不思議な夢
やはり、『…』の話だった。
私は、その場に居たが知らなかったフリをした。
普段から、その手の話には興味が湧かないそぶりをしていた。
だが、本当は興味は人並みにある。
流石に、栞の熱量には到底敵わないが。
私が興味が湧かないフリをしているのは、興味を示してしまうと
同類だと思われて同じ沼に引きずりこまれそうだからだ。
それは、お断りしたい。
だが、これはチャンスだとも同時に思った。
何故なら、私は『…』を目撃し
次のターゲットだと言われてしまっている。
少しでも情報を集めたい。
私が知らないだけで噂には、続きがある可能性もある。
いつも、適当に聞いていただけでちゃんと聞いていなかった。
今は、少しでも情報が欲しい。
「ねぇ、栞。『…』の噂ってどんなのなの?」
私が噂に興味を示したのは、初めてだったので
栞は口を開けたまま固まってしまった。
そして、学校のチャイムが鳴った。
私と栞の席は前後だ。
栞が前の席である。
先生が教室に入ってきた
HRが始まる。
「続きは昼休みに話すね」
栞が小声で言ってきた。
私は、頷いた。
HRが始まった瞬間
目の前がふっと暗くなった。
あれ?停電かな?
だが、誰の声も聞こえない。
コツ コツ コツ
誰かが近づいてくるような音がする。
かなり距離が離れている気がする。
おかしい。
私は、教室に居た筈。
ここは何処?
足音が止まった。
パッと目の前が照らされた。
スポットライトだ。
誰かが居る。
真っ暗闇から急に明るくなったせいでよく見えない。
誰?
声を出そうとしたが声が出ない。
「初めまして、僕を見捨てたお姉さん」
目が慣れてきた。
目の前に居たのは、昨日下駄箱に居た青年だった。
青年の言葉を、脳内で繰り返した。
見捨てた?意味が分からない。
私は、自分の身を守っただけだ。
「お姉さんが見捨てたせいで僕は■■■■■
何で助けてくれなかったの?お姉さんも僕と同じ目に合えばいい」
肝心な所が聞き取れなかった。
ノイズというか砂嵐のような
ザ―――――っと音のせいで。
そして、青年は目の前から消えた。
「早くこの学校から逃げて。貴方は、奴に目を付けられた。
次の雨の日までがタイムリミット。
最後にこれを。肌身離さず持っていて。絶対に」
青年が消えた数秒後
声だけが聞こえた。
声の主に心当たりはない。
何か、渡されたが暗闇で見えない。
一体、誰だったのか。
頭がボーっとしてきた。
意識が遠のく。
意識を失う直前、目の前に誰かが居たような、、、
「さやかー、聞いてる?」
栞の声が聞こえる。
さっきまでの出来事は夢?
手に何かある
鏡?私は、鏡は持ち歩かない。
じゃあ、これは誰の?
暗闇で渡されたもの?
さっきまでの出来事は現実なの?
「ちょっと、さやかってば!!
『…』の噂が聞きたいって言ったのはさやかだよ?
このやり取りだけで、昼休み終わっちゃうよ~」
え?昼休み!?
私の聞き間違えだろうか。
HRが始まった直後から今に至るまでの記憶が一切ない。
ドッキリかなと思い周りを見渡す。
教室内は、談笑しながら昼食を食べている生徒ばかりだ。
ほんとに、昼休み?
私は、驚きすぎて栞の声が全く聞こえなくなった。
現在進行形で何か言っている。
だが、それどころではなかった。
「ごめん、体調悪いから保健室行ってくるね、、、」
昨日、今日と非現実的な事が私の身に置きすぎている。
正直言って、疲労困憊だ。
保健室で寝て休もう。
そう思った私は保健室に向かった。
鏡は一応ポケットに入れて。
コンコン
ノックを二回
ガラっと保健室の扉を開けた。
「失礼します」
保健室には、誰も居なかった。
先生は不在のようだ。
保健室には、ベッドが二つ。
入り口側と窓側。
私は、窓側のベッドを選びカーテンを閉めた。
ベッドに横になるとすぐに睡魔に襲われた。
今日も不思議な事が、起こりすぎてた。
やっと休める。
そして、私は目を瞑り眠りに落ちた。
~夢の中~
「今日、雨だったのか。傘持ってくるの忘れたな。
この大雨の中、傘を差さずに帰るのはな、、、」
ここは、下駄箱?
外は暗い。夜のようだ。
私が、保健室で寝たのは昼だから
これは夢だろう。
下駄箱には、学校の先生らしき男性が
大雨を見ながら独り言を言っていた。
先生らしきと言っている理由は、見た事がない人だからだ。
用務員の可能性だってある。
大人なので生徒ではない事は確か。
カランカラン。
男性の目の前に、突然傘が現れた。
青色の傘だった。
「ん?誰か落としたのか?」
男性は周りを見渡す。
しかし、誰も居ない。
誰も居ないので傘を使おうと思ったのか
男性が傘を拾う。
拾った瞬間、男性の雰囲気が一瞬変わった気がした。
そして、男性が傘を差した瞬間
ふっと消えた。
自分でも何を言っているか分からないが消えたのだ。
目の前で。
人が。
消えた。
ここは、夢の中だ。
何が起こってもおかしくはないのだが
リアルで起きた出来事の感じがした。
瞬きをしたら、パッと場面が切り替わった。
ここは、体育館倉庫かな。
今度は、女生徒だ。
体操着を着ている。
授業終わりにしては、体育館が静か。
部活だろうか?
動こうとしたが、私は自分では動けないらしい。
なので、倉庫を出て体育館内を見るのは出来ない。
授業か部活かは些細な問題なので良くはあるのだが。
「ふー、やっと片付け終わった。皆もう帰っちゃったかな」
女生徒が、倉庫の扉を開けた瞬間
ザ――――――っと外から音がした。
体育館の扉を開ける。
雨が降っている。
「え?嘘。雨!?今日雨降る予報じゃなかったじゃん。
傘ないよ。どうしよ」
女生徒は、着替える為に更衣室に向かった。
私の身体は、女生徒の動きに合わせて移動するようだ。
倉庫内は5m程だったが
倉庫を出てからは大体10mを維持している。
近すぎず遠すぎずの距離だ。
女生徒は、更衣室に向かう途中の渡り廊下で
男性教師に声を掛けられた。
その教師は、私が少し前に見た消えた教師だった。
「お、部活終わりか?お疲れさん。
今日の天気予報では、晴れだったのにな。
突然、雨が降ってきたが傘は持ってるか?
先生な。こういう時の為に傘二本持ってるんだ。
折りたたみ傘とロッカーに傘を常に入れてる。
この傘貸してやる」
教師の弾丸のような言葉に驚き
女生徒は、返事をする間もなく教師から無理やり傘を手渡された。
その傘の色は、、、
青だった。
私は、その傘を受け取ってはダメと
言おうとしたが声は出なかった。
朝の時と同じだ。
仮に出たとして、何かが変わるとも思えない。
だって、夢なのだから。
そして、傘を受け取った女生徒は消えた。
教師は
「二人目」
と呟いた後、倒れた。
また目の前で人が消えた。
教師の呟いた
二人目という言葉も気になる。
どういう事だ?
私は、頭の整理が追い付かないまま
瞬きをしたらまた別の場所に居た。
5mの目安が駐車スペースの長方形の縦の長さ。
10mの目安として、路線バスの全長が大体10mらしいです。