特別な夜会(テオドール視点)
今日の夜会はヴィルヘルムが王位継承権についての見直しを発表する夜会、と言っていたがそれを聞いていなくても特別と分かる。
普段のメルシア王室主催の夜会は質実剛健と言えば聞こえはいいが、必要だからやるが夜会の体裁を整えてあればいいといった程度である事が多かった。
料理も装飾も最低限でテオドールは参加するたびに物足りなく感じていたし、夜会好きの貴族達からの評判も悪く、インテリオ公やルブガンド公が主催する物の方が人気があった。
だが、今回は明らかに趣が違った。
楽団が歓談の邪魔にならない程度に音楽を奏で、見たこともない変わった形の植物を中心に華やかな装花がなされている。
また、磨き上げられた天井のシャンデリアや、精密な彫刻を施された真新しい金属製の燭台には全て灯が灯されて眩しいほどだ。それでいてぎらぎらしい下品さはなく程よい上品さを保っている。
食事の方はといえば、会場の装花の色に合わせたクロスの引かれたテーブルの上にあまり見かけない立食形式で設られていた。
見た目からして美味しそうな料理がたっぷりと置かれており、礼服を着ていても汚さずに食べやすい量を真新しいお仕着せの侍従達が取り分けてくれるし、足りなくなれば、追加で再び料理が盛り付けられる仕組みになっているようだ。
デザートもマジパンで覆われて同じくマジパン製の繚乱の花を飾り付けられた五段重ねの祝い事のケーキを中心に、一口で食べられるショコラ菓子や見たことのない焼き菓子や、薄いガラスの器に入れられたゼリー菓子などが整然と美しく並んでいて目を奪われる。
ここにあのボロを着た生徒が入るのかと思うと、自らの失態と取られそうなこの出来事の重さに脂汗が流れる。
早急にラスタン商会を捕まえてもらわないといけないし、フェアフェルデ伯爵と支払いについて話し合わないといけない。
「ルドルフ、お前の両親は見つかったか?」
「いえ。もう会場には入っているらしいのですが。こんなことなら家から行くようにすればよかった」
それにテオドールは渋く頷いた。
テオドールの家は別途控室があるからそこに行けば会えるだろうが、今回は招待の人数も特別多くて伯爵まではあまねく全て呼ばれ、子爵以下も国になんらかの貢献をしていると見なされた者達が呼ばれている。
そのため伯爵以下の家については個別の休息室は設られておらず、入場後に人を探すのも一苦労だ。
ともかくラスタン商会に支払われる金を止めないといけないので、ルドルフの両親を探しているのだが、なかなか見つからない。
時間を無駄にも出来ないので、テオドールはルドルフに言った。
「侍従達に命じて、お前の両親をキュステ公爵の控室に来させるように伝えよう」
「ありがとうございます」
安心した様子のルドルフといまだに顔色の悪いエミーリエを伴って、テオドールは父母の待つ公爵家の控室へ移動する。
ドアをノックしようとしたところで、エミーリエがためらいがちに告げた。
「テオ、私はここで待っています」
「今回の話をしないといけないんだ」
「でも……あなたのお母様は私のことを好いてくださってないですし、私は一緒じゃない方ががいいんじゃないかしら?」
「ラスタン商会の情報を一番知っているのはお前だろう? 今回の事情を話すのに必要だ」
「……分かりました」
不承不承と言った様子でエミーリエが頷いたので、テオドールは控室のドアをノックした。
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カクヨムさんでも同内容を投稿していますが、この作品がカクヨムコン9の中間審査に残ることができました。
嬉しいのでここに書いておきます。




