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【完結済】NTR王子は悪役令嬢と返り咲く(カクヨム、なろう2サイト累計40万pv)  作者: オリーゼ


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鉱山のカナリア2

断罪後のテオドールを書いた番外編2話めです。

カクヨム版と区切りが少し違っています。

作品自体は書き上がっているので、数日以内に最後までアップします。

「看守が来るぞ!」

「おい! 貴様ら! 何をやっている!」

 見張りの警告はまにあわず、看守に詰め寄られた。

 やばい、という顔をする他の囚人達の前にテオドールはさりげなく進み出て卑屈に頭をさげた。

「もうしわけありません。ここの岩盤が緩んでる気がして……皆で確かめてたんです。けど、どうも、俺の見立て違いで大丈夫そうです。手を止めてごめんなさい。お許しください」

 テオドールは地学も学園で学んでいたから、実際の岩盤の緩みに気がついて事故を防いだことがあるし、鉱脈を見つけたこともある。

 だから、自分がそう言えば看守も強く咎めだてができないと分かっていた。

 特に今日は慶事があった。

 そんな日に事故で人死を出したらクビが飛ぶ。看守達も防げる事故は防ぎたいのだ。

「それなら仕方がない。確認したならさっさと散れ!」

「助かったぜ。今日の先頭はカナリアに決まりだ」

「流石、学者様。頭が切れるな」

「おいお前は一番後ろだ。ノロマ!」

 こそこそと言葉を交わしながら、囚人達は持ち場に戻って再び鉱石を掘り始める。

 その後は何事もなく、いつも通りの苦痛な作業が続いた。

 だが、いつもよりほんのわずかだけ早く作業の終了を告げる鈴が坑内で鳴り響き、テオドール達は坑道から我先に這い出した。

 二列に並んで山を降り、少しひらけた居住区に戻ると、監房に戻る前に看守が全員を広場に留め整列させられた。

「本日は重要な話がある。このリベルタと連合王国を統べる偉大なる国王陛下に新たなる栄えとなる王子殿下が誕生された」

 恩赦で前に出る必要がないテオドールは他の班員の助けを借りて配給の肉の列に並びやすい後方に、手紙を持ってきた歯抜け男と一緒に並んだ。

 囚人達にも暗黙の了解や掟がある。本来ならば情報を持ってきた彼が先頭だが、先程の一件でテオドールが肉待ち列の先頭だ。

「陛下と殿下の特別な恩寵により、以下の者に恩赦を与える。呼ばれた者は前に出るように!」

 やはり自分は呼ばれないと思っている歯抜けが看守長の話に言葉を被せた。

「額に汗してお――して、十月十日。ひりだされたガキの可愛さにメロついた王様が、恩赦をくださるってよ。俺ら以外にな」

 あまりにも下品だったが、うっかり本人達を思い浮かべてしまってテオドールは低く喉を鳴らした。

「おいやめろ。笑わせるな。打たれたくない」

 完全に仲間の方に気を取られていた。

 いや、そもそも与えられるはずのないものと思っていたから看守長の話など、二人揃ってまともにきいてもいなかった。

 後ろから走り寄ってきた看守に、歯抜け男と二人で懲罰の警棒を喰らって、そのまま突かれるように前に出された。

「おい! 二四六〇一番! 五六四四二番もだ! 前に出ろと言われた長官の言葉が聞こえなかったのか?!」

「えっ!?! も、申し訳ありません!」

 これ以上殴られるのはごめんだ。

 二人揃ってためらいなくその場に土下座し、地面に頭を擦り付ける。

 そうしろと教えてくれた囚人はすでにこの世にはいない。

 普段は動かない看守長が、なぜかテオドールの腕を引っ張り上げた。

「本来なら恩赦は敵わない罪を犯したこの男達にも国王陛下より恩赦が与えられた」

「へっ?! まさか……?」

「疑うのか?!」

「滅相もない! ただ、俺は重罪人で恩赦がくだるとはとても……」

「落盤事故を防ぎ、多くの人命を助けた功績が認められた。国王陛下直々のお慈悲だ。感謝しろ」

 男と顔を見合わせ、お互いに言われた内容が真実か夢ではないか、無言で確認しあう。

 囚人の命など塵芥だ。そんなもの功績にならないはずだ。

 だが、あのお人好しはそれを功績として自分をこの暗く深い檻から出してくれるというのか。

 テオドールの握りしめた拳が知らず震えた。

「いいか。国王陛下は慈悲深いお方だ。真面目に励み、罪を雪ぐ働きをすればこうして恩赦の慈悲をくださる。いいな、今回呼ばれなかった者も無私に贖罪の気持ちを持って励むように」

 それは気力を失いがちな囚人達にとって黄金のチケットのようなものだったらしい。

 わっと盛り上がったところで、看守長から副看守に話者が移った。

「今呼ばれた者は明朝恩赦となる。今晩は風呂を開放するから、手続きにの後に身支度するように。また員に国王陛下からの振る舞い酒と肉を用意してある。感謝するように」

「一同唱和!」

「国王陛下、万歳!」

「万歳!」

「メルシア連合王国に繁栄を!」

「連合王国に繁栄を!」

 看守の先導に従って囚人達が連合王国とリアムの治世を全員で寿いだ。

 普段はおざなりな掛け声も今日ばかりは皆本気だ。

 だが、テオドールはそれにかろうじてのっているように見せかけることしかできなかった。

 与えられた自由は、いまだに現実感を伴ってはいなかった。


お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、エピソード応援、評価、全てモチベーションになっています。

ぜひ★★★★★で応援よろしくお願いします。

カクヨムの方は最終話までアップされています。(なろう版は修正を細かに入れています)

またカクヨムコン11に参戦しておりますので、アカウントお持ちでしたらそちらでも読んでいただき、星評価で応援いただけると嬉しいです。

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