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【完結済】NTR王子は悪役令嬢と返り咲く(カクヨム、なろう2サイト累計40万pv)  作者: オリーゼ


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勝ち確(学生会書記ジョヴァンニ視点)

 夜会当日、学園は混乱と怒号に包まれていた。


「なんなんだよ! これは!」


「こんなドレスで夜会に行けると思ってるの!?」


「サイズが全然違うわ! どうするの!」


「俺達が下位貴族だからって馬鹿にして! 出てこいよ!」


「着られもしないゴミの為に、毎年二千ターラを十五年間も返さなきゃいけないのかよ! どうしてくれるんだ!」


 学生会室に逃げ込んだテオドール達を責め立てる生徒達を教師達が散らす怒号が聞こえる。


「どういうことだ?! エミーリエ!」


 憤怒を抑えようともせず、テオドールが商会を最初に見つけてきたエミーリエに詰め寄ると、彼女の綺麗に飾られた眦の化粧が涙で滲んだ。


「私に聞かれても分からないわ!」


 エミーリエのドレスは多少作りの甘い部分があるものの王宮の夜会に来て行くのに問題がないように見える。

 だが、今朝の朝一番に予定よりも遅れて納品された礼服はひどい出来で、とても王宮に着ていける物でなかったし、人によってはサイズが合っておらず身につけることもままならない物すらあり、発注までの対応の遅さや会長になって以来さらに際立ったテオドールと取り巻き達の尊大な態度もあってついに下位貴族からの不満が爆発したのだ。


「詐欺まがいの商会にうまいことやられたって事でしょうね」


 ジョヴァンニがそう指摘してやると、テオドールは激昂した。


「そんなはずあるか!! ソフィアのドレスは問題ない!」


「これがうちの部屋に届けられた服です。こんな物、古いカーテン巻いてった方がマシですよ」


 ばさりと投げ出した藍色の長衣は安い平織りの布が使われていて、しかもその生地は長年日光に晒されていたのか袖の一部に変色があった。


「これで諸経費含めて三万ターラですが、どう思います? こんな物で王宮に上がれますか?」


「う、うるさい! だいたいお前、オクシデンス商会で礼服を作ったと言っていなかったか?!」


「作りましたよ。だけど学生会の役員としてどんな物が届けられるのか確認しないとと思って、ラスタン商会にも頼んだんですよ。貸借契約も結びましたし。伯爵令息、貴方のお宅の手数料はなかなかのぼったくりですね」


 ぼったくりと罵られてルドルフは唇を噛み締めて拳を震わせたが、この状況でジョヴァンニと争おうとは思えなかったらしい。


「これがオクシデンス商会の一万ターラの服です。先週届きましたよ。良い出来でしょう?」


 ジョヴァンニはテオドールとルドルフを煽るようにもう一つの礼服を机の上に載せた。

 それは生地こそシンプルだったが切り替えが巧みで縫製もしっかりしていて十分見栄えのする物だ。


「ラスタン商会が納入した礼服で生徒が夜会に参加すれば貴方の仰っていた、王に任された仕事にケチがついてしまいますけれども、いかがいたしますか? ここまでの騒ぎ、殿下が出て対応しないと収まりませんよ」


「分かった。出て釈明する」


 何かを思いついたかのように目を細めたテオドールが、背中を伸ばし、学生会室の厚い樫の扉を開け放って生徒達の前に立った。

 怒りの声をあげて詰め寄ってくる生徒達を男性教師達が壁になって押し留める。


「衣装の納入について手違いがあった。君達を不安な気持ちにさせてしまった事について慚愧に耐えない。業者に対する処罰について、今後の対応について従兄弟殿と話し合うために我々は王宮に向かう。一度怒りを収めてもらい、僕達を通して欲しい」


「そんな事を聞きたいわけじゃない! 分かってるのか! 夜会は今晩なんだ! このボロ布で出ろって言うんだ! 今すぐ答えろよ!」


 騎士爵の生徒が教師の壁を押してテオドールに詰め寄る。だが、それに対して怯んだ様も見せず、テオドールは堂々とした態度で言い放った。


「それについては、この後今回の実務担当責任者のダスティ書記から説明がある! 我々はこの件への協議と対応のため、一刻も早く王宮に赴かないといけない。道を開けてくれ。失礼する。それではあとは任せた。ダスティ子爵令息」


 腐っても王族だ。

 その人並み外れた整った容貌と堂々とした態度でその場の空気を圧したテオドールを通すかのように生徒達の波が割れていく。

 そこを堂々とエミーリエをエスコートし、ルドルフを後ろにつかせてテオドールは部屋を去っていった。


「悪党め。俺の苗字、覚えてたのかよ」


 考えうる限り最悪の丸投げだ。実際にどんな対応をするのかなど、テオドールはジョヴァンニに一言も指示していないのだから。

 徹頭徹尾自己中心的なテオドールに唖然となって悪態を吐いたジョヴァンニだったが、その背が階段を降りて見えなくなった瞬間、堪え切れないかのように喉を鳴らした。


「ああ、まったくもって予想通りに踊ってくれる、最高のクソ野郎ですよ。テオドール殿下」


 それはジョヴァンニの、ひいてはリアムの勝ちが確定した瞬間と言っても過言ではなかった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

評価、エピソード応援、ブックマーク、大変モチベーションになっています。

そろそろざまぁのターンです。その後ももう少し話が続きますのでお付き合いください。

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