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【完結済】NTR王子は悪役令嬢と返り咲く(カクヨム、なろう2サイト累計40万pv)  作者: オリーゼ


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恵まれない女運(テオドール視点)

 リアムとソフィアが姿を消して十ヶ月ほど過ぎた頃、テオドールは両親と共にヴィルヘルムから晩餐に招かれた。

 身内のみの晩餐と聞いていたが、両親と共に晩餐室に入ると、ヴォラシア公とエミーリエ、それにベルニカ公と夫人、それに宰相のプレトリウスがすでに席についていて、背中に冷たい汗が伝う。


「小僧。やっと会えたな。うちの娘と婚約破棄するとよりにもよって衆人環視の元で宣言し、しかも我が娘とベルニカを侮蔑したと聞いたがどういう了見だ!」


 短く刈った銀にも見紛うような淡い金髪に赤い瞳、ソフィアに似た容貌を怒りで歪めていきなり威圧されてテオドールは一歩後ろに下がった。


「ベルニカを侮辱する意図はありませんでした。ですが、誤解を招く表現をした事については真摯にお詫び申し上げたいと思います。ただ、彼女はリアム殿下と通じ、私の事を汚物、ヴォラシアに連なる令嬢を雌犬と罵倒いたしました。私は若輩の身です。そう呼ばわれて感情的になるあまり不適切な言葉づかいをしてしまったのはご理解いただければと思います」


 いつもより早口で言って深く頭を下げる。ノーザンバラと熾烈な戦いの末に国境を守った猛将といっても所詮は武力頼りの猪だ。弁舌で撒いてしまえばいい。


「なるほど、軽佻浮薄な舌がよく回ることだ。私達もしばらくノイメルシュに滞在する。キュステ公、ご子息との婚約破棄の件はこちらとしても望むところだが、名誉毀損の件や、賠償などの具体的な話については他の者から話を聞いてからで構わないか?」


 ベルニカ公の言葉にテオドールは内心ほくそ笑んだ。学園内の目撃者には根回しをしている。

 リアムとソフィアが悪役で自分とエミーリエは被害者だ。本人達が見つからない限りは大丈夫だし、見つかったとしても彼らを売るときに使った連中は信用できる暗殺者に処分させたのであとは水掛け論だ。


「こちらはそれで構いません。ヴォラシア公はいかがですか?」


「血縁ゆえに後見となっているが、この娘とヴォラシア公爵家との間には直接の関係はない。成人次第メッサーシュミット名誉爵を与えられると決まっている。血縁があるゆえ品位を保持するのに必要最低限の金は出しているが、それ以上をこちらに求めないでいただきたい」


 伯父に突き放されたエミーリエが膝の上の両手をぐっと握りしめて俯くのが見える。

 名誉爵とは理由があって正式な爵位を与えられない人間に与える暫定的な爵位である。

 土地を持たずに国庫から規定の俸禄を得ることができるが、基本的には一代限りのものだ。

 それを聞いたテオドールはエミーリエへの気持ちがさらにすっと冷え込むのを自覚した。

 メルシア旧王国の人々と、エミーリエの父親が王だった亡国キシュケーレシュタインは民族が違う。

 一言で言えば征服者と先住者の関係で、メルシア旧王国の時代から確執があり、最終的にメルシアはキシュケーレシュタインを滅ぼした。

 メルシアの古い貴族家出身の母はキシュケーレシュタインの王族の血を引くエミーリエの事を蔑んでいる。

 幼い頃、リアムとエミーリエの婚約が決まった時、犬の子同士が番うのは妥当だと言っており、そのすぐ後に自分とソフィアとの婚約が整ったのだ。

 その時は自分に相応しい高貴な令嬢と縁を繋げたと誇らしく思ったのだが、蓋を開けてみれば、自分の立場をわきまえない毒舌田舎女だった。

 性質は良いが後ろ盾がほとんどないエミーリエに、家柄だけは良いが性質は最悪なソフィア、どうやら自分は女運に恵まれていないらしい。

 醒めた目でエミーリエを見つめながらつらつらと考えているところにインテリオ公爵夫妻と見慣れぬ長身の中年男が入ってきた。


「インテリオ公、久しぶりだな! 後ろの彼は?」


 ベルニカ公爵が気安く話しかけ、インテリオ公爵もそれに笑顔で応える。


「ああ、たまたまそこでいきあったんだ。ルブガンド公の代理だそうだ」


 ブルネットの髪を後ろに撫で付けてピッタリと固めた眼鏡の中年ではじめて見る男だった。

 細身だがかなりの長身で年齢の判別がつかない。従兄弟であるヴィルヘルム王や、ベルニカ公爵と同年代だろうか。

 顔立ちは鋭いが、眼鏡の下の琥珀色の瞳もあって温厚そうに見える。


「ルブガンド公爵から皆様にくれぐれもお詫びをと申しつかっております。私は先日までリベルタに赴任しておりましたヴァンサン・ガイヤールともうします。リベルタ総督として長らく赴任しておりましたが、新総督が赴任し、先日リベルタから帰国いたしました。公は本日どうしても都合がつかず代理を申しつけられました。自分の代わりに出席してリベルタの話を皆様にお聞かせし、場を盛り上げるようにと」


 人好きのする笑顔でにこりとした男はルブガンド訛りの大陸共通語でそう言うと礼を取った。

いつもお読みいただきありがとうございます。また、ブックマーク、評価、エピソード応援もありがとうございます。大変力になっております。


前作からお読みいただいている方は違和感を覚えるシーンかと思いますが、間違いではないのでご静観いただけるとありがたいです。

今回も1話で四千文字いってしまったので分割です。明日も更新の予定です。よろしくお願いします。

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