんでこんな星で醜い争いを繰り広げたのであろう。


 入星手続きを終えて故郷・日本に帰った。火星の生産物のおかげで地球上全てが豊かになっていた。


 「我、人類はすべての悲嘆を火星開拓で克服したり」


 人類は西部開拓の10倍の規模を成し遂げて国という概念すらも無くなっていた。


 今日も成田空港は火星へ向かう旅客機や貨物機がひっきりなしに着陸・離陸する。なにせ火星に向かう貨物宇宙船に「PAM EH Cargo」や「United Cargo」と書かれているのだ。もう日本最大の港は横浜港でも神戸港でもない。ここ成田空港なのだ。

 「PAM EH Cargo」や「United Cargo」はどの空港でも今や人類の希望を載せた貨物機だ。火星から運ばれてくる医薬品や食料を運んでくれるのだから。もちろん旅客機の貨物室からも次々と物資が積み下ろし、搭載されていく。


 ――臨時ニュースをお伝えします


 空港の巨大スクリーンがニュース画面に切り替わる。そう……超光速で宇宙空間を移動できるという事は火星どころか……。


 ――無人宇宙冒険探査機の登場です。銀河系以外に人類が住める星を確認しました! 探査ロボットも搭載します!


 冒険先は11光年先と言われている。と言う事は片道11年。それでも11年までの距離となった「赤色惑星ロス128b」だ! おとめ座にあるとされる星!! いよいよ人類は太陽系を超える時がやって来た。


 人類は……偉大なり! なぜ人類はここまで冒険したがるのであろうか。それは未知なる場所があるからなのだ。人類はそれでも神の領域に達していない。まだ人類は太陽系の外すら全貌が分からぬ。神は数ある銀河を全てつくりたもうた存在。だとしてもだ。人類はすべての動物の頂点に立ち地球外の星に拠点生活を送るまでには進化したのだ。


 変わらないこともある。今日もスカイライナーで日暮里まで向かう。宇宙社会となってもベッドタウンの光景も下町の光景も変わらない歴史街区となった。そしていつも見えるスカイツリー。自分の街だ。日本だ。味噌汁が飲みたい。火星で飲むインスタント味噌汁とは味が違うのだろう。微妙に麹が違うのだ。変わった事。変わらぬこと。人類は2つの味をかみしめる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ