表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「傘」貸してあげる  作者: 椿 桜
学校の噂
4/8

彼女と傘

~???~


私の名前は、柊 小春。

『…』と呼ばれてる者よ。

誰が呼び始めたか知らないけどね。

私にだって、ちゃんと名前があるのよ。

誰に語りかけてるんだとか思ってるでしょ?

私、いえ私達ね。私達の世界を覗き見してる貴方達よ。


驚いた?驚いてくれないと困るわ。

きっと、良い表情をしてるんでしょうね。


貴方達は、見る側。

だから、語りかけられるなんて思ってなかったでしょ?

一方的に見られるだけなんて不公平じゃないかしら?


世界が違うから本来は干渉できないのでしょうけど。


私、視線に敏感なのよ。

最初は、気のせいだと思ったのだけど

身体がムズムズしてきたの。

耐えられないほどにね。


でも、何処からの視線か分からなかった。

怖いし不気味だったわ。

幽霊だって、怖い事はあるのよ!


聞くの忘れてたけど、私の性別どっちだと思ってた?

男?女?それとも、性別ないとか?

今、話してる私は女。


だけど、雨の日に現れる私も女かは分からないわよ?

ここまで、覗き見したのなら最後まで見なさいよ。

貴方達には、最後まで見届ける責任がある。


話を戻すわ。

夢で見たの。

私達の世界が、箱の中に入っていて

その箱を人が見てた。

私にとっては現実の世界だけど

作り物なんだと悟った。


どうにか箱の外側に干渉できないか。

色々試したわ。

そして、成功した。

方法は秘密よ。

そして、今に至るってわけ。


少し長話しすぎた。

そろそろ、本題に入らせてもらう。

特別に、謎に包まれたこの私の過去を見せてあげる。

彼女はまだ知らない。

私の過去。


今から32年前。

私がまだ人間だった頃。

私は、イジめられていた。

理由は知らない。

学校中の人が見て見ぬふり。

助けてくれる人なんて居なかった。


最初は、モノマネ程度のからかいだった。

馬鹿馬鹿しいので相手にしなかった。

これが、ダメだったのか。

次は、ある事ない事言いふらす悪口が始まった。


イジメをしていたのは三人。

この三人に目を付けられると学校に居場所が無くなる。

それ程、影響力のある三人だったので

誰も逆らう事はしなかった。


私自身も、それを分かっていたので

誰も頼る事はしなかった。

教師も、彼女達には手を焼いており

見て見ぬふりをするようになっていた。


まぁ、この程度気にする程でもなかったし。

全く動じない私を見て

面白くなかったんだと思う。

イジメは更にエスカレートした。


ある日、登校すると

上履きの中に大量の画鋲が入っていた。

すぐに、彼女達の仕業だと分かった。

履く前に気づいたので、怪我はしていない。


教室に入ると彼女達がニヤニヤしながら

私の事を見ていた。

面倒だなとは思ったけど、相手にはしなかった。


休み時間に、トイレに行って帰ってきたら

教科書がごみ箱に捨てられていたり

登校したら、机の上に花瓶が置かれていたりしたが

直接手を出される事は無かった。


その程度のイジメだったので

我慢が出来た。


だけど、ある大雨の日事件が起きたの。

授業が終わり、帰ろうとしたら

下駄箱に一枚の紙が入ってた。

〈傘を返して欲しかったら屋上まで来な〉

と書かれてたわ。


私にとってその傘は特別な傘だった。

見た目は、極普通の傘だけど

小学生の頃からずっと愛用している青い傘。

楽しい思い出も辛い思い出も

全部が詰まっている。


だから、私は迷わず屋上に取りに行った。

例え、それが罠だとしても。


屋上の扉を開けると、彼女達が

傘を差して待っていた。


「その傘を返して」


私は、雨に濡れる事を躊躇せずに

彼女達の方に歩いて行った。

だけど、彼女達がすんなり返してくれるはずもなく。


「返して欲しかったら自力で奪い取りな」


と言ってきた。

傘を持っている一人が、私を挑発するように

傘をヒラヒラと見せびらかせてきた。

他の二人は、笑って見てるだけ。


私は、何とか傘を奪い取れた。

のだけど、足を滑らせ屋上から転落した。

傘を抱きかかえたまま。


即死だったわ。

目を開けたら、頭から血を流してる自分が目の前に居た。

死んだんだって思った。


でも、不思議と彼女達に恨みは無かった。

上を見上げたら、彼女達は怯えていた。

顔を真っ青にして、入り口の方に走っていった。


それと、私が抱きかかえていた傘は

消えてた。

目を開けた時には、傘を持ってはいなかった。

その後、傘が何処に行ったかは知らない。


これが、私の過去よ。

この話を聞いて、どう思った?

私に同情でもした?

しなくていいわ。


そうそう、言い忘れていたわ。

私が、人の前に現れるのは『友達』が欲しいだけ。

生前では、一人だったから。

ただ、それだけの理由。


貴方達の前に、現れるのはこれが最初で最後よ。

もしも、私の青い傘を見つけたら、、、


~現在~


「何だろう、何か見たような、、、

 でも、何も思い出せない」


夢で何かを見た気がするんだけど。

気の所為かな?

でも、何か大事な気がするんだよね。

勘だけど。


今何時だろ。

深夜2時かあ。

私が寝たのが11:30ぐらいだから

2時間30分で起きちゃったんだ。

疲れかな。


明日、土曜日で学校休みだし

ゆっくり寝よっと。

『…』の事は気になるけど

休みの間は、一旦忘れてもいいよね。


そして、私は再び眠りに就いたの。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ