始まり
よろしくお願いします!
イルべギニア帝国 帝都
『こちらアルファ。目標確認。』
『こちらベータ。目標確認。』
「了解。目標元S級魔導士ファントム。目標がエリア2に入ったらば速やかに攻撃開始。」
『アルファ了解。』
『ベータ了解。』
「エリア2進入。総員攻撃!!」
凄まじい爆音の中、まるで何事もないかのように歩くものが一人。
「な、何故だ。攻撃は当たっているはずだ。・・・まさか!!」
彼が振り返るとそこにはピエロの様な仮面をつけた一人の少年が座っていた。
「あはっ!そのまさかだよ〜将軍。僕の二つ名忘れちゃったのかなぁ?[幻創]のファントムだよ?てことで、帝国のみなさん。さようなら。」
そう言い残し少年はまるで煙の様に消えていった。そして、残されていたのは残り時間20秒だけの時限式魔導爆弾のみ。
「そ、総員退避ーーー!!!!」
爆発はその場だけでなく帝都全域、帝国民の生活圏全てを吹き飛ばした。
世界地図から一つの国が一人の魔導士によって消されてしまったこの事件は各国の政府に重大な影響を与えた。
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国際指名手配犯
元S級魔導士
コードネーム[ファントム]
二つ名[幻創]
懸賞金250,000,000ドルク
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「あっちゃー、やり過ぎて懸賞金凄いことになってるなぁ〜。まぁ、いいけどねぇ〜」
「よ、よくないよ!フーちゃんいつもやり過ぎだよ!もう少し加減してくれないと私まで危ないんだから!」
「あ、変なあだ名で呼ばないでよー。ミラはいつも心配しすぎなのだよぉー。危ないことはないない〜。」
黒髪に紫眼の少年は一国を消したファントム
その隣を歩く銀髪の碧眼の女性はミラ
この二人は国家犯罪組織『黒銀』のリーダーと副リーダーである。
『黒銀』とは
ある時は国に変革を起こす革命家であり。
ある時は国を破壊しつくすテロリストであり。
ある時は国の危機を救う救世主である。
たった10人しか構成員がいない組織であるがその名は世界中に知れ渡っている。
「今回勝手にイルべギニアを消しに行っちゃったからみんな怒ってると思うよ?フーちゃん」
「だって、僕が魔導士の時作ったもの勝手に使って戦争とか始めるしぃ〜、そのエネルギーを国民から吸い取る変な改造してむかついたんだもーん。」
「それはわかるけどね。フーちゃんはリーダーなんだから勝手にいなくなっちゃうとみんな困っちゃうと思うんだよね。」
「勝手じゃないもんねぇー。ちゃんと書き置きしてきたしぃ〜」
「うん。書いてあったね。イルべギニア消してくるって。みんな読んでも何言ってるんだろってなると思うよ?まぁ、早く帰ってみんなを安心させてあげようね。」
「ほーい。ちゃっちゃと帰りますかぁ〜」
オギャオギャオギャ
「ん?なんか泣いてなーい?」
「そうだね。赤ちゃんかな?こんな裏路地に?」
「あっ、見つけた!うわぁ〜ひどい親もいるもんだねぇ〜。ゴミ箱に捨てるとか人扱いすらしてないじゃーん。この子名前もついてないみたいだし。」
ファントムが鑑定スキルで見ると名前は何も書かれていなかった。
「ほんとだね。かわいそうだし連れて帰ろう。」
「僕は反対かなぁー。まず、僕子供好きじゃないし、この子も僕らといたら危ないし、邪魔なだけだからねぇ〜」
ファントムはまるでどうでもいいものを見る目をしている。
「いや、全部私が面倒見るし守るから、絶対に連れて帰る。だってこの子は生きたいと叫んでいるから。」
ミラは何か決意したように優しくその子を抱きしめた。
「あっそ。好きにしたらいいよ〜。じゃあ、このちっこい生ゴミに名前をやろうか〜。君は今日からダストだ。ゴミ箱の君にはちょうどいい名だろぉ?あはっ」
「フーちゃんそんなひどいこと言っちゃだめでしょ。あ!!フーちゃんのせいでこの子名前ダストになっちゃってるよ!もう!」
「鑑定したんだぁ〜。まぁそんなに怒るなよぉ〜。北の方では冬にダイヤモンドダストというとても綺麗な現象が起きることが稀にあるみたいだからさぁ〜それから付けたことにすればいいんじゃな〜い?」
「適当すぎるわよ。。。ごめんね、ダスト。」
これは『黒銀』という超級犯罪者たちに育てられたダストという一人の少年の物語。
ー10年後ー
「ミラ母さん、とうとうこの日が来たね!」
灰色の髪の少年はミラを見上げながら目をキラキラさせている。
「そうね、ダーちゃんもいいスキル授かれるといいわね!」
ミラは優しい笑顔を浮かべ、ダーちゃんことダストの頭を撫でている。
10歳の誕生日に人は神様からスキルを授かる。大体は剣術や槍術などの戦闘系のノーマルスキルでその他には各属性魔法や錬金術などのレアスキルがあり、ごく稀にユニークスキルというものが出る。
「でも、なんで僕は教会でスキル鑑定しないの?」
ミラはその言葉に目を泳がせ、
「そ、それはね、パパとかおじさん達が教会の神父さんとかとあまり仲がよくなくてね。変なスキル与えられたら嫌だなってうちでやることにしたの!ママもスキル鑑定できるからスキル教えてあげれるし!」
ダストにはまだ私たちのこと教えてないのよね。。。
「そうだったんだ。パパちょっと口悪いしね。仕方ないね!じゃあミラ母さんお願い!」
「うん!・・・えっ。ユニークだわ。」
「えっ!ほんと!やったー!みんなとお揃いだー!どんなスキル教えて!!」
「え、えぇ。スキル名は模倣。ありとあらゆる事柄の模倣が可能となる。とだけ書いてあるわね。」
「うーん。もほーってなに?」
「そうねぇ、実際にやってみた方が早いのかもね。お母さんの真似してみてね?」
徒手格闘の型の動きをダストに見せる。ミラの動きはまるで舞っているかの様な綺麗さであった。
「はい、やってみて!」
「うん!なんかできそう!」
そのままダストはまるっきり同じリズム、スピード、しなやかさをもって、型をやってみせた。
「すごいわ、ダスト!!あなたのスキルは人の動きを見てすぐに真似できるようになるというスキルなのだけどここまで完璧に模倣するなんて」
「すごいの?でもものまねのスキルってことでしょ?あんまりかっこよくないなぁ。。」
「いえ、とても凄いのよ!パパに報告しましょ!」
ダストのパパ。それはもちろんファントムである。連れて帰った日に勝手に国を消しに行った罰としてパパになったのである。
「トム父さん!僕ユニークスキルだったよ!もほーってスキルだったの!ものまねがうまくなるんだって!ミラ母さんはすごいって!」
「そっかぁ、それはよかったねぇ!まぁ、僕の息子であるならば当然ユニークスキルぐらいないとねぇ〜。ほかのみんなにも自慢しておいで〜」
「うん!!行ってきます!」
ファントムは急いで部屋を出るダストを見送りながら、その顔を真剣なものへと変えた。
「はいはい、いってらしゃ〜い。ミラは残ってねぇ〜。。。で、どんなスキルなの?」
「私が見た限りだとありとあらゆる事柄を模倣することできるとなっていたわね。さっき、徒手格闘スキルの型を見せたら一発で模倣して見せたわ。しかも、ダーちゃんに徒手格闘スキルが追加されてたわ。」
「なるほどねぇ〜。それは凄いねぇ。もしかしたら僕らのユニークスキルとかも真似できちゃうかもってことだよねぇ。末恐ろしいねぇ。あはっ」
「まさかとは思うけど、ダーちゃんに何かするつもりじゃないでしょうね。」
「さすがに、10年も一緒いたら情も湧いちゃうからねぇ。何か危害を加えようとは思ってないけどさぁ〜、俺ら『黒銀』全員のユニークとか模倣したら面白いなと思ってさぁ〜」
「強くなるに越したことないでしょうから、ダーちゃんが嫌がらなかったら私のユニークスキルを見せてみようかしら?」
「そうしてみたらいいよぉ〜。でも相変わらず母親口調のミラには違和感しかないよぉ〜」
そして、世界最凶の犯罪者達による世界最悪の英才教育が施されていくのであった。
「あのね!さっきユマ姉とガルじぃにねすごいって褒められたの!でも、ムーおじちゃんはちゃんと使えるように練習しなさいって!ミラ母さん教えてくれる?」
「もちろんいいわよ?じゃあ、ダーちゃん、ママの《結界魔法》のものまねできるかやって見てくれる?」
「うん!いいよ!!」
「【反射結界】さぁ、真似してみて?」
「【はんしゃけっかい】!!見て!できてる?」
「じゃあ、ちゃんとできてるかチェックするね!」
ミラが手に持っていた石をダストに向かって軽く投げる。すると、
「いたっ!ミラ母さん痛いよ。うぅ。」
「えっ。ごめんね。ほんとだったら跳ね返るはずだったんだけど。ママにその石投げて見て?」
「う、うん。えい!!」
ダストが投げると石はミラの結界に当たり反射してダストに戻ってきた。しかし、それはダストには当たらず反射された。
「なるほど。どういう効果があるのかまで見せないと正しく模倣できないのね。」
「ミラ母さん!跳ね返ったよー!!」
「凄いわね!よくできました!」
「うん!」
するとそこに薄い青髪の青年が近づいてきた。
ダストは振り返ると満面の笑顔でその青年に抱きついた。
「おかえり、リンド兄ちゃん!今日のお仕事は終わったの?」
「ただいま、ダスト。ちゃんと終わらせてきたよ。そういえばスキルはなんだった?」
このリンドという青年。
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国際指名手配犯
元天才革命家
リンド・ヴィクスター
二つ名[魔声]
懸賞金95,000,000ドルク
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このことをダストはまだ知らない。
「なるほど、模倣かぁ。それでミラの《結界魔法》の模倣をしていたってことだね!凄いスキルじゃないか!よかったね、ダスト!」
「えへへ。うん!頑張ってたくさんもほーする!」
「それじゃ、今度僕のスキルも見せてあげるね。」
「ほんと!リンド兄ちゃんありがと!」
「じゃあ、また後でね。頑張ってね、ダスト」
「うん!!」
リンドに手を振っているダストはリンドがたった今、他国で革命を起こしてきたことなど知る由もない。
「じゃあ、ダーちゃん次は【治癒結界】ね?」
そう言ってミラは引き続きダストの模倣のスキルについて調べていったのである。
ーその夜ー
コンコン。
「フーちゃん、ちょっといいかしら」
ミラは神妙な面持ちでファントムを訪ねる。
「んー?ダストのことだよねぇ。なにかわかったのぉ?」
「ダーちゃんのスキルはユニークスキルにも使えたわ。それでね」
ミラの模倣についての見解は、
・ユニークスキルも模倣できる。
・効果がわからないものは形だけ模倣できる。
・ダストの想像に効果は左右される。
・想像次第では本来のものより優れたスキルになる。
「なるほどねぇ、さすがはぼくの息子だぁ。かなりぶっとんだスキルだねぇ。」
言葉とは裏腹に険しい表情を浮かべ何かを考えるファントム。
「よし。今度ぼくの仕事にダストを連れて行こう。うちの息子のお披露目会といこうかぁ。あはっ!」
その言葉にミラは慌て、
「えっ!?なんで?ダーちゃんまだ10歳だよ?危なすぎるよ!!」
「大丈夫だよぉ、結界魔法も使えるようになったんでしょ〜?もうぼくたちの仕事教えてあげてもいい頃合いだと思うけどぉ?」
「でも、ダーちゃん私達の仕事を知って、私達のこと嫌いになっちゃうんじゃない?」
そういうと俯くミラ。
「ミラ、ダストは良くも悪くも純粋なんだ。まだ正義も悪もわかってないからね。でも、僕の息子は僕の息子とは思えないくらいまっすぐな子に育ったんだ。自分の目で見てちゃんと考えるさぁ。まぁ、嫌いになることはないと思うけどねぇ〜。あはっ!」
まだまだ未熟ですが、頑張るので生暖かい目で見守ってください!あはっ!