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新たなる門出の日3

本日2話更新予定。1/2。

 来賓席から戻ってきたが、まだそこにソフィアの姿がない。

 なにかあったのだろうか、そろそろ寮まで見に行った方がいいのではないかとそわそわしながら待つことしばし。

 どたばたとした足音がそこに響いた。


「ほら姫さん! 早く早く、卒パ始まっちゃうってば!」


「無茶言わないでください! オリ兄様!」


「だから、適当なところで切り上げればよかったんだヨ。付け焼き刃で何とかしようって方が間違いなんだって、こういうのは!」


「ソフィア。しんぱ……」


 振り返ってリアムはそこで言葉を失った。海亀島で着せられたドレスを彷彿させるが、さらに良く似合うリアムの色(茶色)のドレスを身にまとったソフィアがそこにいた。


「その、自分で選んでみたのですが、やはりイマイチだったかしら」


 感動で言葉が出ないリアムを前にソフィアがほんの少しの落胆を見せる。


「いや……その」


「ほらはっきり言ってやんなよ。いつものベルニカの軍装ドレスの方がソフィアっぽいってサ」


 似合わないと言わせたいと思しきオリヴェルを押してどかし、リアムはソフィアの前に立った。


「感動して声が出なかった! さっき、ユルゲンが自分の色のドレスを着てもらいたいって話をしていたんだ。改めてこうやって着てもらうと確かに、こんなに嬉しいことはない。それにそのヘアアレンジに使っている花も……全部、僕のイメージだよね」


 ふんわりと巻かれて緩く編まれた髪に流れるように挿されているのは季節の野花、胸元の細かな宝石で作られたネックレスもそのイメージで統一されている。

 衣装は母に任せていると豪語していたソフィアが、他ならぬ自分のことをイメージして自身で考えて、全てを用意してくれたと分かる装いで現れた。


「すごく似合ってる。それに僕のことを考えてくれたのが本当に嬉しい」


 王太子の正装なのが悔しい。

 王位についたら、未来の子供と騎士達のために、特に意味を感じない卒業パーティーの服装の内規は撤廃してやろう、と考えながらソフィアの手を取る。


「姫さん良かったネ。ギリギリまで悩んだ末にいつもとヒールの高さが違うせいで、スピードでなくて遅刻ギリギリなんてマヌケさらした甲斐があったネ」


「ばらすのやめていただけますか!? お兄様!」


 オリヴェルにくってかかりそうな通常運行のソフィアをリアムは抱きしめるように止めた。


「ソフィア。今だけは君の目に他の男を映さないで。僕の意匠で染まった君の瞳に他の男の影が映るのが耐えられない」


 使わないと思っていた、特別な人に対する距離感が自然に取れた。ソフィアはリアムにとってそれほどまでに近しい存在になったのだ。

 掻き口説くように囁くと、その雪白の肌を桃色に染めたソフィアは恋に潤んだ瞳でリアムを見つめてまつ毛を伏せた。


「鉛玉をお見舞いします??」


「ぐっ……ふっ。殿下ちゃんすごーく頑張ってるのに雰囲気クラッシャーかよ、姫さん」


「相手の男にだけね」


 爆笑するオリヴェルを無視してリアムは答えた。他の人間には雰囲気を壊す言葉だとしても、それは今や二人だけの思い出だ。


「そろそろ卒業生入場になります。オリヴェル先生! いらっしゃったんですか? 早く教師席に着いてください」


 学生会の一年生がそう皆に声をかけてきたから、リアムはソフィアから離れるとエスコートのために掌を差し出した。

※いつもお読みいただきありがとうございます。

本日2話更新(午後以降更新予定)、明日1話更新で完結予定です。草稿までは完成しています。

あと2話よろしくお付き合いください。

ブックマーク、エピソード応援、評価、全てモチベーションになっています。

★★★★★でご評価いただけると次回作へのモチベーションに繋がりますので、よろしくお願いします。

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